検証!! 『ホリエモンの錬金術』-2

***(2)論点の整理-2つの虚言

 堀江氏がブログで何を自白しているのか、語るに落ちるとはどういうことか、この事実を検証する前に、彼が語っている言い分について整理をしておく必要があります。堀江氏のいくつかの著書がそうであったように、この人物は論理性が相当以上に欠けているだけでなく、敢えて間違ったことを喋ったり書いたりする習性(これを虚言癖といいます)があって、読者をミス・リードするところがあるからです。堀江氏がブログで発している主な虚言は2つありますので、以下、説明を加えておきます。

 彼が敢えて事実をねじ曲げ虚言(きょげん。ウソのことです)を弄(ろう)している第一の点は、『ホリエモンの錬金術』の中心テーマが借名株の問題である、としていることです。以下、これが何故虚言であるか説明します。

 堀江氏はこれまで4回にわたって私に対する批判を展開しています。
-第一回目、平成21年4月26日( http://ameblo.jp/takapon-jp/entry-10220726351.html)
-第二回目、平成21年4月27日( http://ameblo.jp/takapon-jp/entry-10250174391.html)
-第三回目、平成21年5月3日( http://ameblo.jp/takapon-jp/entry-10253513852.html)
-第四回目、平成21年5月14日( http://ameblo.jp/takapon-jp/entry-10260129278.html)
の4回です。堀江氏が問題としている借名株については主に第一回目と第二回目に述べられています。第三回と第四回目、あるいはその後もいろいろと私の記事に難癖をつけているようですが、借名株以外の記述は堀江氏個人の単なる感想の域を出るものではありませんので、私のコメントは差し控えます。

 第一回目においてこの人物は、私の記述の中の、

「その結果、私は、上場時点で第三位の大株主とされているA氏(注:私の記事では本名の有馬純一郎)名義の株式960株は、実際にはホリエモンの株式だったのではないかと考えるに至りました。つまり、Aさんの名前を借りた堀江貴文所有の株式ではないか、言い換えれば、上場直前に株式のスリ替えがなされているのではないかということです。」(「ホリエモンの錬金術 -6」)

を取り上げて、「嘘八百のオンパレード」の中でも「特に酷い」と切って捨てています。この借名株の問題を真っ先に取り上げたのは、

「これが一番問題が大きく看過できなかったからです。全部読んでみても、彼(山根注:彼とは私、山根治のことです)が一番言いたかったのはこの問題だということがよく分かります。」(「ホリエモンの錬金術なんていう下らないサイトがあったのだが。」)

と、私が最も言いたかったことが借名株の問題であるなどと勝手に決め付けています。第三回目においても、堀江氏は、

「つっても、前も書いたとおりこのサイトの話の中核は、「A氏所有の株が、実は私の借名株だったという、トンデモ話」なので、本来は、そもそも批評するまでもない話なのですが… 検察までも信じてしまっている事実もあるわけで。それは私や私の周りの人に実害があるのでなんとかせねばと。」(「ホリエモンの錬金術サイト批評その3」)

と、私の記事の中心テーマが借名株であったと、強弁(きょうべん。筋の通らないことをへりくつをつけて正当化しようとすること-新明解国語辞典)を繰り返しています。

 本当にそうでしょうか。20回にわたって連載した『ホリエモンの錬金術』の中で私が一番言いたかったのが、本当に借名株の問題なのでしょうか。その間の事情を改めて振り返ってみます。

 私は詳しい説明をするに先立って、ホリエモンが一般大衆をケムリに巻いて騙しているポイントが3つあることを明記し、その3つのポイントに関する具体的な記述へと移っています。つまり、

”ホリエモンのマジックは、彼の3つのトリックに集約されています。一般投資家の眼を欺(あざむ)いてきた騙しのテクニックと言っていいでしょう。”(『ホリエモンの錬金術-3』)

と指摘した上で、
-一つ目のトリックは、上場に際して1,440倍にも会社の評価額を吊り上げていること、
-二つ目のトリックは、常軌を逸した株式分割、つまり、上場後に通算では3万分割、上場直前になされた12分の1の株式分割を加味すれば36万分割がなされていること、
-三つ目のトリックは、決算数字のお化粧、更に踏み込んで粉飾の疑いがあること、
を摘示し、これら3つのトリックが相互に密接に関連していることを、公表されている資料をもとに具体的に説明しています。
 このように、堀江氏が無理矢理ひっぱり出してきた借名株の問題は、本筋から離れた枝葉のことでしかなく、全体の論旨とは関係がありません。借名株が事実であろうとなかろうと、私の所論には変りがないのです。つまり、堀江氏は、私の記事の趣旨を敢えてねじ曲げ、曲解することによって、事実ではないことを事実であるかのように言い募り、私を批判しているのです。この人は本当に私の記事を読んでいるのでしょうか。疑問ですね。もっとも、この人物が借名株というのは事実無根の言いがかりである、と喚いている口先からポロリポロリと新たな真実が吐露されていますので、逆に借名株自体の疑惑が深まってきました。これについては後に詳述いたします。

 私が注目したのは、360百万円という架空資金の流れでした。借名株の疑惑は、この架空資金から派生する疑念の一つでしかなかったのです。この間の事情を説明いたしますと、-
 平成11年11月5日に共同経営者であった有馬晶子さんの持株120株の全てが堀江氏に譲渡されたことになっています。譲渡価格は一株300万円、総額で360百万円。新株発行届出目論見書には、この株式の移動理由として「売却人(山根注:有馬晶子さんのことです)の資金化の必要」と明記されているにも拘らず、360百万円という購入資金が実際には動いている形跡がないことが判明。この時点でキャッシュの動きがなかったことについては、このたび初めて堀江氏本人の口から明らかにされ、私の推断の正当性が証明されています。キャッシュのやり取りが実際にないのであれば、上記の目論見書の記載は誤っていることになり、虚偽記載ということになるのです。このことについては派生的な問題である借名株の疑惑がかえって深まったことと共に改めて詳述いたします。
 私がこの虚偽記載を、ホリエモンのトリックを破るためのキーポイントとしたのは、この時点で、株価が一株5万円から300万円へと一挙に60倍にも吊り上げられ、その後上場までの短期間に、実に1,440倍にも吊り上げられるキッカケになった最初のトリックであると判断したからでした(『ホリエモンの錬金術-8』)。

 このように、360百万円という架空の資金の流れは、ホリエモンの錬金術という詐術のスタートをなしているものです。4年前の時点で動かし難い証拠(『ホリエモンの錬金術-12』の”その1枚”)を入手したことから、外部資料でしか判断できない状況のもとで、唯一、水掛け論に終らないことを確信し、あくまでも”4年前の時点で”巧妙なトリックを破るキーポイントであると言ったまでのことです。その他の、異常な株式分割の当否とか、粉飾については、違法性の疑いが濃厚であることを述べたものの、株式分割については法律の専門家でもありませんし、粉飾については内部の具体的なことが明らかではありませんので、私としては極めて慎重な言い回しに終止しています。そのような中にあって唯一確信をもって推断できたのが360百万円の架空のキャッシュの動きだったのです。

(この項つづく)

 ―― ―― ―― ―― ――

 ここで一句。

“一つうそ 見つけ全部が うそに見え” -柏原、柏原のミミ。

 

(毎日新聞、平成21年5月16日付、仲畑流万能川柳より)

(ウソの中でも数字のウソは最後までゴマかし切れるものではありません。どこかでツジツマが合わなくなるからです。ホリエモンのゴマかしにしても、国交省のゴマかしにしても。)

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