税務署なんか恐くない!-4

***4.インチキの野放しとチェック・システムの欠如

 税務署のインチキはまず税務調査に始まる。現場の担当者がたとえインチキの調査を行ったとしても内部のチェック・システムが働くことはなく、そのまま課税処分(もしくは決定)へとつながる。



 税務署の処分に納得できない納税者には、建前としては一応の救済措置が用意されている。処分を行った、税務署長に対する異議の申立てだ。この異議の申立て、処分をした同一人物が判断を下すのであるから十中八九、却下される。ドロボーとか詐欺師が自らの非を自発的に認めるわけがない。

 最近のことであるが、東京国税局資料調査課が関与した怪しげな課税処分(脱漏所得と称して11億円)に異議申立てをしたところ、所轄税務署長は開き直って苦しい弁解に終始し、嘘の上塗りをした事例があった。インチキは所詮インチキだ。いくら糊塗しようと思ってもしきれるものではない。下手な弁解をすればするほどボロが出て、泥沼にはまり込むのがオチである。 私の記事(「ホリエモンの錬金術 」に噛み付いたホリエモンこと堀江貴文氏が、下手な弁解をしたばかりに自ら墓穴を掘る羽目に陥ったのと同断である。「ホリエモンの錬金術」においては上場詐欺について疑惑の指摘にとどめていたのが、私を攻撃しようとするあまり、堀江氏がポロポロと新たな事実を自白するに及んで単なる疑惑ではなくなり、上場詐欺が疑惑の域をこえて事実として明確に証明されることになったからだ(「検証!ホリエモンの錬金術 」参照)。

 次の救済措置は不服申立てだ。国税不服審判所に対する審査請求である。
 これは先の異議申立てより少しだけ増しといった程度のもので、インチキが是正されることは期待薄である。審判官が国税からの出向者か、もしくは国税の息のかかった人達で占められており、独立性に疑義があるからだ。

 審査請求が却下されると、次は裁判に移行する。
 税金をめぐる裁判は、国を相手にするもので、納税者が勝つ見込みはほとんどない。とりわけ刑事事件である脱税については、国税庁が有罪率100%と豪語(「国税庁 6 査察事件の一審判決の状況」参照)しているほどだ。
 何故か。その理由は2つ。
 一つは、裁判所が国家の代理人である国税当局の下した判断と異なる判断をしようとしない傾向にあることだ。三権分立が形骸化していると言ってよい。
 二つは、裁判官の能力の問題である。税金をめぐる裁判の内容を十分に理解している裁判官が皆無に近いということだ。よく理解できないにも拘らず、何でも知っているふりをして判決文を書いている。まるで落語に出てくる粗忽長屋の隠居である。何でも知っており、答えられないことはないと、日頃人に吹聴している手前、珍答、奇答を繰り出す人物だ。
 この隠居、落語の世界では愛すべきキャラクターであり、ただ笑っていればいいのであるが、現実に人を裁く裁判官が長屋の隠居ではたまったものではない。しかし、恐ろしいことにそれが現在の日本の税金裁判の現実だ。
 最近の事例としては、大阪国税局が計算をゴマかして6億円も課税価格を水増ししているケースがあった。第一審では全く問題にされることがなく、弁護人の対応が拙(まず)かったこともあって、国税のインチキがそのまま判決となっている。裁判官が、間違った査察官調書を正しいものとして鵜呑みにした結果である。
 ところでこの査察官調書なるシロモノ、いかにももっともらしい体裁にはなっているが、いかがわしいものが多い。自分達が勝手に思い込んだ「脱税ストーリー」のツジツマを合わせるための作文であり数字合わせだ。厳格な検証に耐え得ないものが多いのである。

 このように、発端となる税務調査の結果は、事実上、チェック・システムが働くことなく、そのまま最終結論になることが多い。チェック・システムの欠陥であり、欠如である。
 従って、出発点である税務調査とその対応が重要な意味合いを持ってくる。税務調査にキチンとした対応をすることが、納税者にとって極めて重要であるということだ。

(この項つづく)

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 ここで一句。

“自民党 昔の自分 棚の上” -別府、タッポン

 

(毎日新聞、平成22年10月14日付、仲畑流万能川柳より)

(目屎(めくそ)、鼻屎(はなくそ)を笑う。)

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