検証!! 『ホリエモンの錬金術』 -1

***(1)はじめに

 ホリエモンこと堀江貴文氏が、私のブログ記事は、“嘘八百のオンパレード”であるとして、自身のブログで私の批判を開始しました。私が4年前に公表した記事を、何故今更騒ぎ立てるのかといった素朴な疑問が湧くのですが、“弁護団とも相談のうえ、なんらかの対策をとるつもりである。このブログを読んでいたら、該当記事を即刻削除したほうが良いだろう。”(ホリエモンの錬金術なんていう下らないサイトがあったのだが。)などと、告訴とか告発をちらつかせた、なんとも高飛車な要求がなされているのですから、ことは穏やかではありません。なんだか、4年前にリーマンブラザーズというハゲタカと手を組んで、フジテレビを恫喝した構図とよく似ていますね。

 当時私は、フジテレビを昼寝を決め込んでいるドジなライオンに、ホリエモンをバズーカ砲をかかえたドラネコに見立てて、次のように記しています。

『現在進行中の仁義なき戦いは、フジ・サンケイグループを昼寝をしているライオンとすれば、ホリエモンはさしずめ、あまり可愛げのないネコといったところでしょうか。なにせライオンに立ち向かっているこのネコ、どこかからチョロまかしてきたバズーカ砲を脇に抱えているんですから。』(“ホリエモンの錬金術-1”)

 このたび私に向かってきたのは、同じ可愛げのないドラネコでも4年前に比べるとかなりショボクレているようです。しかも手にしているバズーカ砲は、よく見ると実弾の入っていない空砲だったりして。

 私が『ホリエモンの錬金術』の第一回目を載せたのは、平成17年3月15日、最終回は同年7月26日ですから、4ヶ月余りの間に2回の号外を含めると22回にわたって記事を公表しています。思い返せばこの時期は、私にとって特別な意味合いを持っていました。
 平成15年10月4日、私は冤罪によって懲役1年6ヶ月執行猶予3年の刑が確定しましたので、執筆を始めたのは執行猶予期間である3年間の半ばが過ぎた頃で、執筆を終えたのも執行猶予期間を1年以上残している時期、つまりこの記事を書いたのは、執行猶予期間中だったのです(『冤罪を創る人々』(3)上告審三.前科者としての元公認会計士)。
 しかも、国税関連20人、検察官20人の実名を公表して彼らの非行の顛末をブログ上で公開していた(『冤罪を創る人々』(第一章)登場人物のプロフィール)のですから、検事であった三井環氏のケースのように、通常であれば立件などありえない微罪によって報復されるおそれが多分にありました。とりわけ気をつけたのは車の運転でした。どのように小さな事故であろうとも再び逮捕でもされた日には、直ちに執行猶予が取り消され、収監される可能性があったのです。

 このように緊張した生活を強いられている状態の中で書き上げたのが、『ホリエモンの錬金術』でした。もともと私のブログ記事は、私のごく親しい方々に読んでいただくことを目的に書き始めたもので、現在でもその考えは一貫しており、変ってはいません(『ホリエモンの錬金術-号外)』)。加えて、ネットで公開する以上、不特定多数の方々の目にも触れる訳ですから、責任の所在を明確にするために、本名を明示しています。公表した文章の全てについて私が全責任を負うということです。
 この5年余りの間に執筆した記事の中でも執行猶予期間中のものは、とりわけ気をつけるようにしていました。名誉毀損、業務妨害などで民事訴訟を起されるだけでなく、刑事事件として告発されることも考えに入れなければならなかったからです。その上、堀江氏は当時トラブル・メーカーとして名をはせ、何かと言えばすぐ裁判に訴える訴訟マニアのような人物でしたから尚更です。

 『ホリエモンの錬金術-号外』で明らかにしたように、当時ライブドアについては様々な風聞とか憶測が乱れ飛んでいました。私はそれらの風聞憶測の類は一切無視し、専ら、堀江氏とライブドアとが、主に証取法の規定に従って開示している法定書類とか、会社自らが行ったプレスリリース、堀江氏が著書の中で虚実とりまぜて語っていることをベースにして分析をし、記事を作成していきました。事実は事実として提示して、不明なこと、偽りあるいは違法であると思われることについては、客観的な根拠を付して、”推断“し、”推計”をしていきました。細心の注意を払っていたため、それこそ一言一句もおろそかにすることなく、推敲(すいこう)に推敲を重ねたものです。

 堀江氏がこのたび、私の記事は「嘘八百のオンパレード」であると非難し、「根拠のない中傷」であるとこきおろしていますので、堀江氏が具体的に指摘していることについて改めて検証してみました。
 その結果、私の記事については一切訂正する必要がなく、当然のことながら記事の削除などする必要がないことを確認しました。それだけではありません。これまで開示されることのなかったいくつかの情報が、まさに堀江氏本人によってこのたび明らかにされましたので、皮肉なことに、逆に私の記事の正当性が他ならぬ堀江氏自身によって証明されることになったのです。これまで世間を偽りながらも隠し通してきた事実を、本人がいわば自白しているからです。詐話師ホリエモン、語るに落ちる、といったところでしょうか。

(この項つづく)

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 ここで一句。

“なんとなく 鋭さ減った ゴーンの目” -横浜、ジラム。

 

(毎日新聞、平成21年5月6日付、仲畑流万能川柳より)

(この10年、この人何をしたのやら。鳴り物入りで日産に乗り込んできた日からウサン臭さを感じていたのは私だけ?)

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