原発とは何か?-号外③ 原発事故の特殊性(2)

***-原発事故の特殊性(2)

 原発事故について、原因別に類型化すれば次のようになる。



1.人災

 1)過失・重過失…操作ミス(誤操作)、事故対策(安全保安マニュアル等)の不備

 2)故意(未必の故意)…操作ミス(誤操作)、事故対策(安全保安マニュアル等)の不備-予見可能性

2.天災(天災地変)

 1)通常の天災

  1.「賠償措置額」(1,200億円)以下。-地震・噴火・津波(原賠法第3条、原賠補償法第3条)

  2.「賠償措置額」を超えるもの。-地震・噴火・津波(原賠法第3条、原賠補償法第3条)

 2)「異常に巨大な天災地変」(原賠法第3条、ただし書)



 原発事故の賠償責任については、すでに述べたように(「原発とは何か?-⑥」参照)、原因の如何を問わず、原子力事業者(電力会社)だけに無限の責任が課せられているが、国の手厚い保護のもとで事実上は免責されているに等しい。

 しかし、原発事故に関しては、賠償問題が全てではない。その他に刑事責任を含む経営責任が残っている。経営責任までは現在の法体系では免責されてはいない。つまり、2.の天災によるものについては賠償責任だけでなく、経営責任も免責されているのであるが、2.1)の通常の天災に加えて、1.の人災によるものでもあるとすれば、賠償責任こそ事実上免責されてはいるが、経営責任については免責されてはいないのである。

 東京電力は3.11の大事故直後から当分の間、2.2)の「異常に巨大な天災地変」による事故であると言い募ってきた。これに該当するとすれば、たしかに賠償責任ははじめから存在しない(原賠法第3条ただし書)し、経営責任も問われることはない。東京電力と経営陣にとっては良いことづくめである。
 ところが、客観的に見て「異常に巨大な天災地変」ではないことが明らかになってきたために、急遽2.1)2.の通常の天災で「賠償措置額」を超えるものに切り換えた。
 東京電力は、初めから「異常に巨大な天災地変」ではないことを知っていながら、対外的には嘘をついていたところを、どうにもゴマカシきれなくなったのである。詐欺師を演じようとしたところが、所詮役人もどきの無能な経営者だ。手練(てだれ)の詐欺師になどなれる訳がない。
 詐欺師を馬鹿にしてはいけない。プロの詐欺師には、ある種天性の才能が備わっており、真似をしようと思っても簡単にできるものではない。この間の事情については、後に詳述する予定だ。

 3.11の原発事故が、「異常に巨大な天災地変」ではなく、「通常の天災」であるとすれば、1.の人災の側面を避けて通ることができない。過失、重過失さらには未必の故意を含む故意の有無が問題となってくる。
 ところがこれについては、早々と封印してしまうかのような印象を与えかねない動きになっている。
 平成23年5月24日の閣議決定(「東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会について」参照)で、「東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会」(以下、調査・検証委員会という。)が設置されたまではよかったが、委員長に就任した畑村洋太郎氏が、早々と、

「責任追及は目的としない。」

と言い切っているからだ(「東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会 委員長就任のごあいさつ」参照)。それだけではない。平成23年7月8日付の調査・検証委員会の申合せ(「ヒアリングの方法等について(案)」参照)として、

「当委員会の設置は、事故責任を追及することを目的とするものではない。したがって、当委員会はヒアリングで得た資料(供述内容のこと)を、事故責任を追及する目的では使用しない。」

とまで明言している。

 もっとも、調査・検証委員会が言っていることを好意的に解釈すれば、納得できない訳ではない。委員会の役割は、あくまでも事故の原因を調査・検証し、その結果を踏まえた上でしかるべき政策提言をすることであって、たとえば刑事事件として告発することが目的ではないというのであれば納得できるのである。
 “事故の原因を究明するための調査・検証を、国民の目線に立って開かれた中立的な立場から多角的に行う”(閣議決定)というのであれば、当然のことながら、天災のほかに人災の側面があったか否か、つまり、過失、重過失、故意の有無が明らかにされることが必要だ。これらは、関係者からヒアリングで得られた資料(供述内容)だけでは明らかにされることはない。単なる関係者からのヒアリングだけではなく、客観的な裏付けをもって事故の原因を客観的に解明することが求められる。供述内容は概ね責任逃れに終止することが多いからだ。ことにこのたびの原発事故については、東京電力、経済産業省が中心になって、対外的に数え切れない位の嘘を平気でついていることを考えれば、供述内容の信用性はないものとしなければならない。
 しかし、言葉ではどのように言い繕(つくろ)うとも、ゴマカシ切れないものがある。客観的事実である。先般来話題になっている、東京電力が示した黒塗りのマニュアル(事故時運転操作手順書)など客観的事実の最たるものだ。東京電力がその中味をひたすら隠そうとしているのは、調査・検証委員会に供述した内容と異なることが記されているからではないか。

 いずれにせよ、これから公表される調査結果を受けて、仮に人災の側面が明白になったならば、調査・検証委員会以外のしかるべき機関によって事故責任の追及がなされなければならない。また、調査結果が客観的事実に反するいいかげんなものであったとすれば、委員の総入れ替えを行なって調査のやり直しをすべきであろう。私達は調査・検証委員会の報告を鵜呑みにすることなく、細心の注意を払って見つめ検証する必要がある。

***(追記)
 民主党は野党の要望を受け入れて、政府の調査・検証委員会とは別に、政府とは独立して検証する調査委員会を国会に設置する方針を決めたという(平成23年9月28日付、日本経済新聞)。結構なことである。「責任の追及は目的としない」などというオカシナ前提は入れないでやってもらいたい。

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 ここで一句。

“責任を取って責任から逃げる” -八尾、立地骨炎。

(毎日新聞、平成23年9月25日付、仲畑流万能川柳より)

(東電社長、3人のキャリア役人。)

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