エセ同和団体の“生贄”(いけにえ)は、今-⑵

前回私は、橋本元秀・大阪国税局長が、

「リョウチョウの行っている公務員としての行為には何の問題もないとばかりに居直り、延々と違法調査を続けさせ、その結果、あろうことか公文書を偽造して、法律上することができない、「更正処分」を打ってきた。平成30年5月14日のことである。」

と述べた。ここで、『あろうことか公文書を偽造して、法律上することができない、「更正処分」を打ってきた』とは、一体どういうことなのか、法の規定に従って明らかにする。

国税局のリョウチョウは、課税部署である。従って、そこに所属する税務職員は、「更正処分」の前提となる調査をする権限を有し(通則法第27条)、その調査にもとづいて、所轄税務署長(本件の場合は大阪南税務署長)は、「更正処分」(通則法第24条)を行うことができる。
但し、リョウチョウの職員は、税務署の職員ではなく、国税局の職員であるから、所轄税務署長は、納税者に発する「更正通知書」に、その旨、即ち、「その更正が大阪国税局の職員による調査に基づくものである旨」を附記しなければならないことになっている(通則法第28条第2項)。
これが従来からの法の定めである。

ところが、法の定めはこれだけではない。平成25年1月1日に施行された改正国税通則法に、従来存在しなかった「国税の調査」の章が第七章(通則法第74条の二~第74条の十三)に新設され、課税をするための調査とはどういうものであるか、その調査手続についてキッチリと枠がはめられたのである。
つまり、税務署長が更正(通則法第24条)、あるいは決定(通則法第25条)する前提条件である「調査」とは一体何であるか、「調査の手続」はどうしたらいいのか、実体法の上で明確に規定されたということだ。調査概念の明確化と調査手続法の制定である。
これまで、即ち、平成24年12月31日までの長い間、「税務調査」とは何であるか、あるいは、「税務調査の手続」はどうしたらいいのかについての法の定めはなかった。実体法が欠けており、国税当局のやりたい放題の状態だったのである。

憲法第31条は、刑罰を科すことについて、法定手続の保障を謳(うた)っている(注)。

これまで我が国の税法においては、納税者の納税義務が強調されるだけで、納税者の権利についてはほとんど顧(かえりみ)られることがなかった。税の課税・徴収が、納税者の権利を無視する形で、優先されてきた。

憲法第30条は、国民について、納税の義務を定め(注2)、
憲法第84条は、課税の要件について、租税法律主義の原則を定めている(注3)。
しかし、国が納税者国民に対して租税を課し、徴収する際の手続きに関連しては、納税者の義務が強調されるだけで、納税者の権利については、ほとんど顧慮されることがなかった。
大蔵省(今の財務省)と国税庁が、まさに上から目線の内部規定(通達、事務運営指針など)を秘密裡に作成し、その多くを部外秘として納税者に知らせることなく、強権的に税務行政を遂行してきた。これが偽らざる現実である。

今から9年前の平成21年、自民党政権から民主党政権に移行したのを機に、遅ればせながら、納税者の権利を保障する

「納税者権利憲章」

の制定が議論されることになった。
しかし、民主党・菅直人政権(野田佳彦・財務大臣)のときに、国会審議の過程で、「納税者権利憲章」そのものが消えてしまい、国税通則法を廃止し、新たに、『国税に係る共通的な手続並びに納税者の権利及び義務に関する法律』が制定される運びになり、実際にその法案が、国会に上程され審議されることになった(平成23年2月25日、衆議院・財務金融委員会)。
ところが、『国税に係る共通的な手続並びに納税者の権利及び義務に関する法律』という、長々しい名前の法律案もいつの間にか消えてしまい、次の野田佳彦内閣の時に、妥協の産物として生まれたのが、国税通則法に新設されることになった「国税の調査」の章段であった(「民主党政権の置き土産」)。
これは、構想されていた「納税者権利憲章」とは、ほど遠いシロモノではあるが、ともかくも、憲法第31条に定める刑罰を科すことについての「法定手続の保障」が大枠において国税通則法という実体法の中に実現したのである。

(この項つづく)

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