西武鉄道 銀行の責任逃れ-その2

そこでまず、”仰天の第一歩”について考えてみましょう。朝日新聞は、西武鉄道グループが前代未聞の不祥事を起こしておきながら、キチンとしたケジメをつけていない段階で他の市場に上場を図るのは道義的に見ておかしいのではないかと言っているようです。つまり、謹慎中の身でおとなしくしているのが普通であるのに、何ということをするか、といったいわば感情論であると言えるでしょう。

 しかし、私にはこのような感情論には全く興味がありませんし、賛成できません。企業経営者の中には朝日の論調に違和感を覚える人が多いのではないでしょうか。



 企業経営者は、たとえ世間がどのように非難を浴びせようとも、真に企業体を守るためには法に触れない限り、あるいは多少法に触れるとしても覚悟の上で断固として突き進んでいくものです。このような経営者の判断と行動に対して、感情論的に外部からとやかく言うのは筋違いですし、的を射たものとはならないでしょう。命がけで企業経営に取り組んでいる人にとっては、余計なお世話でしょうし、インテリ評論家のたわ言として鼻であしらわれるのがオチでしょう。



 この点、日本経済新聞は、-”西武はジャスダック上場を準備すると発表した。一般株主の影響などを考えれば、あり得る選択だ。”(日本経済新聞、平成16年11月18日社説)と冷静です。その上で、日経は、コクド-西武鉄道グループのいびつなコーポレート・ガバナンス(企業統治)のあり方を問題視し、”西武はコクドがいったん完全子会社化し、合体した上で、自己責任で自己決定できる独立した株式会社として再上場を目指すのが筋だろう”(同上)として、具体的に一つの方策を提示しています。

 私は、日経の論説子と同様に感情論を排する立場なのですが、日経がもっぱらコーポレート・ガバナンスに力点を置いているのに対して、一人の会計屋の立場から、グループの財務内容に力点を置いて論じてみようと思います。

 西武鉄道の財務内容について、小柳社長は会見の席上、”財務体質は健全”と、胸を張ったそうですが、本当でしょうか。

 通常、財務体質を判定するためには、純資産額をはじめとして、自己資本比率、当座比率、流動比率、固定比率、長期固定適合率などの経営分析指標を用いたり、キャッシュ・フロー分析をしたりしているようです。

 しかし、これらの経営分析指標等は、実際のところ必ずしも企業の実態を反映してはいないのです。現在の企業会計は、ゴーイング・コンサーン(継続企業)という、いわばフィクションの上に創り上げられたものですので、生きた企業の一つの側面を示すものではあるものの、決して万能ではありません。しかも往々にして、何らかの細工が加えられていることがあります。生きた企業を的確に捉えるためには、企業会計によって創られた数字にしかるべき修正しを施し、加えられた加工を取り除いてみる必要があります。

 私は、このブログ上で、”「@ゴーイング・コンサーンの幻想@」”等のタイトルで10回ほど、西武鉄道グループについての分析結果を公表しました。これは、上に述べたような私の考えに基づいてデータを加工し、企業実態を明らかにしようとしたものです。私がこのところ理論的な検討を進めている”認知会計システム”の応用例といったところでしょうか。

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 ここで一句。

“国際法アメリカ製のものばかり”-愛知、酒徳朗(毎日新聞、平成16年11月18日号より)

(”企業会計のグローバル・スタンダード“もその通り。アメリカさんのご都合主義に振り回されているようです。日本企業が愛犬ポチから抜け出すためには、独自の会計基準が必要かもしれません。)
 

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