嘘から出たマコト-⑦

 平成29年7月6日付で送達された、「所得税の更正・加算税の賦課決定通知書」(以下、通知書という)が違法なものであり、無効である理由は、他ならぬ国税当局自ら、具体的に“自白”するに至った。

 では、その“自白”とは何か。物的証拠として残された“自白”とは何か。それは次の2つの事実である。

 一つは、「調査の上」で更正処分をした旨、通知書では記されているが、その「調査」について、
長澤郁治 上席国税調査官
が、たびたび、

「実地の調査ではない内部調査(机上調査)」

であることを明言していることだ。筆者とのたび重なる架電及び面談において、筆者の問いかけに対してはっきりと申し述べている。全て録音され、すでに反訳文となっている。

「査察部署から送付されてきた査察調査の結果を受けて、それをベースにして緑税務署としては内部調査(机上調査)を行ったものだ。この内部調査において、犯則嫌疑者である納税者と面談したことはないし、納税者から新しい課税資料を得たこともない。」

 筆者は、長澤郁治氏が上記の趣旨を淡々と申し述べるのを耳にして驚きを禁じえなかった。何故そのような当然のことを、ネチネチと問い質すのかといった口振りに文字通り新鮮な驚きを覚えたのである。
 たしかに、部外秘として出された国税庁長官名の通達(「査察事件に係る課税処理及び異議申立て等に関する当面の事務実施要領について(指示)」平成24年9月20日、課個7-6ほか6課共同、国税庁長官)には、

「「机上調査」(実地の調査ではない内部調査をいう)」

という文言があることは事実だ。これは、平成23年12月に成立した国税通則法の改正を受けて、施行日である平成25年1月1日までの試行期間における査察調査の取り扱いについて指示したものだ。
 ところが、その後に出された平成25年1月1日以後における取り扱いの指示(「査察事件に係る課税処理及び異議申立てに関する実務実施要領について(事務運営指針)」平成24年12月21日、課総2-49ほか7課共同、国税庁長官)では、「机上調査(実地の調査ではない内部調査をいう)」という文言が、「実地調査以外の調査」に変えられており、「内部調査」とか「机上調査」という文言がキレイに消し去られている。同時期に出された、公開通達(・「国税通則法第7章の2(国税の調査)関係通達の制定について(法令解釈通達)国税庁長官、平成24年9月12日、課総5-9ほか9課共同。・「調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等について(事務運営指針)」国税庁長官、平成24年9月12日、課総5-11ほか9課共同。)に明らかに矛盾することに国税当局が気がついたからであろう。

 筆者が国税当局による、

「インチキのからくり」

に気がついたのは、4年前のことであった(「挙動不審な査察官」参照のこと)。それ以後、査察調査の現場だけでなく、国税不服申し立て、あるいは刑事・民事における裁判の場でも、この「インチキのからくり」、即ち、課税にあたって「実地の調査ではない内部調査(机上調査)」が行われているのは通則法第24条の「調査」ではなく、違法である旨、たびたび申し述べてきたが、国税当局は言を左右にして私の言い分を頑として認めようとしなかった。
 それがこの度、いともあっさりと認めたのである。
 この長澤郁治氏による発言によってだけでも、緑税務署長が行なった更正処分は、国税通則法第24条に規定する「調査」を欠く違法な行政処分であることが明らかになった。「内部調査」とか「机上調査」は、法令解釈通達(「国税通則法第7章の2(国税の調査)関係通達の制定について(法令解釈通達)」国税庁長官、平成24年9月12日課総5-9ほか9課共同。)によって、調査(行政処分)ではなく、行政指導としての調査であることが明示されているからだ。

 物的証拠として残された今一つの“自白”は、長澤郁治氏がメモを片手に棒読みをした次の回答である(「嘘から出たマコト-③」)。

『予納金返還の発生事由を過誤納とした法律根拠と、還付加算金の計算の法律根拠は、国税通則法第59条第2項(国税の予納額の特例)と同法第58条第1項3号(“その過誤納となった日として政令で定める日の翌日から起算して一月を経過する日”)。
 “政令で定める日”とは、通則法施行令第24条第2項5号にもとづき、本件の場合には、「過誤納があったとみなされる日」のこと。
 具体的には、『予納金の返還申入書』の提出日である平成29年4月7日。この日の翌日から起算して一月を経過する日が平成29年5月8日、この日が還付加算金の計算開始の日。支払決定がなされたのが平成29年6月19日、それまでの期間が43日。還付加算金の年利1.7%で計算したのが9万円の還付加算金。』

 上記の回答が嘘・偽りであることについてはすでに述べた。何故、嘘・偽りと断言できるのか、その理由については、
+「過誤納」が、予納金返還の法的根拠とはなりえないこと(「嘘から出たマコト-④」)。
+「予納する際の条件」だけでなく、「予納金を返還する際の条件」にも適合しないものであったこと(「嘘から出たマコト-⑤)。
の2つを挙げ、詳述したところだ。
 上記二つの事実は、緑税務署長が予納金として収納した4,500万円が法律の規定によらない不適法な収納金(裏金)であったこと、及び還付した4,500万円は同じく法律の規定によらない不適法な支出金(裏金)であったことを示すものである。4,500万円の還付について平たく言えば、裏金として蓄えていた資金を裏金として4,500円支出したということだ。
 一般企業における経理不正の典型的な事例である仮勘定(たとえば、仮受金、仮払金等)を悪用した不正行為と同じものが、国家会計レベルで行なわれていたということになる。

(この項つづく)

 ―― ―― ―― ―― ――
 ここで一句。

”完熟に半熟混じる熟女群” -佐倉、繁本千秋

 

(毎日新聞、平成29年7月13日付、仲畑流万能川柳より)

(半熟どころか生(ナマ)もいて。)

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