ゲームとしての犯罪 －２０

私が株式会社エフェクター細胞研究所（以下、エフェクター研）のことを知ったのは、この会社が昨年３月２９日に名証セントレックスに新規上場された直後のことでした。ライブドア証券が初めて主幹事証券として手掛けた上場案件でしたので、インチキ集団が今度は一体何をやったのか興味があったのです。

早速関係資料を手に入れて調べてみたところ、案の定、エフェクター研の決算数字にとんでもない細工が施されている可能性が透けて見えましたので、「ホリエモンの錬金術－４」の＜付記＞で指摘し、その後も「ホリエモンの錬金術－５」「ホリエモンの錬金術－号外その２」「ホリエモンの錬金術－９」において触れてきたところです。

上場後、平成１７年８月３１日付で提出された第６期（平成１７年５月期）有価証券報告書における決算書は、上場の際に開示された第５期の決算書に輪をかけた怪しげなものでした。
更には、今年に入ってからのエフェクター研の動きは、まさしく周章狼狽（しゅうしょうろうばい）を絵に画いたようでしたね。

まず、ライブドアが摘発された、１月１６日から一ト月余り後に、プレスリリースされた業績予想の修正（平成１８年２月２８日付、“通期業績予想の修正および今後の施策に関するお知らせ”）。珍妙としか形容のしようのないシロモノで、上場会社としての業績予想の体（てい）をなしていません。これは単に、業績予想のプレスリリースがいいかげんなものであるにとどまらず、会社の業務実態が本当にあるのか疑わせるものであったと言えるでしょう。まさに珍品ですので、じっくりとご覧になってください。

***※平成１８年５月期　通期業績予想数値の修正（平成１７年６月１日～平成１８年５月３１日）
（単位：百万円、％）
^^t
^
^cc”^売上高
^cc”^経常利益
^cc”^当期純利益
^^
^前回発表予想（Ａ）
^rr”^１，６００
^rr”^２００
^rr”^１４５
^^
^今回発表予想（Ｂ）
^rr”^１，０４７～６１２
^rr”^▲８３～▲４７９
^rr”^▲９７～▲４９３
^^
^増減額（Ａ－Ｂ）
^rr”^▲５５３～▲９８８
^rr”^▲２８３～▲６７９
^rr”^▲２４２～▲６３８
^^
^増減率（％）
^rr”^▲３４．６～▲６１．８
^rr”^―
^rr”^―
^^
^前期（平成17年5月期実績）
^rr”^８３３
^rr”^７９
^rr”^７８
^^/
（株式会社エフェクター細胞研究所、平成１８年２月２８日付、“通期業績予想の修正および今後の施策に関するお知らせ”より）

次に出されたプレスリリース（平成１８年３月２４日付、“株式会社メディシスサイエンスの株式の取得（完全子会社化）に関するお知らせ”）には、一瞬わが眼を疑いました。

株式会社メディシスサイエンス。この会社は、設立が平成１７年６月２１日ですので、設立されてから９ヶ月程の新しい会社です。これだけであるならば、何も驚くことはないのですが、この会社を設立したのが、株式会社メディカルシステムネットワークだったのです。

株式会社メディカルシステムネットワーク。大証、ヘラクレス上場会社。社長の田尻稲雄氏は、エフェクター研の上場時点での株主（本人名義１，０００株、他人名義１，０００株の計２，０００株。全体の１．４４％所有）。
更に、エフェクター研が上場してから二ヵ月後、しかも上場後の第一回目の決算期（第６期、平成１７年５月期）の期末日である５月３１日に、５億円の契約を結んでいます。
「ＭＤヘパ細胞の独占的供給」を６年間実施する対価として５億円、エフェクター研に支払われたことになっているものです。この５億円はエフェクター研の第６期の売上に計上され、この期の売上高８３３百万円の、実に６０％を占めるものです。
これは、上場直前期の第５期の売上高４７８百万円のうち、４０５百万円（８４％！）が上場時点での特別利害関係者の会社への売上げで占めていることと同工異曲です。

しかも、限りなく怪しい期末における５億円の契約は、「平成１７年６月に設立予定の当社子会社（山根注、これが株式会社メディシスサイエンス！）に移管することを前提に締結」されたものでした（平成１７年５月３１日付の株式会社メディカルシステムネットワークのプレスリリース）。

以上のことについて私は、昨年の段階で知っていましたので、設立されてまだ一年もたたないこの会社（株式会社メディシスサイエンス）を、あろうことかエフェクター研が買い取るというのですから、ビックリしてしまったのです。盲（めくら）蛇に怖（お）じず、－そこまでやるのか、というのが私の素直な思いでした。

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ここで一句。

（あばたもエクボ、ペテン師変じて大実業家。ほれたアタシが悪いのか、だましたオマエが悪いのか。）