原発とは何か?-号外② 原発事故の特殊性(1)

***-原発事故の特殊性(1)

 東京電力が起こした原発の事故は、一般企業が起す事故と比較して、事故責任の点で著しく異なっている。いつ、誰が、どのような形で事故の賠償責任をとるのか極めて特殊な仕組みになっているのである。



 東京電力の事故賠償責任について関連する法規は次の4つである。

+原子力損害の賠償に関する法律(昭和36年6月17日、法律第147号)

+原子力損害賠償補償契約に関する法律(昭和36年6月17日、法律第148号)

+電気事業法(昭和39年7月11日、法律第170号)

+金融商品取引法(昭和23年4月13日、法律第25号)

1.2.は、東京電力の原子力事業者としての賠償責任を定めたもので、原発事故の基本となるもの、

3.は、東京電力の電気事業者としての賠償責任を果たす上で原資を定めたもの(電気事業法第19条第2項)、

4.は、東京電力の上場企業としての賠償責任の開示を定めたものだ。

 1.~3.は、いわば電力会社の、電力会社による、電力会社のための定めである。電力会社のかわりに経済産業省と言ってもよい。両者は一心同体の存在だからだ。癒着を通りこして文字通りの一心同体だ。
 1.~3.の法律は、表向きは原発事故の無過失・無限の賠償責任を電力会社に課してはいるものの、その内実はさにあらず。国会の議決を得ることが条件になってはいるが、賠償責任のツケは全て国民に回るようになっている。言い換えれば、電力会社も経済産業省も賠償責任については一切お咎めなしという、一般国民を蔑(ないがしろ)にした法体系になっている。驚きを通り越して、呆れるばかりである。
 つまり、1.~3.は、電力会社と経済産業省の手の中にあるもので、あとは無知蒙昧な国会議員さえ適当にあしらっておけばどうとでもなるものだ。たとえどのように間違ったことがなされようとも、チェックする者がいない。このたび成立した「原子力損害賠償支援機構法」の審議過程(「平成23年7月8日(金曜日) 衆院本会議」、「平成23年7月11日(月曜日)東日本大震災復興特別委員会」等)を見るだけでも明らかだ。役人達のやりたい放題が野放しにされている。国会の場で茶番劇が行われているのである。

 これに対して、賠償責任の開示を義務付けている4.の金融商品取引法は、全く様相を異にする。電力会社とか経済産業省が自由勝手にできるものではない。所轄官庁である内閣府(金融庁)であろうが、官庁のボス的存在である財務省であろうが、同様である。賠償責任の開示は、財務書類(決算書)に関することがらであり、財務書類は、会社の経営者が、企業会計原則をベースにした財務諸表規則に従って作成しなければならないからだ。
 企業会計原則に反することは、やろうとしてもできない仕組みになっている。1.~3.の法律とは異なり、厳然たるチェックシステムがあるからだ。監査人(公認会計士、監査法人)による法定監査である。
 ところが、東京電力の場合、あろうことか肝腎の監査人(新日本有限責任監査法人)が企業会計原則に反することを認めてしまった。不知とか黙認のレベルではない。東京電力とグルになって積極的に認めているのである。
 ただこの場合は、1.~3.とは異なり、やりたい放題が野放しにされることはない。有価証券報告書に歴然たる痕跡が残っており、第三者が検証できるようになっているからだ。

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 ここで一句。

“裏の裏読んで読まない敵に負け” -行田、ひろちゃん。

(毎日新聞、平成23年9月20日付、仲畑流万能川柳より)

(碁敵(ごがたき)が互に交わす戯言(ざれごと)は、下手な考え休むに似たり。)

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