共謀罪のカラクリ-隠されたホンネ-①

 現在、事前共謀罪を組織犯罪処罰法の中に組み込む法律案が国会で成立しようとしている。

 この法律によって、



 1. 何が

 2. どのように



変るのか、また、そもそも、



 3. 何のために



この法律案が提出されたのか、よく分らないままに空疎な議論がおし進められている。国会において毎日のように論点をそらした押し問答が繰り返されている。主管大臣である金田勝年法務大臣にいたっては、この法律案が一体何のために提出されたのか、その趣旨がよく理解できていないようだ。

あるいは、役人が用意したペーペー通りのことは口パクで説明することはできるが、変化球として投げられた咄嗟(とっさ)の質問に全く対応ができていないのは、この法律案のタテマエとホンネとが違うからではないか。表向きの趣旨とは似ても似つかぬ裏に秘められた趣旨が隠されているからではないか。その隠された趣旨(ホンネ)とは一体何か?

 そこで私は、この法律案(「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案」)をネットから引っ張り出して全部に目を通してみた。
 すると、目を疑うようなものが飛び込んできた。
 277もの罪名を含む関係法律の中に、ナント、

 所得税法

 法人税法とが

入っていたのである。
 これは一体何のことだ。税法が、テロ防止とか、組織犯罪と何の関係があるというのか。政府の説明では、一般の人には全く関係がないというのであるが、所得税法にせよ、法人税法にせよ、まさに一般の国民を対象としたものだ。関係がないはずはない。

 法律案では次のようになっている。
 まず、目的(趣旨)の追加である。追加される目的は、

「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を実施するため」(第一条)

となっている。つまり、この法律の改正は、国連条約を実施するために必要だと言っている。これは一体ほんとうのことか?

 次に、新設法案の、計画段階で処罰する共謀罪は、

「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団による実行準備行為を伴う重大犯罪遂行の計画」(第6条の二)

として、

次の各号に掲げる罪に当たる行為で、テロリズム集団その他の組織的犯罪集団の団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を二人以上で計画した者は、その計画をした者のいずれかにより、その計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画行為をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときは、当該各号に定める刑に処する」(下線部は筆者)

と定め、犯罪の準備段階で取り締まりができるようになっている。
 つまり、「組織犯罪集団」が犯罪を行う前に、計画に合意し(計画)、準備を行った(準備行為)段階で、取り締まることができるということだ。
 ここに、「次の各号に掲げる罪に当たる行為」として、掲げられているのが、別表三の五十二の所得税法の罰則である同法第238条等と、別表三の五十三の法人税法の罰則である同法第159条である。法律案ではともに、「犯罪にあたる行為」が「偽りにより税を免れる行為」とされており、本来の脱税の犯罪構成要件とは全く異なるものだ。意図的なスリ替えである。

 つまり、所得税法、法人税法ともに関係があるのは、それぞれの罰則だけである。
 これらの罰則は従来、「税を免れたこと」のみを罰するものであって、「税を免れようとしたこと」(未遂)を罰するものではない。
 それがこの法律案では、驚いたことに、
-「脱税を計画し、準備行為を行った」段階で罰する、
つまり、「税を免れようとしたこと」までをも罰するものとなっている。
 このことは、従来の罰則が「税を免れた」という事実、つまり既遂のみを罰するものであったのに対して、このたびの法律案では、「税を免れようとした」という準備的な事実、つまり未遂をも罰するものになっていることを意味する。
 それも、本法である所得税法とか法人税法の罰則の条文はそのままにして、特例法で未遂罪を追加するという姑息(こそく。根本的に対策を講じるのではなく、一時的にその場が過ぎればいいとする様子だ。その場しのぎ。-新明解国語辞典)なやり方である。

 このような官僚特有のゴマカシは、近年、頻発している。直ちに思い当るだけでも3つある。

一つは、民主党・野田政権の時、経産官僚が放ったゴマカシである。福島第一原発のメルト・ダウン事故が実際に発生したことによって、

“原発は絶対に安全である”

とする原発安全神話が崩壊したのを受けて、原子力政策の基本を定めた原子力基本法をいじったことだ。つまり、原子力基本法の改正論議をスッ飛ばして、特例法である原子力損害賠償法の、しかも附則において、原子力政策の目的として

「安全保障」

つまり、国家の防衛目的がこっそり追加された。ことの順序が逆である。なんのことはない。後追いながら、原発は決して安全なものではないことを認めざるを得なかったものであり、安全保障目的を追加したことは、原子力発電所が核兵器工場であることを認めたに等しい。

二つは、このたび成立した「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」である。これは、天皇を都合のいいように操ろうとする安倍政権と官僚が仕組んだ陰謀だ。この法律の冗長な第一条(趣旨)は、違和感丸出しのデタラメな条文であり、端的に陰謀が透けて見えるものとなっている。

三つは、安倍晋三総理が突然持ち出してきた憲法改正加憲案だ。戦争放棄をうたった第9条をそのままにして、新たに自衛隊を合憲とする項目を入れようという、なんとも乱暴なものだ。自衛隊はもともと、第二次世界大戦後に勃発した朝鮮戦争のために、違憲であることを百も承知の上で、アメリカの日本占領政策によって屁理屈をつけて設置された経緯がある。この厳然たる歴史的経緯が全く無視されている。

 国会の3分の2以上の議席を握った以上、法律でも憲法でも自分達の思うままにできると勘違いをしている。願わくは、一国の総理たる者、云云(でんでん)ダイコを国会の場で打ち鳴らさないで、山口にでも帰って里山で鳴らして欲しいものである。

(この項つづく)

 ―― ―― ―― ―― ――
 ここで一句。

”このところ選ぶ川柳見つからず”

(毎日新聞の選者・仲畑貴志さんと私の笑いのセンスがこのところズレてきているような。それとも、アベ劇場という歪みに歪んだ現実が余りにも川柳的なのか。)

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