冤罪を創る人々vol.102

2006年02月28日 第102号 発行部数:583部

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「冤罪を創る人々」-国家暴力の現場から-
http://consul.mz-style.com/catid/11

日本一の脱税事件で逮捕起訴された公認会計士の闘いの実録。
マルサと検察が行なった捏造の実態を明らかにする。
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山根治(やまね・おさむ)  昭和17年(1942年)7月 生まれ
株式会社フォレスト・コンサルタンツ 主任コンサルタント
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●「引かれ者の小唄」 ― 勾留の日々とその後
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「房内放送 -その3」より続く
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9.房内放送 -その4

房内放送にはNHKだけでなく、民放ラジオも組み込まれていた
ので、番組の途中でコマーシャルが入る。普段であれば全く気にな
らないようなことが、独房という特殊な閉鎖空間にとじ込められて
いると、気になってしかたのないことがある。房内放送のコマーシャ
ルの中にも神経にさわるものがいくつかあった。

「皆生(かいけ)温泉、サニー・テニス横、ホテル○○、お二人の、
めくるめく愛のひとときをおすごし下さい。」

モーテルのコマーシャルである。房内放送はもっぱら、禁酒、禁
煙、禁女を強いられている未決囚とか受刑者に向けられるものだ。
このようなコマーシャルをわざわざ流して、どうせよというのか。

「今年もホテル一畑のビア・ガーデンがオープン。お誘い合わせの上、
ぜひお越し下さい。夏のひととき、宍道湖の夕日を眺めながら、グ
グッと一杯!」

ビア・ガーデンのコマーシャルである。これまた飲みたくとも飲
むことのできないビールを飲めといっている。

ビールといえば、-

学生時代に、週に一度位の割合で寮の各自の部屋に4、5人集っ
ては、コンパと称して飲み会を催していた。それぞれがビールとか
ウイスキー、あるいは親からの仕送品の干魚とか缶詰などのつまみ
を持ち寄っては、たわいのない話をし、手拍子をとって寮歌とか猥
歌で盛り上がっていたのである。
ウイスキーといえば、一番安いサントリーのトリスであった。ま
れに、アルバイトで臨時収入を得た寮友が、一ランク上のレッドを
持ち込むことがあった位である。一級ウイスキーであったホワイト
など、我々のコンパには全く縁のない高嶺の花であった。日本酒に
ついても勿論2級酒である。
つまみについても、寮の近くにあった肉屋が作っている揚げたて
のメンチカツとかコロッケが添えられたり、八百屋から手に入れた
キャベツをザクザクときざんだ生キャベツが加えられることがあっ
た位のもので、まことに質素なものであった。
しかし、私達は若かったし、何よりも全国各地から一騎当千の負
けず嫌いが寮に集っていた。それぞれがお国ことば丸出しで顔をつ
き合わせて話をしたり歌ったりするだけで場が自然と盛り上がり、
それだけで至福の時を持つことができたのである。
寮歌は、先輩から歌い継がれてきた我々の学校のものだけでなく、
一高、三高、北大などの寮歌も好んで歌った。
猥歌も又、先輩の寮生から後輩へと代々歌い継がれてきたもので、
露骨で淫靡な歌詞を、節をつけて大声で合唱した。男同志が連れ立っ
て色街に繰り出すのと似たような感覚であったろうか、仲間内の結
束が強まっていくようであった。
猥本とかエロ写真の類いも各自で持ち寄ってはコンパの添え物と
した。寮生の中にはこのようなものを生理的に嫌悪する者もいたが、
少なくとも私のまわりにいた連中は、私も含めて、嫌悪するどころ
か好奇心が旺盛で、猥雑のかたまりであったので、ひっぱりだこの
状態であった。私に関していえば、この方面の好奇心と欲求は、年
を重ねても一向に衰えるどころか、益々旺盛になっている。私が胸
を張って自らを俗人中の俗人と位置付け、「非君子」をもって自任
するゆえんである。

結婚して40年になるクリスチャンの配偶者は、私とは違ってか
なりのケッペキ症で、こと趣味に関しては私と大きな隔たりがある。
たとえばテレビ番組を一緒に見ることなどほとんどしない。私は、
芸人としてのビートたけし、明石家さんま、島田紳介が大好きで、
「TVタックル」、「恋の空さわぎ」、「行列のできる法律相談」
など、毎週欠かさず楽しんでいる。この三人の天才的な芸人には感
心することしきりであるが、涙を流して笑い転げている私を見る配
偶者の眼は、どことなく冷たい。

