検証!! 『ホリエモンの錬金術』-8

 「山根がデッチ上げた、借名株というトンデモ話」が堀江氏だけでなく、堀江氏の周りの人に実害を及ぼしている、これは一体どういうことでしょうか。具(つぶさ)に検証してみることにいたします。



****1.堀江貴文氏が被っている実害についての検証

 堀江氏は、第一回目の私に対する批判において、「実際にこの嘘八百(山根注:借名株というトンデモ話のことです)を未だに信じている人がいるわけで、それは私(山根注:堀江氏のことです)のイメージダウンにつながっている」(「ホリエモンの錬金術なんていう下らないサイトがあったのだが。」と発言しています。これまでのところ、これ以外のところでは被害を受けているとは言っていませんので、堀江氏がこうむっている「実害」とは、堀江氏のイメージダウンつまり、悪いイメージが定着すること、換言すれば、名誉毀損であることが分かります。

 堀江氏のイメージが落ちる、しかも、私が指摘した借名株の疑念によってイメージが落ちるとはどういうことでしょうか。
 『ホリエモンの錬金術』では、4年前の時点で堀江氏が手にした莫大な資産のルーツを辿り、それが3つのトリック(詐術)によって形成されたものであることを論証し、堀江氏がその時々で出まかせのウソを平然としてついてきた事実を指摘して、堀江貴文氏のことを詐話師(さわし。平気で虚言を弄して他人を騙し、利益を得ようとする人物のことです)であると言ってきました。
 3つのトリックのうちでも最初のもの、つまり上場時に仕組まれた小細工の中核をなしているのが、3億6千万円の架空の資金の流れであることは既に述べたところです。更には、4年前の時点では架空であることを“一枚の資料”(「ホリエモンの錬金術-12」)を発見したことによって推断まではしたものの、断定するには至りませんでした。この推断を、このたび堀江氏が自分のブログでの発言によってはからずも証明してくれたことについても既に述べたところです。後ほどより詳しく説明する予定です。
 3億6千万円の資金の流れが架空であるという事実は、私が指摘したインチキ上場の疑惑を証明するのに十分なものです。3億6千万円という架空の資金の流れが、会社の資本金に関するものであり、しかも、株式公開情報の中でも極めて重要な「特別利害関係者」に関するものであるだけに、この事実が上場審査の時点で発覚していたら、上場などできなかったおそれがあるからです。
 堀江氏は、『堀江貴文のカンタン!儲かる会社のつくり方』の中で次のように述べています。「元恋人の株を買い取り5億円の借金」という小見出しが付けられている件(くだり)です。

「ここで仮にカネをケチったりすれば、禍根を残す。下手をすれば上場直前に訴訟をおこされてしまい、上場承認が取り消されるという事態にだってなりかねない。だが5億円をきちんと渡しておけば、仮に裁判をおこされたとしても絶対に負ける心配はない。…そこで無理をして銀行から短期融資で5億円を借りた。もちろん個人としての借金である。返済は上場後という約束だった。」(同書、第1刷、P.119~120)

 このような5億円の融資については、現在の日本における金融常識としてはまず考えられないことから、評論家の立花隆さんは、ホリエモンが高利のカネに手を出したらしいと憶測し、ヤミ金の世界とつながったのではないかと、およそピント外れの推論を展開したほどです。(“ホリエモンの錬金術-6”の<付記>

 また、同書の「ついに上場へ」という見出しの中で、堀江氏は、東証が上場申請にあたって2回のヒヤリングを行ったことを記し、ヒヤリングの場で、創業メンバーの役員ら10人前後が退職した事情が問い質されたとして、次のように述べています。

「実はけんかしてしまったんです」と当時の経緯を事細かに説明した。担当者は再度聞き返した。
「上場してから、風説の流布なんかをされる心配はないですか?」
私は
「大丈夫です。私が話をつけました」
と答え、5億円という時価で買い取ったことなどを説明した。」(前掲書、P.148~149)

 堀江氏は、上場前に5億円を銀行から借り入れて有馬晶子さんの株を買い取ったとこれまでは言っていたのですが、このたびのブログ(「ホリエモンの錬金術」サイト批評2」)では前言を翻(ひるがえ)して、本当のところは、5億円を支払ったのは上場前ではなく、上場してから2年後のことであったと自ら明らかにしているのです。銀行から融資を受けていなかったというのです。このことは、上場審査のヒヤリングで嘘の事実を申し述べたことを意味しています。つまり、インチキ上場の中核部分が、堀江氏自身によって明らかにされたということです。

 このたび堀江氏が熱くなっている借名株の疑惑は、インチキ上場とは直接の関係にないもので、派生的に生じた疑念にすぎないものでした。このことについては、すでに述べたところです。
 堀江氏は比較にならない位大きな疑惑(インチキ上場疑惑)を自白したに等しいのに、枝葉の疑惑(借名株疑惑)はデッチ上げで、それによって自分のイメージが落ちると騒いでいるということです。例えて言えば、強盗殺人犯がその犯罪行為を自白していながら、万引などしていない、そのようなチンケなヌレギヌを着せられたら男がすたる、おかしな言いがかりを付けられるのは迷惑千万であり、自分のイメージダウンになると言っているようなものです。
 以上によって、堀江氏が大騒ぎしてイメージダウン(名誉毀損)という“実害”を言い募っていることは、なんともコッケイな空騒ぎにすぎないことが分かります。

(この項つづく)

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 ここで一句。

“痴漢では なくてホントは スリだった” -佐伯、安堵の日。

 

(毎日新聞、平成21年5月29日付、仲畑流万能川柳より)

(“痴漢など ヌレギヌですと スリが言い”)

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