税務署なんか恐くない!-5
- 2010.11.30
- 山根治blog
***5.税務調査の立会い-その意義
適法かつ適正な税務調査がなされるためには、第三者のチェックが不可欠である。第三者として調査の現場に臨席して、行き過ぎた税務調査をチェックし、不当な調査結果にならないように未然に防止することが何よりも大切になってくる。ところが、現実にはそのようなチェックがなされることはほとんどなく、野放し状態だ。
従来の税務調査の現場を刑事裁判に見立てると次のようになる。
まず、検事の役割をつとめるのが税務署員だ。刑事法廷とは異なり、弁護人不在の状態で裁判(税務調査)が進み、検事が一人二役を演じて裁判官にヘンシンしては判決(修正申告の慫慂もしくは更正・決定)を下している。好き勝手なことができるわけである。
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税理士は本来、弁護人の役割を果たすことが期待されている。ところが、悪法である税理士法によって国税当局に隷属させられている結果、有名無実の存在に堕し、弁護人としての役割を事実上果していない。放棄しているのである。これでは、ネズミが現われたら恐さの余り固まってしまう猫である。「お前は本当に猫か!」と叱りつけると、震えながら小声で、「ハイ、ネコです。」と下を向いてつぶやくネコだ。
多くの場合、税務署員の顔色をうかがいながら、おそるおそる対応してきた結果、勘違いした国税の連中を増長させることになったと言ってよい。昨今の、目に余る不法かつ不当な税務調査の横行は、税理士の側にも責任の一端があるということだ。
たしかに、納税者の権利を守るための法律が整備されていないことは事実であり、更には、納税者を踏みつけにしている税理士法という悪法があることも事実だ。しかし、納税者権利保護法がないからとか怪しげな税理士法に縛られているからといったことを逃げ口上として、唯々諾々として国税当局の下請機関に甘んじてきた税理士こそ問題であり反省しなければならない。納税者の視点がスッポリと欠落しているからだ。
あるべき税務調査の現場は次のようになる。これは、あくまでも、納税者の権利擁護のための法律が未整備で、かつ、悪法である税理士法が改正されない現在の状況のもとで考えることができる、あるべき姿である。
検事役は変らない。依然として税務職員である。変るのは弁護人と裁判官だ。納税者の代理人として選任された税理士が弁護人となり、同時に、「独立した公正な立場において」(税理士法第1条)裁判官の役割を果すのである。
このようになれば、税務調査の現場は一変するはずだ。税務職員の傲岸不遜な態度は影をひそめ、納税者は全く対等な立場で堂々と自らの意見を主張し、かりそめにも理不尽なことを押し付けられることはなくなるはずである。
税理士法は、第一条において税理士の使命を掲げ、次のように規定する。
なかなか立派な建前である。しかし、これまでたびたび述べてきたように(「脱税摘発の現場から-7」参照)、この建前が空洞化しているのが現実だ。端的に言えば、現実の税理士の大半は、税務当局に飼い慣らされた「忠犬ハチ公」であり、ネズミに怯えるネコである。
そこで、税理士法が高らかに唱えている税理士本来の使命に立ちかえるのである。そのためには、税理士法の呪縛を断ち切らねばならない。呪縛を断ち切る方法(「税制の抜け穴 – 脱税摘発の現場から」参照)については既に述べたところであり、何も難しいことではない。志(こころざし)を同じくする税理士仲間との連繋を密にした上で、税務調査の立会いをキチンとするだけのことだ。
現に、私はこのようなやり方で、税理士登録以来30年余り、税務調査の立会いを行ってきた。税理士であれば、私以外の誰でも直ちに実行できることである。
但し、独立性を保って税務当局と対等な立場で対峙するためには、少しでも税務当局に対して負い目があってはならない。この点、税務当局から仕事先(顧問)を斡旋してもらっているような税理士は失格だ。いわゆる天下り税理士である。
税理士法でがんじがらめにされている上に、仕事の面倒まで見てもらっているようでは、仮に国税が不当なことをしていたとしても、文句をつけたり厳しいチェックをすることなどできるはずがない。「独立した公正な立場」を期待するほうがどだい無理というものだ。納税者を踏みつけにしてでもなんとか国税のご機嫌をとり、意に逆らわないようにするのがオチである。これではまるで、親分にもみ手をして従っている腰巾着だ。あるいは、酔客からのおヒネリを期待しているタイコ持ちといってもいい。名ばかりの税理士、誇りならぬ、埃(ほこり)高き職業会計人である。
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ここで一句。
(オバチャンに 早変りする メイキャップ。)
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