参考資料3 手紙(平成13年7月)

***3.手紙(平成13年7月)
※第2審判決後、800人程の人達に事情説明のために送付した手紙


各位

1. 去る6月11日、私に関しての刑事裁判の判決が、広島高裁松江支部でありました。
広島高裁は、最大の争点であり、「本件」であった架空売買による巨額脱税については、一審の無罪判決を支持し、検察側の控訴を退けました。「本件は無罪」 ― 形の上では一審判決と同様ですが、無罪を認定するプロセスが一審判決と全く異なるものでした。
一審判決は、本件について無罪としながらも、検察の顔をうかがうような不十分な内容のものであり、刑事裁判と並行して進行している税金の裁判(民事)において国税当局に主張の余地を一部残しているものでした、即ち、刑事事件では無罪であっても、税務上は多額の理不尽な税金が徴収される余地が残されていたのです。
私は、無罪とされた「本件」についても、一審判決は、判決に至るプロセスが明らかに誤っていますので、控訴審で是正してもらうべく、主張していたところ、広島高裁は、私の主張(真実であり、当然のことです)を全面的に認め、一審判決を是正してくれました。高く評価することができます。広島高検は6月25日、最高裁への上告を断念しましたので、「本件」の無罪判決は確定しました。

2. 広島高裁が事実を正確に把握して、「本件」の無罪を言い渡したことは、次のような意味を持っています。
まず第一に言えることは、検察が国税当局と一体になって、真実を曲げてまで私を逮捕し、あわよくば裁判官を騙して、払う必要のない25億円余りのお金を私から強奪しようとしたことが失敗に終わったことです。(「別表」参照のこと)
このことによって、私をはじめ多くの顧問先の財産権が守られたことは、当然のこととは言え、私にとって何より心の安まることでした。「私の全財産を投げ打ってでも、関係者の皆さんに、財産上の迷惑をかけない」旨の約束をしていたことを、現実に果たすことができたからです。更に、私の財産も全くキズつくことがなくなったのも二重の喜びでした。
第二の意味合いは、「本件」が冤罪であったことが明らかになったことです。
5年前の平成8年1月26日に私は逮捕されました。確定申告の直前であり、公認会計士が大型脱税事件の主犯であるという検察側のマスコミへの嘘の発表によって、私は死んだ方が楽であることを実感する位の苦しみを経験しました。検察側の主張していることが、事実無根のことであり、冤罪(えんざい。無実の罪のこと) 事件であることを明確にしてくれたのが、この度の高裁の判決でした。
ちなみに、私を逮捕する3日前の平成8年1月23日、松江地検は、私の事件に関する合同捜査会議を開き、料理を取り寄せ税金を使って酒盛りをしていたことが明らかになっています。7,000円のオードブル7皿、5,000円の寿司の盛り合わせ6皿、1,500円の寿司4個、ビール大ビン35本などで合計98,020円の支出が、公費でなされています。公費を使って酒を飲み、寿司をつまみながら捜査会議を行い、事実無根のことをデッチ上げて私を断罪し、25億円ものお金を騙し取って、私と関係者を破産に追い込もうとしていたのです。これが現今の検察の全ての実態ではないとしても、一つの動かし難い実態であり、社会正義を標榜する検察当局は、どのように釈明するのでしょうか。

3. 以上のように、高裁の判決は、「本件」は無罪、「別件」が執行猶予つきの有罪であり、必ずしも100%満足できるものではありませんでした。しかし、一審判決に比較すれば、「本件」無罪の認定のプロセスが前述の通り全く異なっており、高く評価することができます。私と多くの関係者が不当な税金を納付する必要がなくなったことだけでも、私にとっては十分に満足できる判決であったと言えるでしょう。

