疑惑のフジテレビ -3

これからの話を進めていく上で、改めて確認しておきたいことがあります。

それは、ライブドアがそもそもどのような会社であったかということです。

昨年の20回にわたる連載において、私が指摘したのは、ライブドアの上場適格性についての疑問でした。私はいくつかの具体的な根拠を示して、ライブドアの上場企業としての適格性に疑問符を投げかけました。

トリックを用いて偽りの上場を果たし、上場後も数々の無法な行為を繰り返している存在であり、上場企業という仮面をかぶった“ギャンブルファンド”であるというのが私の結論でした。

東京地検が1月16日に摘発してから後のマスコミの論調を見ていますと、ライブドアという会社の本質を考えることなく、その時々に検察から意図的にリークされる情報を大げさに取り上げては、センセーショナルに騒いでいるだけのようです。
あるいは不確かな情報をもとにして妄想をたくましくし、憶測記事を書いたり、事情通とか専門家の顔をした人達がテレビに出てはさほど根拠のないことを、したり顔をして話したりしています。

たとえば、1月28日のTBSの筑紫哲也さんの番組で、立花隆さんがいつものように、猫背のポーズで上眼づかいをしながら、ライブドアとウラ社会とのつながりを得意そうに喋っていました。この人は昨年も、ライブドアの前身であるオン・ザ・エッヂが上場するときにウラ社会の金を借りたのではないか、とおよそピント外れのことを憶測して平気で喋っていますので、このテの噂話が好きなのでしょう(「ホリエモンの錬金術-6」参照)。
あるいは、1月29日のテレビ朝日のサンデープロジェクトで、田原総一朗さんが某週刊誌の記事をとりあげて、ゲストとして出ていた、ウラ社会の実情に詳しいとされているM氏に話を振り、ライブドアとウラ社会との関連をしつこく尋ねていました。

立花隆さんとか、田原総一朗さんに共通しているのは、ライブドアという会社がカタギの会社であり、オモテの存在であるという誤った思い込みであり、先入観です。
つまり、ライブドア→上場会社→正業→カタギの会社→オモテの存在と思い込んでいるのです。

ところが、ライブドアが上場会社であることは紛れもない事実ではあるものの、上場時点で既にやっていることが正業ではなく法の裏をかく虚業であり、IT企業という看板をかかげてはいるものの、実際の稼ぎの多くは世間に向って胸を張って説明できないやましいものであるとすれば、とてもオモテの存在とはいえないのです。上場会社としてスタートした時点から、すでにカタギの会社ではないのです。
ライブドアの創業当時はともかくとして、東証マザーズへインチキ上場をくわだてた時点以降は、とてもカタギの会社とは言えないのです。暴力団だけがウラ社会の住人ではありません。むしろオモテを装いながら人を騙して金を巻き上げるのは、暴力団よりもタチが悪いのかもしれません。
従って、立花さんのように、いかにも秘密情報をつかんでいるふりをして、ウラ社会とのつながりをほのめかしたり、田原さんのように、テレビを井戸端会議のレベルに落して、もっぱら視聴者の興味を引くようなことを質問したりするのは、ライブドアという会社自体がウラ社会の存在であることに思いいたらないからでしょう。

このお二人は、上場企業の情報の宝庫である有価証券報告書をご存知ないのでしょう。それにしても、もっともらしい顔をして上場企業のことをあれこれと論じているこの二人は、肝心要(かなめ)の有報をなおざりにしているのですから驚きですね。
有報を見ないで上場会社を語り、その経営者を語るのは、ドーランを塗りたくって厚化粧している人の顔だけを見て、健康診断をする医者のようなものです。脈もとらなければ、聴診器もあてず、血液検査さえしないのですから、ヤブ医者以前の存在といっていいでしょう。
ライブドアはカタギの会社ではなく、ウラ社会の存在なのですから、いまさらウラ社会とのつながりを問題にすること自体がおかしいのです。このところ、検察のリークなのかどうかは判然とはしませんが、一部政治家との黒いつながりとか、マネー・ロンダリング、あるいは脱税疑惑など、次々にマスコミは面白おかしく報道しています。
これらのことは、昨年の流行語大賞を受けた堀江貴文氏の言葉を借りれば、私にとっては全て“想定内”のことなのです。バレなければなんでもありのウラ社会のことなのですから、さもありなんというだけの話です。

思えば、かつてのバブル経済のときに暗躍した仁義なき地上げ屋のようなものかもしれません。ポンコツ会社であろうとお構いなしに買い取っては、利用価値がなくなれば転売するか、捨てていくのですから、買収対象が土地から会社に変っただけなのでしょう。
優良企業にネライを定めては、もっともらしい屁理屈をこねまわしてサラリーマン経営者(オーナー経営者ではないという意味です)を脅しあげて株価を吊り上げ、次から次へと高値で売り抜けているMファンドも、同じ穴のムジナかもしれません。堀江貴文ことライブドアを詐欺師とすれば、Mファンドはさしずめ火事場ドロボーといったところでしょうか。

最近(平成17年12月27日)公表された、ライブドアの第10期の有価証券報告書は、ギャンブルファンドとしてのライブドアの小細工の集大成といえるもので、直近の一年間に行った不正行為の生々しい実態が数字の上で躍動しています。
マザーズ上場以来第6回目であり、上場企業としてはおそらく最後になるであろうと考えられる、この第10期の有報で開示されている決算書は、連結、個別ともに、これまで以上に珍妙なシロモノです。見方によれば、マンガ以上におもしろいものですので、興味のある方はネットから引き出してご覧になってみて下さい。案外検察の次の動きが予測できるかもしれませんよ。
ちなみに、開示されてから一ト月程しかたっていませんので、検察当局は未だ十分な検討さえしていないようです。

フジテレビは、このようなウラ社会の存在ともいうべきライブドアに440億円という多額の出資をして、大株主になり、業務提携をしたり、役員まで送り込んでいたのです。ライブドアの身内になることは、ウラ社会の存在であるライブドアにオモテ社会の太鼓判を押したことを意味しますので、公益性の高いフジテレビとしては由々しき問題であり、今後大きな社会問題に発展することでしょう。

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ここで一句。

“握手した手洗い褒めた口拭(ぬぐ)い” -藤沢市、朝広三猫子。

 

(朝日新聞:平成18年1月26日号付“朝日川柳”より)

(選者の評に曰く、-マスコミ、自民党、やじ馬諸兄姉。他のマスコミとやじ馬は高見の見物でしょうが、フジテレビと自民党はそうはいかないでしょう。“超大型詐欺(さぎ)事件”の損害が今後表面化していくにつれて、野党などの追及とは関係なく、両者に対してボディーブローのように打撃が加わっていくことでしょう。多くの被害者が失った、あるいは失うであろうお金の、いわば“怨念”の塊が、フジテレビと自民党に向って、大津波のように押し寄せることになるはずです。)

 

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