冤罪を創る人々vol.107

2006年04月04日 第107号 発行部数:601部

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「冤罪を創る人々」-国家暴力の現場から-
http://consul.mz-style.com/catid/11

日本一の脱税事件で逮捕起訴された公認会計士の闘いの実録。
マルサと検察が行なった捏造の実態を明らかにする。
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山根治(やまね・おさむ)  昭和17年(1942年)7月 生まれ
株式会社フォレスト・コンサルタンツ 主任コンサルタント
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●「引かれ者の小唄」 ― 勾留の日々とその後
http://consul.mz-style.com/catid/41

※「引かれ者の小唄」ですが、都合により今回配信いたしません。
ご了承のほどよろしくお願い申し上げます。

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●山根治blog (※山根治が日々考えること)
http://consul.mz-style.com/catid/21

「疑惑のフジテレビ -10」より続く
http://consul.mz-style.com/item/504

・ 疑惑のフジテレビ -11

私がフジテレビのデューデリに拘わるのは、昨年以来疑問を抱き、
不審に思っていたからです。
フジテレビは昨年の4月18日に、デューデリを前提とした基本
合意を行ない、一ト月後の5月23日に実際に440億円の増資に
応じているのですから、この時点でフジテレビの経営陣は、デュー
デリの結果、ライブドアに出資することは経営者の判断として問題
はないと考えたのでしょう。このことは、デューデリを実施するこ
とを公言し、その結果問題はなかったと言っていることを意味しま
す。

本当にデューデリは実施されたのか、実施されたとしたら、一体
どのような調査がどのようになされ、どのように結論付けられてい
るのか。

このような疑問が浮び、私の中で消え去るどころか益々膨れ上がっ
ていきました。
それが今年になって、ライブドアが摘発され、堀江貴文氏が逮捕
されると、フジテレビの日枝久会長が、

「だまされた。あんな会社だとは思わなかった。」

などと発言するものですから、私の疑問はピークに達し、遂には、
“疑惑”という強い表現にせざるを得なくなったのです。
ライブドアの上場廃止が決まり、USENの宇野康秀氏に、フジ
テレビが所有していたライブドア株の全てを売却することによって
損害額が確定したために、フジテレビはライブドアに対して、早速
損害賠償の請求をしています。

日枝氏をはじめフジテレビの経営陣の思惑は、次のようなもので
あろうと推測されます。

“外部専門家によるデューデリのお墨付きをもらっている。440億
円の増資に応ずることは、念には念を入れた経営判断であった。そ
の上に、ライブドアとの最終契約書には「表明・保証」の条項も入
れてあるので、ライブドアに損害賠償を請求するのは容易であるし、
しかも確定した三百数十億円の損害金については現在のライブドア
には十分な資産があるので回収するのに問題はない。会社の損害が
完全に回復できるので、自分達の経営責任が問われることはない。”

このところの日枝氏の言動は、経営者としての自信に溢れ、ゆと
りさえ感じられます。その自信とゆとりは、上記のような背景に支
えられているのでしょう。
尚、「表明・保証」(Representations & Warranties)という、
一般にはなじみの薄い言葉を使いましたが、これは、契約書の中で
契約の当事者(たとえば、ライブドア)が、一定のことがら(たと
えば、過去の決算書は正しいもので偽りはないこと)を、表明し、
自ら保証することを言います。
万一、表明したことがらが事実に反する場合には、表明した当事
者が保証の責任を負い、損害賠償に応ずることを予め定めておくの
です。
もともと、英米法の国で用いられていたもので、日本で用いられ
ることはなかったのですが、近年M&A等の商取引が国際的になり、
日本でも用いられるようになりました。最近では、M&Aなどの特
殊案件だけでなく、一般の不動産取引などにも活用されているよう
です。契約書を作成するにあたって、どのような表明・保証条項を
入れるかは、法務担当者、あるいは弁護士の力量によるとされてい
ます。
フジテレビがライブドアに440億円の増資に応じた際の契約書
は公表されていませんので、確定的な言い方はできませんが、デュー
デリが監査法人だけでなく法律事務所にも依頼されたことから考え
て、契約書自体はおよそ考えうる限りの多くの表明が列挙されてい
る、万全なものが作成されていると思われます。

たしかに、フジテレビとライブドアという契約当事者に限ってい
えば、損害賠償請求に関してさしたる問題は生じないでしょう。契
約通りにことを運べばいいのですから。
しかし、ライブドアに現在残っている財産は、一般の株主をも騙
して手に入れたものであることを忘れてはいけません。フジテレビ
だけのものではないのです。
仮に、日枝氏の

「だまされた。あんな会社だとは思わなかった。」

という言葉が建前のものであり、真実に反するものであるとしたら
どうなるでしょうか。
この場合、表明・保証の契約条項をタテにして、一般の株主に優
先して損害金を受け取ることができるのでしょうか。

―― ―― ―― ―― ――

ここで一句。

“もうダメと思ったときのもう一歩” -印西、子育ち中。
(毎日新聞:平成18年4月3日号より)

(ライブドアに騙された一般株主の皆さん、300億円余りのお金が
スンナリとフジテレビに渡ってしまうと、皆さんが回収すべきお金
がそれだけ少なくなりますよ。フジテレビはライブドアの身内であ
り、ライブドアが立派な会社であるという誤ったメッセージを流し、
ライブドアの詐欺的行為に加担した当事者であることを忘れてはい
けません。フジテレビは一般株主の立場から見れば、被害者ではな
く、加害者なのです。)

(「疑惑のフジテレビ -号外6」はWebサイトにて)
http://consul.mz-style.com/item/508

 

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