冤罪を創る人々vol.103

2006年03月07日 第103号 発行部数:589部

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「冤罪を創る人々」-国家暴力の現場から-
http://consul.mz-style.com/catid/11

日本一の脱税事件で逮捕起訴された公認会計士の闘いの実録。
マルサと検察が行なった捏造の実態を明らかにする。
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山根治(やまね・おさむ)  昭和17年(1942年)7月 生まれ
株式会社フォレスト・コンサルタンツ 主任コンサルタント
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●「引かれ者の小唄」 ― 勾留の日々とその後
http://consul.mz-style.com/catid/41

「房内放送 -その4」より続く
http://consul.mz-style.com/item/489

10.松尾芭蕉と夢紀行 -その1

勾留中、房内で古典の書写に没頭したことは既に述べた(“書写
と古代幻視”)。

書写と古代幻視
http://consul.mz-style.com/item/304

書写という単調な作業は、実際にやってみると意外に面白く、し
かも単に目で追って読むのに較べて、はるかに作品の理解が進むこ
とを実感した。ゆっくり書き写していると、いわば作者の息吹きと
でもいったものが、行間から伝わってくるのである。

古来、印刷技術が発明されるまでは、全て書写という手作業によっ
て書物が複製され、広められ、伝えられていった。それは気の遠く
なるような作業であったに違いない。しかも、日本においては、鉛
筆とか万年筆が用いられるようになるまでは、墨をすり、筆で書き
写していたのであるから尚更である。
自分で時間をかけて書写をするまでは、書写は単に作品のコピー
を作るだけのことであると思っていた。今では、本のコピーなど複
写機をつかえばいとも簡単に、しかも短時間でできてしまう。昔の
人は、なんて無駄なことに多くの時間をつかっていたものだと思い
込んでいたのである。

しかし、自分で書写を体験してみて、このような思い込みが間違っ
ているのに気が付いた。昔の人が多くの時間を、書き写すことに費
やしたのは、まぎれもない事実ではあるが、決して無駄な時間を費
やしていたのではないことに気付いたのである。
書き写すことによって作品に対する理解が深まる、あるいは書き
写すことによってはじめて理解できることがある、-このようなこ
とに思い至ったとき、眼からウロコが落ちる思いであった。

勾留中の独房内では、奈良時代の古典の書写を行ったので、シャ
バに出て自由の身になったら、平安時代の古典の書写にとりかかる
つもりであった。古今、新古今で一ヶ月、源氏で三ヶ月もかければ
十分だと考えていたのである。

保釈されてから直ちに古今和歌集の書写にとりかかった。ところ
が書き始めて2,3時間もしたら飽きてしまった。机に向って書き
続けることができなくなったのである。新古今和歌集とか源氏物語
へいく前に、古今和歌集のはじめのところで挫折してしまったのだ。
思うに、久しぶりのシャバは、俗物である私にとって余りに誘惑
的であり、刺激が多すぎたようである。好きな本を自由に読むこと
ができ、好きなテレビは見放題だ。四六時中、クラシック音楽のシャ
ワーを浴びることもできる。そしてなによりも、酒とバラの日々が
復活した。落ち着いて机に向えるわけがない。

昨年のことである。二年前からホームページに連載していた「冤
罪を創る人々」が、10月4日で終了した。自らの10年間を、で
きるだけ客観的にふりかえることによって、私の中に若干の心のゆ
とりが生じた。また、一年間島根大学に通って教わった古文書学も
一通りの成果をあげた。古文書についても、更に学習を深めたくなっ
た。

再び書写がしたくなったのはこのような背景があったからであろ
う。せっかく古文書を勉強したのだから、このたびは活字本ではな
く、自筆本によって書写をすることにした。

松尾芭蕉の「奥の細道」の書写を始めたのは、昨年の11月25
日のことであった。書写の手本にしたのは、芭蕉自筆「奥の細道」
(岩波書店刊)である。平成8年11月26日、新聞各紙が、「芭
蕉自筆奥の細道発見」として大きく取り上げた自筆本を影印したも
のだ。
平成8年の11月26日といえば、291日の勾留を終えて保釈
されたのが11月12日であったから、シャバに出てからまだ日が
浅く、一種の拘禁症状から脱しきれていないときである。各メディ
アがこぞってこの大発見を取り上げて大騒ぎしてはいたが、私の記
憶にはとどまったものの、それ以上のものではなかった。自分自身
を持ち直すのに精一杯で、当時、このようなものに気持ちを振り向
けるゆとりがなかったのであろう。

