エセ同和団体の“生贄”(いけにえ)は、今-⑶

平成25年1月1日改正の国税通則法に、「税務調査に係る法定手続」が新たに組み入れられた。前回述べたところである。

本件(大阪リョウチョウ違法税務調査事件)に即して言えば、この法定調査手続が二つなされていない。つまり、二つの法定手続が欠けているのである。

一つは、調査を始める際に必要とされる法定手続、即ち、「事前通知」もしくは、「事前通知を要しない場合の、臨場後速やかにすべき通知」が欠けていることだ。
平成29年9月19日、大阪国税局資料調査第一課(間島博行総括主査、西川勇主査、出水敬士実査官、金井実咲実査官、横山某実査官ほか。以下、リョウチョウと略す。)は、事前通知を要しないとされる例外的な場合(国税通則法第74条の2の10)を適用して、本件納税義務者A氏の税務調査を予告することなく開始した。

国税通則法は、「調査」において、納税義務者に対して「調査の目的」等について事前通知を必要としている(国税通則法第74条の2の9)(注1)。そして、事前通知を要しないとされる例外的な場合(国税通則法第74条の2の10)(注2)については、次のように規定されている。
即ち、

事前通知を行うことなく実地の調査を実施する場合であっても、調査の対象となる納税義務者に対し、臨場後速やかに「調査を行う旨」、「調査の目的」、「調査の対象となる税目」、「調査の対象となる期間」、「調査の対象となる帳簿書類その他の物件」、「調査対象者の氏名又は名称及び住所又は居所」、「調査担当者の氏名及び所属官署」を通知するとともに、それらの事項(調査の目的、調査の対象となる税目、調査の対象となる期間等)以外の事項についても、調査の途中で非違が疑われることとなった場合には、質問検査等の対象となる旨を説明し、納税義務者の理解と協力を得て調査を開始することに留意する」「調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等について」(事務運営指針)第2章、2.(3)の(注)2、国税庁長官 平成24年9月12日 課総5‒11他9課共同。下線は、筆者による。)

ものとされている。

本件リョウチョウの担当部門職員は、納税義務者に対する国税通則法に基づく調査において、納税義務者であるA氏に対して、国税通則法で定められた事前の通知(注1.の1.~7.の事項の通知)はもとより、例外的に事前通知を要しない場合であっても、臨場後速やかにすべきとされている事後的な通知(注2.の1.~7.の事項の通知)をしていない。即ち、調査開始の手続に瑕疵がある。

(この項つづく)

(注1)事前通知。「税務署長等は、……国税庁等の職員に納税義務者に対し実地の調査において質問検査等を行わせる場合には、あらかじめ、納税義務者に対し、その旨及び次に掲げる事項を通知するものとする(国税通則法第74条の8)。」
+質問検査等を行う実地の調査を開示する日時
+調査を行う場所
+調査の目的
+調査の対象となる税目
+調査の対象となる期間
+調査の対象となる帳簿書類その他の物件
+その他調査の適正かつ円滑な実施に必要なものとして政令で定める事項
※7.の「政令で定める事項」は以下の通り。
1.調査の相手方である納税義務者の氏名及び住所または居所
2.調査を行う当該職員の氏名及び所属官署(当該職員が複数であるときは、当該職員を代表する者の氏名及び所属官署)
3.4.(略)
第2項 (略)

(注2)事前通知を要しない場合の、臨場後速やかにすべき通知事項
+「調査を行う旨」
+「調査の目的」
+「調査の対象となる税目」
+「調査の対象となる期間」
+「調査の対象となる帳簿書類その他の物件」
+「調査対象者の氏名又は名称及び住所または居所」
+「調査担当者の氏名及び所属官署」

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