そこで、房内放送の迷惑この上ないコマーシャルである。狭い空
間に閉じ込められて禁欲生活を強いられているのに、モーテルへど
うぞとか、生ビールを一杯とか言われて、俗人である私としては素
直に聞けるわけがない。ったく。
あるいは、松江刑務所の放送担当者は、多分にサディスティック
な性格の持主で、受刑者とか未決囚をからかっては精神的にいじめ
て楽しんでいたのかもしれない。

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●山根治blog (※山根治が日々考えること)
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「疑惑のフジテレビ -5」より続く
http://consul.mz-style.com/item/486

・ 疑惑のフジテレビ -6

ここらあたりで一息入れましょう。フジテレビの首脳陣はともか
くとして、会社自体が消えてしまうことはないでしょうから。ライ
ブドアと違って、フジテレビは実体のある企業体であり、決して幻
ではないのです。先を急ぐこともないでしょう。

1月16日にライブドアが摘発されてから6週間、この事件に関
連してウソかマコトか分らない、おびただしい量の情報が、あちら
こちらで飛び交いました。
ライブドアとか堀江貴文氏についての私の関心は、昨年このブロ
グで「ホリエモンの錬金術」と題して20回にわたって分析し終え
た段階で、ほとんど消滅しています。多くのマスメディアからの取
材とか原稿依頼を全てお断りしてきたのは、私の中でこの事件がす
でに完結し、事件そのものに対する関心がほとんどなくなっており、
いまさらと思ったからでした。

したがってこの一ト月半ほど私がもっぱら関心を注いだのは、マ
スメディアと検察当局の動きでした。何をするのか、じっと見てい
たのです。
10年前、数々の証拠を捏造してまで私を陥れようとした検察、
その検察がリークする偽りの情報を、検証どころか検討さえもしな
いでそのままタレ流したマスメディア。しかも私の無実が裁判によっ
て確定し、検察がリークしたほとんど全ての情報がインチキである
ことが明らかになっても、どのマスメディアもインチキ情報を流し
たことについて口をぬぐい、謝罪はもとより訂正さえしなかったの
です。
社会正義の最後の砦を装いながら、その実、犯罪的行為を平然と
敢行するような検察と、これまたもっともらしい理念を振りかざし
て偉そうなことを喋りながらも、検察の単なるスポークスマン、即
ち御用聞きになり下がっているマスメディア。この2つの巨大な
“権力”と化した存在が、ライブドア事件に対してどのような動き
をするのか、とても興味があったのです。

このところ国会で取り上げられた一通のメールをめぐって、与野
党が大騒ぎをしています。
このメールがニセ物らしいと判ってから各マスメディアは、こぞっ
て当の永田寿康議員と民主党に激しい攻撃の矢を向け、釈明と謝罪
を要求する始末です。国会の場で個人を名指しで非難する場合には、
しっかりした裏付け調査を行ってからすべきである、仮に間違った
情報にもとづいて非難し追及したことが判ったのであれば、直ちに
経緯の釈明をした上で謝罪すべきだ、というのです。

これはまさに正論であり、お説ごもっともです。神ならぬ身です
から、誰でも勇み足とか間違いはあるでしょう。その時はいさぎよ
く間違いを認め、心からの謝罪をし、しかるべき責任をとるべきだ
というのですから、異論などあろうはずがありません。

さてそこで、全く同じ理屈をマスメディアに向けるとすればどう
でしょうか。
検察の正式な発表はともかくとして、こっそりとリークされた情
報を全く検証もしないでタレ流し、その情報が全くのガセネタであ
るケースは、私のケースだけでなく、よくあることです。死に至ら
しめた新井将敬さんのケースなど、数え上げればキリがありません。
この場合、ネタ元が検察だからということでガセネタの公表が許
されるのでしょうか。とんでもありません。ガセネタは、どこから
出たものであろうとガセネタであり、報道する以上、メディアが責
任を持つべきものです。
しかし、これまでこのようなことで一度でもメディアが訂正した
り、謝罪をしたことがあるでしょうか。寡聞にして聞いたことがあ
りません。検察からの情報だから、仮にニセモノであっても構わな
い、多大な迷惑をかけた人に謝罪などする必要は全くないとでも考
えているのでしょうか。そうだとすれば、ずいぶんと身勝手なもの
ですね。

このように無責任なメディアが、どうして永田議員とか民主党を
声高に責めることができるのでしょうか。いいかげんにして欲しい
ものです。

そもそもこのメール問題は、ライブドア事件の本筋から外れたも
ので、それがホンモノであろうとニセモノであろうと実のところど
うでもいいことです。更には3千万円の金銭の授受があろうとなか
ろうと問題の本質には関係がありません。ライブドア事件について
の自民党の責任問題を脇道にそらせ、問題の本質を極端に矮小化し
た民主党は、政治的センスが欠如し、未熟であるといわれても仕方
ないでしょう。

(続きはWebサイトにて)
http://consul.mz-style.com/item/490

 

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