ホリエモンの錬金術 -3

ホリエモンが、株式市場という信用機構を悪用して創り上げたのが、ライブドアという会社です。泡沫会社の典型と言っていいでしょう。このような会社の上場を認め、その後の傍若無人な振る舞いを放置しているマザーズは、一体何を考えているのでしょうか。また、三人いるライブドアの監査役は、一体どのような監査をしたというのでしょうか。この会社、果して上場会社としての適格性を備えているのか、疑わしい限りです。他にもこのようないかがわしい会社が、マザーズに上場されているのではないかと思うと、背筋が寒くなってきます。

これから私は、ホリエモンのマジックを、具体的に数字の上から明らかにしていく予定ですが、とりあえず結論の概要を示しておきます。
ホリエモンの現在の資産の主なものは、2億2千万株強のライブドアの株式(一株340円で計算すると、748億円)です。
この膨大な資産は、もとを辿れば、5年半ほど前に、彼が会社に投入した3,300万円の資金でした。5年余りで、この3,300万円を748億円へと、なんと2,200倍以上にも膨らませているのです。
現在748億円となっているホリエモンの資産は、一体どうしたものでしょうか。ホリエモンはどこから得たというのでしょうか。
ライブドアから? いいえ、違います。では、どこから?
実は、この748億円という富は、全て一般投資家からホリエモンに移ってきたものなのです。つまり、一般投資家からホリエモンへ、700億円を超える富の移転がなされているのです。しかも、彼らは、ホリエモンに自分たちの富を差し出したとは夢にも思っていないことでしょう。
では、このような富の移転は、一体どのようになされたのでしょうか。
ここにホリエモンのマジックがあり、私が錬金術と名づけた巧妙なカラクリがあったのです。
ホリエモンのマジックは、彼の3つのトリックに集約されています。一般投資家の眼を欺(あざむ)いてきた騙しのテクニックと言っていいでしょう。

一つ目のトリックは、5年前のマザーズ上場に際して、会社の評価額を、なんと1,440倍にもつり上げていることです。目を疑いましたね。
上場前8ヶ月の間に行なわれたこのトリックは、現在東証一部に上場されている株式会社光通信と株式会社グッドウィル・コーポレーション(東証一部のグッドウィルグループ株式会社の当時の子会社。平成13年7月、全株式が譲渡されており、現在は同社の連結から外れています)とが深くかかわっているようです。
この2社とホリエモンによっていかがわしい上場シナリオが創り上げられた形跡があり、そのシナリオをもとに、株式会社オン・ザ・エッヂ(ライブドアの前身)という零細企業を、“かご抜け増資”(私の造語です)によって、いかにももっともらしい会社に仕立て上げ、ヘンシンさせているのです。
1,440倍という法外なまでにつり上げられた会社の評価額は、ひとたび会社が上場され、株式市場という信用機構に乗ると、会社の株価形成の目安となっていきます。
ホリエモンが、口を開けば会社の価値についてもっともらしいことを喋り、「現在のライブドアの企業価値は2,000億円だ」などとホラを吹いていることのルーツは、まさに、フーセンのようにふくらませた作為的な評価額にあります。実体が全く伴っていないのです。つまり、上場時の公募価格の値決めが、極めていいかげんなもので、ゴマカシそのものであった、ということです。
これには、前記2つの会社と共に、インベストメント・バンクの大和証券エスビーキャピタル・マーケッツ株式会社(現、大和証券SMBC)が深く関わっているようです。この大和証券SMBC、フジテレビのTOBに絡んで鹿内家とトラブルを起したりしています。このたび顔を出してきたSBIの背後にもいるようですが、から騒ぎのドサクサにまぎれて、一体何をしようというのでしょうか。

二つ目のトリックは、常軌を逸した株式分割です。法外なまでにつり上げられた評価額をスタートとして形成された“株価”を維持、あるいは更につり上げるためになされたとしか考えられないもので、ここまでヒドイ株式分割は前代未聞であり、これをもって適法であると強弁することは難しいでしょう。
上場後、平成13年7月23日の1対3の分割を皮切りに、わずか3年の間に4回にわたって行なわれた株式分割は、通算すれば上場時の株式を3万にも分割する破天荒なものです。
ちなみに、上場直前になされた12分の1の株式分割を加味すれば、36万分割にもなります。あまりのことに、言葉を失ってしまいました。
確かにおかしいが、株式分割自体は違法ではないから仕方がないと考えている向きもあるようですが、トンデモありません。
これらの株式分割は、きまって公募増資の前後になされており、なかでも平成16年4月24日の公募増資の2ヶ月前に行なわれた100分割とそのわずか4ヶ月後に行なわれた10分割は、余りにも見えすいたヒドイものでした。この期間のライブドア株の売買手口を克明に洗ってみると、あるいは、株価操作とかインサイダー取引といった問題が出てくるかもしれません。
ホリエモンが行なった、上場直前を含めて5回にわたる通算36万分割の胡乱(うろん)な背景を考えてみれば、適法性が大きく揺らぐのではないでしょうか。この異常な分割による最大の受益者は、会社の筆頭株主であるホリエモン自身であることを忘れてはいけません。
さらに、上場以来続けてきた“いかがわしい決算”(第3のトリック)を背景に加えれば、異常な株式分割の適法性は更に揺らぐことでしょう。
この問題については、テレビなどで寝ぼけたコメントを連発している弁護士とか大学教授が多い中で、私の目についたところでは一人だけ、鋭い指摘をしている人がいましたので、記事の一部を紹介します。

“株券の印刷が間に合わず、売り手が株券の受け渡しができないことを見越して、百対一の株式分割を繰り返したのが今話題の企業である。百対一の株式分割をすれば株価は百分の一になるはずが十八倍にもなる。下がる時期も分かっているから往復で大もうけだ。こんなのはたった今でも違法に決まっているようなものだが、現実には適法とされ、しかし問題だから改正が必要とのことだ。
・・・
金融弁護士と金融庁に任せておくと、今やっていることは皆、適法とされる。米国は不公正取引を網羅的に捕まえる包括規定が大活躍するため、やましい行為に対する抑止力が働く。日本にもある包括規定を活用すれば、こうした行為はたった今違法だ。
「適法だが問題だから法改正」との見解は、害されている被害や損われている価値の回復や救済は行なわないことを意味する。司法が勇断を示さない限り、日本の資本市場、企業社会の劣化はとどまるところを知らないだろう。“

(「大機小機」“盤側”氏。日本経済新聞、平成17年3月15日号。このコラムは、各分野の実務のスペシャリストが匿名で書いているようです。日経の記事の中では、比較的レベルが高く、本音が出ている数少ないものです。) (つづく)

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ここで一句。

“占師化粧に隠す過去のキズ” -大牟田、峠一歩。

 

(毎日新聞:平成17年1月21日号より)

(戦後、歴代の総理大臣の指南役と言われた陽明学者安岡正篤氏。安岡氏が創立した日本農士学校で同氏から直接教えを受けた私の知人が、先日憤っていました、「痴呆症が始まっていた先生をダシにしてノシ上がっていったあの女だけは許せない。」
調査を進めていくと、ホリエモンと同じようなことをやっている連中が、かなりいるらしいことが判ってきました。億万長者になって、セレブな生活を送っているこの人達は、過去のキズを、早く隠したいでしょうね。
しかし、有報がある限り、キズを消すことはできませんよ。)

 

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