4. 私が冤罪事件に巻き込まれて以来、多くの方々から暖かい励ましのお言葉をいただきました。中でも大学の先輩である公認会計士のS先生をはじめ全国の実務家の諸氏から励ましの声をいただき支援の輪を広げていただいたことは、私をどれだけ力づけてくれたことでしょう。また、日本における税法学の第一人者とされている日本大学教授の北野弘久博士からは、一審判決で執行猶予ながらも有罪とされた別件の事案について、鑑定所見書を賜り、『本件は、税法および税法学への無知から生じた不幸な事件である。本件には法人税法159条違反として刑事責任を問われねばならない事実は全く存在しない。被告人を有罪とすることは誰の目からみても、疑いもなく冤罪である。検察官および原審裁判所の無知が厳しく問われねばならない。原判決は破棄されねばならない。そうでなければ、著しく正義に反する。』とまで言っていただきました。別件については北野教授の所見書を全く斟酌することなく、広島高裁が一審判決を支持する立場をとったことは誠に残念なことでした。私は直ちに最高裁に上告しました。必ずや一部有罪とされた点についても、上告審において、正当に是正されるものと確信しています。

5. 広島国税局の査察を受けてから8年、検察当局によって不当に逮捕されてから5年が経過しました。その間、私は前向きの仕事を控えめにし、現状維持に努めざるをえませんでした。多額の税金債務を押し付けられる可能性が私を心理的に圧迫していたからです。
この度、広島高裁の明確な判決によって多額の税務債務を負う可能性がなくなったことは前述の通りであり、残された私の人生は、再び積極的な方向に進んでいくことになります。
かねてから考えていた(株)山根総合事務所の東京における拠点を設置することも、私と志を同じくする公認会計士、税理士の方々とパートナーシップを組むことによって、近い内に実現できる見込みです。当面はパートナーシップを組みながらも、平成14年4月1日から施行される「税理士法人」をも視野に入れて、私の事務所のあり方を考えていく所存です。
私の事務所を開設してから25年、私は貴方をはじめとして、多くの方々のお力添えで今日まで身に余る素晴らしい仕事をさせていただきました。私の事務所は、多くの顧客のために存在することに改めて思いをいたし、私を志を同じくする専門家に積極的に私の事務所に入っていただき、顧客サービスの一層の充実を図り、もって事務所の安定性と永続性を目指します。
不幸中の幸いと言えましょうか、この度の事件を契機に、納税者の権利を真剣に考える本当に立派な公認会計士と税理士の方々に数多く出会うことができました。私の公認会計士としての人生は、今一度新しく出発します。私は初心に帰り、私の顧客の為に徹底的に奉仕することをモットーとして歩んでまいります。

6. 思えば、会計事務所がマルサ(査察)の洗礼を受け、しかも、その責任者が300日近くも逮捕勾留されたにも拘わらず事務所が生き残ったばかりか、以前にも増して社会的に評価されるようになったのは、他に例がありません。
これもひとえに、貴方をはじめ心から私を信頼し支持して下さる方々の賜物と感謝しております。
私の手許には、国税・検察及び裁判に関する膨大な資料が残りました。これらは、不当な国家権力を排除した生々しい記録であり、いわば危機管理に関する生きた教科書でもあります。これらの資料と私の体験を背景に、今後、企業あるいは病・医院のコンサルタントとして皆様方によりよいアドバイスを提供できるものと自負いたしております。

貴方におかれましても、今後共何卒変わらぬご厚誼を賜りたく、伏してお願い申し上げる次第でございます。
敬具

平成13年7月吉日

公認会計士  山 根 治

****別表:国税当局が不当に徴収しようとしていた税額等の内訳(単位:円)

科目等 法人税等 地方税
本税 627,749,500 308,272,800 936,022,300
重加算税 185,997,000 55,834,700 241,831,700
過少申告税 14,570,500 3,143,500 17,714,000
延滞税 765,471,100 417,533,100 1,183,004,200
罰金 150,000,000 150,000,000
合計 1,743,788,100 784,784,100 2,528,572,200

 

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