177 続・いじめの構図 -21

***その21)

 平成19年1月27日、日本税理士会連合会から一通のハガキが届いた。税理士登録が完了したことを知らせるものであった。
山根 治 殿日本税理士会連合会
会長 森 金次郎  
公印省略      税理士登録通知
 あなたの税理士登録については、下記のとおり、税理士名簿に登録されましたので通知します。
 なお、税理士証票は、税理士会を通じ、交付いたします。


登録番号 第××××××号
登録年月日 平成19年1月25日

税理士登録がなされたという事実は、登録が抹消されていた三年余りの屈辱的な日々が終了したことを意味する。同時に、平成5年9月28日の広島国税局査察部のガサ入れ、同8年1月26日の松江地方検察庁による逮捕・拘留・起訴へと続く、一連の冤罪事件に終止符が打たれたことをも意味している。改めて、三年前に、小川裕章氏(当時は松江税務署・個人課税第二部門統括調査官、現在は倉敷税務署・個人課税第二部門統括調査官)から受けたあからさまな侮蔑(ぶべつ)が甦(よみがえ)ってきた(“実名公表について”参照のこと)。終生忘れることのできない屈辱的な想い出である。

 小川裕章氏との出会いは三年前のことではあるが、この人物が冤罪事件をひき起した張本人である大木洋氏(当時、広島国税局マルサの責任者、現在、税理士、青山商事(東証一部上場)監査役)と深いつながりがあるのが判明したのは、一年前のことであった。元上司である大木洋氏の意を汲んで、小川氏を含む多くの現職税務署員が、再び私を冤罪に陥れようと画策したのである。小川裕章氏は、松江税務署の統括官から昨年7月の定期異動によって、倉敷税務署の統括官へと転勤。今もなお、何ごともなかったような顔をして、私に対して行ったと同様な非違行為を、納税者と税理士とに対して行なっているに違いない。

 昨年私を告発しようとして策謀した中心人物である坂本昭雄氏は、一年前と同じく広島国税局の税理士監理官の職にある。これまた同様に、次のようなもっともらしいことを何食わぬ顔をして平然と喋っている。

『今日の税務行政において、先生方(山根注、座談会に出席している10人の税理士のこと)の果たすべき役割は非常に大きくなっています。…(中略)…本日ご出席の皆様をはじめ、中国税理士会会員の皆様におかれましては、税理士法第一条に掲げられています税務の専門家として、独立した公正な立場において、引き続き、税務行政に対する一層のご理解とご協力をお願いいたします。』(中国税理士会報、2007-4-10号)

 ちなみに、税理士法第1条は、

『税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。』

と、税理士の使命を規定したものである。一見するとまことに結構な規定であるが、現実はほど遠いものだ。税理士法の実態とその運用とが、第1条に定める使命を阻害しているのである。つまり、税理士の立場は、「独立」しているわけでもなければ、「公正」なものでもない。必然的に税務当局寄りにならざるを得なくなっているのが現実である。従って、本気で「納税義務者の信頼にこたえ」ようとすれば、文字通り命懸けでことにあたる覚悟が必要だ。このような、税務行政の枠内にガッチリと組み込まれている税理士業界の実態を直視すると、座談会における坂本昭雄氏の発言は、なんとも白々しく響くのである。

 坂本氏は元上司の大木洋氏の意を受けて私をニセ税理士に仕立て上げ、実際に広島地検に告発したものの不受理となった。これで懲りるのかと思いきや、あろうことか私の税理士登録の妨害工作を開始、M税理士が喋っていないどころか、明確に否定している名義貸しを偽ってデッチ上げ、税理士会に対して積極的に働きかけて、登録を阻止しようとしたのである。犯罪である。

 税務署ほど裁量(行政権の一定の範囲内での判断のこと。-広辞苑)行政が顕著な役所はない。裁量を勝手に押し広げ、法の規定・趣旨を平気で踏みにじる役所であるということだ。本来は、法に基づいて厳正に税の賦課、徴収がなされるべきであるにも拘らず、現場のサジ加減一つで勝手なことをしているのである。しかも、ほとんどの場合、納税者から本来とるべきではない税金をふっかけて取り上げている。昔の強欲な地頭とか悪代官となんら変わるところがない。当然のことながら、違法であり、犯罪ですらあるが、税務調査の現場では日常茶飯事だ。多くの秀れた随筆を残した、作家の山本夏彦が税務署員を「みつぎとり」と称して蔑(さげす)み、そのなりわいを賎業と極論しているのも故なしとはしない。
 日本の納税者の不幸は、このような税務署員の勝手気ままな振舞いに対抗する術(すべ)を欠いていることである。現在施行されている各税法が複雑多岐に渡っており、一般の人の手に負えるものではなくなっていることに加えて、専門家と目されている税理士のほとんどが、税務当局の言いなりだからだ。真の意味での納税者の味方、納税者の弁護人が極めて少ないということだ。税務当局の非違行為に対して正面切って物申す税理士が極めて少ないのは、税理士側に問題がある以前に、税理士法自体に問題があることは、本稿において夙(つと)に指摘してきたところである。

 このような唯我独尊的な役所である税務署に長年身を置いていると、坂本昭雄氏のように、すぐにバレるようなウソで塗り固めたデッチ上げを、平然と敢行するような不埒(ふらち)な人物が簇出(そうしゅつ)するのであろう。困ったことである。

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