斐伊川治水事業の費用対効果及びシミュレーションに関する国交省との意見交換について

 8月30日に行なわれた国土交通省出雲河川事務所との話し合いに、弊社主任コンサルタント山根治が出席し、意見を述べましたので、その旨お知らせいたします。

-日時:平成22年8月30日(月)2:00PM~5:00PM

-場所:財団法人島根総合研究所(松江市東本町5丁目山根ビル1F)

-出席者(住民側):北川泉(財団法人島根総合研究所所長理事)、山根治(弊社主任コンサルタント、財団法人島根総合研究所理事長)他7人

-出席者(行政側):溝山勇(国土交通省中国整備局出雲河川事務所副所長)他3人
これまで私達の呼びかけを無視して話し合いの機会を持とうとしなかった国土交通省であったが、民主党島根県連代表・小室寿明衆議院議員の斡旋により、ようやく実現したものである。

弊社主任コンサルタント山根治が国土交通省に意見を述べた際の配布資料

-(資料1) 斐伊川水系整備計画(H22.5.31)検討資料
-(資料2) 今回のB/Cについてのまとめー様式5、費用対便益
-(資料3) 大橋川改修事業等の必要性について
※資料1~3を一括ダウンロード(239KB。20100907-siryou.pdf)

大橋川改修事業等の必要性について

(※弊社主任コンサルタント山根治が国土交通省に意見を述べた際の配布資料3)
***1.大橋川改修事業は治水の点から本当に必要か?
****(1) 事業費の変遷
-270億円(S54) → 714億円(H20) → 493億円(H22)
-※B/Cのチェックを入れると、許容事業費は50億円未満(ダム・放水路完成後はゼロ)となる。
****(2) 水害被害見込額の水増し
-昭和47年水害の実績と1/80の被害見込額との比較。
*****① 1/80の水害被害見込額
(※OL1、OL2、OR1、OR2、4ブロックの合計額)
-前回 (H19年度) 387,921百万円
-今回 (H22.5.31) 201,854百万円
-※186,067百万円の減少
*****② 昭和47年水害実績(水害統計)
-20,000百万円(デフレーターによる換算額)
*****③ ①と②の対比。
-前回 (H19年度) 19倍の水増し
-今回 (H22.5.31) 10倍の水増し
*****④ 政策評価法との関係
-大幅な水増しをしなければ、B/Cが政策評価法の要請(B/C>1)に合致しなくなる。
****(3) 尾原ダムと放水路が完成した場合
-シミュレーション(国交省、H20.2.25公表。S47水害(1/80)、2点セット)
-前提=放水路に950㎥/S放流。許容量は2,000㎥/S。
-何故半分以下の放流を前提とするのか? 放水路(2,000㎥/S)について、例えば、1,100㎥/Sの放流にするだけで十分。

***2.中海、境水道の護岸改修事業は治水の点から本当に必要か?
+中海ブロック(NL1~NL10、NR1~NR20)、1/10、1/30、1/50、1/80、1/100、1/150の全てにおいて、水害被害見込額ゼロ(今回の様式-4)。
前回、NR16の1/50で-8百万円、1/80で-11百万円、1/100で-14百万円、1/150で-25百万円のそれぞれマイナス、NR17の1/100で-34百万円、1/150で-6百万円のマイナスとなっており、信頼性に欠ける(様式-6 年平均被害軽減期待額の被害額-事業前)
+境水道ブロック(DL1.DL2、DR1)も、1.と同様被害見込額ゼロ。ちなみに、前回の様式-6では境水道ブロックは全く取り上げられていない。
+斐伊川治水事業は治水の点から本当に必要か?
++総事業費7,000億円。
※B/Cのチェックを入れると許容事業費は1,000億円未満。
+水害被害見込額の水増しの実態
++出雲部(放水路関連)の水増し。
+++昭和47年水害の実績値100億円。
+++1/80の見込値1兆6,000億円。
+++→160倍の水増し。
++水害被害見込額(全体)の変化。(単位:百万円)

流量 前回(H20) 今回(H22) 差異
1/10  *1 24,240 374,206 349,966
1/30 1,362,273 685,267 △677,006
1/50 1,702,208 910,514 △791,694
1/80  *2 2,028,191 1,173,258 △854,933
1/100 2,154,053 1,301,910 △852,143
1/150  *3 2,411,901 1,567,993 △843,908

—※1: 1/10では、 15.4倍に増加。
—※2: 1/80では、   42%の減少。
—※3: 1/150では、  35%の減少。
++便益(B)の額の変化。
+++前々回(H15) 2兆  658億円
+++前回 (H20) 1兆5,653億円
+++今回 (H22) 1兆4,700億円

国交省との話し合いメモ

(※話し合いの場で国土交通省担当者が口にしたこと)
【追記】
太字は平成22年9月22日に国土交通省担当者より訂正を求められた箇所。なお、以前記載していた箇所については取り消し線付で残した。
***1.バックデータの取り扱いについて
-今回のデータと2年前のデータをそのまま比べるのは意味がない。
-前回は斐伊川水系河川整備基本方針(H21.3改正)放水路が未完成なことを前提に作成したが、今回は斐伊川水系河川整備計画(案)(H22.6公表)放水路が完成していることを前提にしているので、事業前・事業後の被害見込額は異なる。
-前回は1/150の水害被害をゼロにする整備が前提。今回はS47年水害被害を最小化することを最優先した整備が前提。よって、事業後の被害見込額は異なる。
-前回と今回でマニュアルは変っていない。
***2.河川整備基本方針と河川整備計画について
-基本方針は流量規模1/150を想定している。整備計画は、基本方針を実現するための、今後20年間の短中期的な計画。
-整備計画はS47年水害被害を最小化することを目指す現実的なもの。平成22年6月に公表済み。
-整備計画案には以下のことを盛り込んだ。
–中洲は削らない。
–川底は掘削しない。
–松江大橋や新大橋は架け替えない。(※正確には「関連事業として松江市等と調整」。河川管理上は松江大橋や新大橋の架け替えは必要ない。
–すみやかに大橋川全域に築堤する。
–下流の拡幅(多賀神社近辺など)を先行させ、上流の拡幅は時間をかけて実施する。
***3.大橋川の事業費について
-前回と今回が違うのは、S47年水害被害の最小化を優先し、事業を縮小したため。
-具体的なことについては、情報公開で請求して欲しい。
***4.シミュレーションについて
-4:5の割合以外で放流することは、神戸川沿いの住民の理解を得られない。
-そもそも放水路の分流堰は、自然越水方式なので、4:5の割合でしか流せない。
-シミュレーションの前提である放水路の分流量950t/Sを1,100t/Sに増やすのは技術的に不可能。
***5.S47年水害について
降雨確率流量規模の1/80に相当するが、当時とでは社会背景等が違うので、デフレーターを用いても一概に比較できない。
-資産(一人当り)は12倍になっているし、世帯数は1.8倍になっている。家屋の評価額は5倍になっている。
-水害統計は実際に起った水害被害額を計算したものであるのに対して、B/Cは起りうるリスクとしての水害被害額を計算したものであり、両者は全く異なる。単純な比較はできない。
***6.境水道・中海について
-洪水対策ではない。
-高波・高潮対策で実施。
***7.今後の話し合いについて
-地域住民との話し合いがつかない限り、事業を行なわない。

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