遊仙窟について -その2

 八年前、松江刑務所拘置監に閉じ込められ、無聊を慰めるために、書写と読書に没頭する日々を送っていました。

 万葉集、各国の風土記、あるいは懐風藻を書写したり読んだりしていると、「遊仙窟」という作品の名が本文もしくは注釈の中にしばしば出てくることに気付きました。

 シャバにいれば、直ちに必要な本を手に入れて読むのですが、塀の中ですから容易にできることではありません。

 仮にこの作品が塀の外で入手でき、差し入れがなされたとしても、独房の中にいつ入ってくるかは全く分かりません。早くて一週間後、下手をしたら一ヶ月以上もかかるのです。

 その上に、房内で所持できる本の数が制限されており、この作品が房内に入ってくると同時に、所持している本を一冊房外に出す(これを領置といいます)ことになるのですから、いいかげんな気持ちで房内に本を取り寄せる(これを仮出といいます)ことができません。

 このような理由から、遊仙窟を独房で読むことは諦めたのです。



 平成8年11月12日、291日ぶりに保釈され、シャバに出てきた私は、直ちに県立図書館で「遊仙窟」を借り出して、夢中になって読みました。

 「遊仙窟」は私の愛読書というわけではありませんが、以上のような事情から、私にとって忘れ難い書籍の一つになっています。

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