ドロボウという名のゼロ金利政策 -(1)

ゼロ金利政策。この10年余り、預金の金利がゼロに等しい状態が続いています。

羊のように従順な日本国民は、心の中では不満に思ってはいても、政府に対して大声をあげて抗議などしませんでした。

私は常日頃、このゼロ金利政策こそ日本経済の立ち直りを阻害しているものであると考えています。
つまり、預金者の側からしますと、金利収入が期待できないのですから、生活の将来設計に大きな支障をきたし、ひいては、現在の消費行動を萎縮させ、消費需要にブレーキをかけ、結果的にGDP(国民所得)の足を引っ張っています。
銀行を通して金を借りている企業の側からしますと、割安な金利で資金が調達できるのですから、それほど努力しなくとも利益を出すことができる訳で、企業努力がなおざりになり、経済の活性化に水を差すことになります。

このところ日本のGDPが500兆円の水準で停滞しているにも拘らず、企業の利益が増加しているようです。国全体としての所得が変わらないのに企業部門の所得が増えているとも言える訳で、このことは取りも直さず、家計部門の所得が減っていることを意味します。

先般の国会の予算委員会で、岩国哲人さんがこのゼロ金利問題を取り上げました。
日銀総裁は、岩国さんの質問に答えて、家計部門が毎年受け取る利子収入の減少額は154兆円(93年から10年間の累計)に上ることを明らかにしています。(毎日新聞、平成17年1月29日付)。
10年で154兆円。1年間にしますと15兆円強になります。日銀総裁がどのような根拠でこの数字を出したのかは不明ですが、あるいは、個人の預貯金778兆円(日銀、2004年3月末の資金循環統計より)の2%とでも考えてはじき出したものかもしれません。日銀が明らかにしたこの数字は極めて控えめなもので、私は少なくともこの倍の30兆円(年間)はいくと考えています。
岩国哲人さんは、この家計部門の減少分である154兆円について、

“経済用語では『所得移転』というが、一般用語では『どろぼう』だ”などと批判し、政策転換を求めた。-同新聞、同日付。

岩国哲人さんは、一般の人に対して極めて分かり易い言葉で、政治を語り、経済を語る政治家として知られています。
このドロボウという言葉こそ、まさにゼロ金利政策の本質をついたもので、経済の実態を厳しく見つめる岩国さんならではの至言と言っていいでしょう。

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ここで一句。

“良心はとがめないのか低金利” -宇部、福田乱童

 

(毎日新聞:平成16年10月26日号より)

(一億円というお金さえ忘れてしまう政治家がいる位ですから、良心など忘却の彼方にあるのでしょうね。)

 

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