検証!! 『ホリエモンの錬金術』-4
- 2009.06.16
- 山根治blog
虚言である理由の3つ目は、私の記事が検察に対する告発を目的としたものではないことです。この理由を3番目に持ってきたのは、たまたま3番目になっただけのことで、前の2つの理由に劣らない意味合いを持っています。シェイクスピアの顰(ひそみ)にならえば、Last but not least(“最後に述べるが重要性は他に劣らない”-岩波英和大辞典)といったところです。
私がテーマとしてきたのは、ホリエモンという特異な(異形といってもいいかもしれません)人物の一つの側面を具体的な数字によって解明すること(『ホリエモンの錬金術-20』)、および、ライブドアというインチキ会社が上場適格性を持っているかどうかであって、堀江貴文氏を刑事罰に問うことではありませんでした。(『ホリエモンの錬金術-3』、『ホリエモンの錬金術-20』)
借名株の問題について言えば、前回述べましたように執筆時点で公訴時効が完成していることを知っていましたので、そもそも刑事罰の問題など生ずる余地が全くなかったのです。
私が問題としたのは、ライブドアに代表されるようなインチキ会社が当時かなりの数、株式市場に存在していることでした。本来上場などさせるべきではない不良会社を、規制緩和の名のもとに量産している証券取引所と監督機関である証券取引等監視委員会。これらの公的な役割を与えられた機関がその役割を十分に果していないことを指摘し、ライブドアの上場適格性を改めてキチンと審査すべきであると提言したのです(『ホリエモンの錬金術-3』)。
上場適格性に大きな疑問符のつく会社は、ライブドア以外にも見受けられたのですが、ライブドアほど巧みに法のスキ間をついては、傍若無人の振舞いをして株式市場を食いものにしていた会社は他に見当りませんでした。
上場の審査と上場廃止の審査とは、ライブドアに関しては東京証券取引所(マザーズ)が行っています。行政機関として監督しているのは証券取引等監視委員会です。
これらの機関がライブドアの上場適格性をチェックする場合には、基本的には公訴時効などは関係ありません。検査権限があるのですから、何年前のものであろうとも、虚偽であるならば訂正報告書を提出させ、上場廃止基準に抵触するか否か審査をするように促すことが目的だったのです。
…
私は、証取法とか上場基準に抵触するおそれのある3つの事実を、証取法の規定に従って正式に提出された有報等の分析を行ない、既にその概要を説明いたしました。…
東証は審査能力と自浄能力とをどこかに置き忘れているようですが、証券取引等監視委員会は、どのように対応するのでしょうか。
仮に、私が提示した3つのポイントがしかるべき機関でそのうちの1つでも事実として確認され、ライブドアの上場適格性に問題ありとされるならば、ライブドアの上場廃止が現実問題として検討されるに至るでしょう。』(『ホリエモンの錬金術-5』)
このように私は、一貫してライブドアの上場適格性を問題にしてきました。
現時点で振り返ってみますと、東証と証券取引等監視委員会の対応のまずさが浮き彫りになってきます。ライブドア関係者だけでなく、これらの関係者も私のブログに頻繁にアクセスしていたようですから、検察が摘発するより先にしかるべき手を打つべきだったのです。ライブドアに対して適切な行政指導がなされなかったことに加えて、ライブドアの上場廃止が遅きに失したということです。
もしこれらの公的機関が素早く行動を起していたならば、フジテレビがライブドアというインチキ会社の大株主になることはなかったでしょうし、小泉純一郎氏も郵政選挙のシンボルにかつぎあげることはしなかったでしょう。フジテレビがライブドアに加担し、時の政権政党が堀江氏にお墨付きを与えた後に、ライブドアのバクチが加速し、被害者が急増した事実を考えますと、これらの公的機関がその間何もせずに手を拱(こまぬ)いていたことを改めて問題にせざるを得ません(『疑惑のフジテレビ』)。
堀江貴文氏が刑事裁判にかけられていることについては私の関与するところではなく、彼の刑事裁判の行方(ゆくえ)には関心がありません。私の目的が堀江氏を刑事告発することではなかったからです。(『ホリエモンの錬金術-20』)
ただ現時点でも変らない私の考えは、『ホリエモンの錬金術』で明らかにした厳然たる事実、つまり、堀江貴文氏の財産のほとんどは、正当な行為によって得られたものではなく、被害をこうむった多くの人々に直ちに返還されるべきものであることです。
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ここで一句。
(マンガおたくも、くの一も。)
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