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●山根治blog (※山根治が日々考えること)
http://consul.mz-style.com/catid/21

「疑惑のフジテレビ -6」より続く
http://consul.mz-style.com/item/490

・ 疑惑のフジテレビ -7

もう一回だけ、本題から外れたテーマに触れることにいたします。

これまでのマスコミ報道から、検察の取り組み状況を推察し、今
後の成り行きを考えてみますと、ライブドア事件の全容が解明され
ることなく、中途半端な状態で幕引きされることになるかもしれま
せん。
今のところ、関係会社であるライブドアマーケティングにからむ
風説の流布と偽計が立件され、更にライブドア本体の第9期(自平
成15年10月1日、至同16年9月30日)の連結ベースでの5
3億円の粉飾決算が立件される見込みのようです。
この他にも立件されるものがあるかもしれませんが、仮にこれだ
けで終るものとすれば、文字通り氷山の一角と言ってもいいでしょ
う。

私の“想定内”には、

1.粉飾決算は、第9期のみならず、上場以来の全ての期、つまり
第5期から直近の第10期まで、全てにわたって行われていた形
跡があること、
2.マザーズへの上場自体がインチキであったと思われること、
3.上場前を含めた数多くのストック・オプションの付与と行使が
極めて不透明であること、
4.数多くなされた会社のTOBによる買収、株式交換による買収
の全てが、これまた不透明であること、
5.株式会社キャピタリスタ(現、株式会社ライブドアファイナン
ス)とライブドア証券株式会社による上場支援事業の全てが不透
明であること、
6.支援する会社の上場にからんで、いくつかのグループ外の会社
を利用して、利益のキャッチボールをして、新規上場会社の決算
を粉飾し、更には、上場後の見せかけの業績を維持するために、
同様のキャッチボールによる粉飾が行なわれていた形跡があるこ
と、

と、ザッと数え上げただけでも6つのポイントがあります。
これらは全て、ライブドアとその関連会社、あるいはライブドア
と資本関係のない外部の会社が公表している資料(主に有価証券報
告書です)から透けて見えることなのです。週刊誌などがスキャン
ダラスに取り上げている、暴力団とのつながりとか、政治家とのつ
ながりとかは、仮にあったとしても、この6つのポイント以外のも
のです。脱税についても同様です。的外れとまでは言わないまでも、
中核的な問題ではありません。

あるいは一部、時効の壁があったり、犯罪の構成要件に欠けるも
のがあるかもしれませんが、空前の規模の“詐欺事件”の全容を解
明するためには、立件ができるかどうかには関係なく、少なくとも
上記の6つのポイントは押えておくべきでしょう。

1.については、この事件の基本のポイントですので、ないがし
ろにはできないでしょうし、
2.については、堀江氏の不正蓄財のメカニズムを解明していく
上で避けて通れないことでしょうし、
3.と4.については、社内外の多くの人に株券という紙切れを
気前よくバラまいて、一般株主を犠牲にして不正所得を得させたも
のですし、
5.については、すでにいくつかの会社が現実に上場されており、
ライブドア・グループの決算に、巨額の不正利得が計上されている
可能性がありますし、
6.については、グループ外の非上場会社だけでなく、グループ
外の上場会社もからんでいるようなのです。

最近よく国策捜査という言葉を耳にします。ライブドア事件は、
国策捜査だというのです。自ら国策捜査の犠牲になったとする佐藤
優さんもそのように考えている一人で、佐藤さんは、取り調べにあ
たった検事の言葉を次のように引用しています。

“検事 これは国策捜査なんだから。あなたが捕まった理由は簡単。
あなたと鈴木宗男をつなげる事件を作るため。国策捜査は『時代の
けじめ』をつけるために必要なんです。時代を転換するために、何
か象徴的な事件を作り出して、それを断罪するのです。”(月刊ボ
ス2006年4月号)

これと同じような意味合いで使われているのか定かではありませ
んが、複数の検事上がりの人物がテレビに出ては、ライブドア事件
について国策捜査という言葉を口にしています。
それにしても、佐藤さんを取り調べた西村尚芳検事は、よくぞこ
んなことを喋ったものですね。そもそも、現在の日本国憲法の下に
おいて、このような怪しげな捜査が検察当局に許されているのでしょ
うか。”時代のけじめをつける”とか、”時代を転換する”とか、
政治家が言うのならまだしも、検事がいうべきことでしょうか。よ
けいなお世話ですし、検察庁法で定められている検事の職務権限を
越える越権行為ではないでしょうか。

(続きはWebサイトにて)
http://consul.mz-style.com/item/493

 

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