2013年8月

天の逆手(あまのさかて)-3

 これまでの検討から導くことのできる結論は、「天の逆手の所作は、ごく普通の拍手(かしわで)であり、その意味するところは、日本国の支配権を天孫に譲り与え、自らは身をひくこと」といったところになろうか。  伴信友は、以上の見解をもとに、伊勢物語96段の「天の逆手」について次のように解釈した。 「按(あんずる)に、こは秋は必ず逢はむと約(ちぎ)りおきつる女の云々せるによりて、男深くいきどおりけれどもせむ […]

天の逆手(あまのさかて)-2

 伴信友の随筆集「比古婆衣(ひこばえ)」に「天の逆手」を論じた一文がある(「比古婆衣」下、現代思潮社。P.143~P.146)。その中で信友は、「逆手」を借字とし、避手(サカテ)、即ち、サク(避く、放く、離く)テと読んだ。「そは事代主神の御父、大国主神の領(うしはき)給へる此の御国を皇孫命(すめみまのみこと)に避献(さけたてまつ)るとして、其の礼儀(いやびわざ)に手拍ち給へるなるべし。」(前掲書、 […]

天の逆手(あまのさかて)-1

 「天の逆手(あまのさかて)」という言葉がある。事代主神(コトシロヌシノカミ)が国譲りの際に打ち鳴らした拍手(かしわで)のことだ。  大国主命(オオクニヌシノミコト)の御子神である言代主神(コトシロヌシノカミ)が、天照大御神(アマテラスオホミカミ)が遣わした神の強談判に屈して国譲りを承諾し、「この国は、天つ神の御子に立奉(たてまつ)らむ」と言い残して、自らは乗っていた船を蹈(ふ)み傾(かたぶ)けて […]

縁結びということ-3

 松江市に縁切り神社がある。佐太神社(松江市)の境外摂社・田中神社である。縁切り寺というのは各地にあるようであるが、縁切り神社は全国でも珍しい。  この神社の特徴は、単なる縁切りというだけではない。隣り合せに縁結びの神社があり、縁切り・縁結びの神が一対になっていることだ。  身にまといついた罪・穢(けが)れを、ハライ、浄めて消滅させることによって、自(おの)ずから悪(あ)しき縁を断ち切ることができ […]