冤罪を創る人々vol.79

2005年09月13日 第79号 発行部数:409部

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「冤罪を創る人々」-国家暴力の現場から-

日本一の脱税事件で逮捕起訴された公認会計士の闘いの実録。
マルサと検察が行なった捏造の実態を明らかにする。
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山根治(やまね・おさむ)  昭和17年(1942年)7月 生まれ
株式会社フォレスト・コンサルタンツ 主任コンサルタント
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●(第七章)総括

「ニ.無謬神話の崩壊」より続く
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三.前科者としての元公認会計士

一、 有罪が確定した別件については、今でも裁判所の判断が間違っ
ており、冤罪であると確信している。しかし、懲役1年6ヶ月、執
行猶予3年の刑が確定したのは厳然たる事実である。
執行猶予が解ける3年後の平成18年10月4日までは、私は前
科者であり、公認会計士と税理士の登録ができない。従って、私の
現在の肩書を敢えて付すとすれば、前科者であり、元公認会計士で
ある。

二、 朝風呂に入って、歯磨きをしながら漱石の「草枕」を気取って
みた。

「前科が付いて考えた。これから資格は使えない。三年間は使えない。
仕事はどうにか回ってる。身体も当分いけそうだ。世の中なんとか
なるだろう。」

三、 十年間、私の50代の大半は蛇に睨まれた蛙であった。思い通
りの行動が制約され、暗闇からマルサと検察の魔の手が私を繰った。
私は魔の手に翻弄されながらも、ひたすら潰されないことだけを
念じて生き延びてきた。
その結果、この10年で私は多くのものを失った。最後に失った
ものは、公認会計士という資格であり、失った中でも最大のもので
あった。
反面、得たものも多くあった。その最大のものは、最悪の状況に
あった私を見捨てることなく、しっかりと支えて下さった多くの人
達の善意と信頼であり、それがしっかりと再確認できたことであっ
た。多くの人々によって私が生かされていることを実感することが
できたことは、最大の収穫であった。

四、 この10年をできるだけ客観的にふりかえることを念頭におい
て執筆してきた本稿は、ほどなく終結する。
一日平均5時間、3ヶ月かかったこの作業は、私に予期せぬ副産
物をもたらしたようである。
客観的といっても、私は当事者本人であるから、言葉の真の意味
において客観的にはなりえない。しかし、できるだけ客観的に自ら
を見つめ直すことはできると考えて、膨大な資料を探索し、当時の
状況を再構築し、文章に紡いできたのである。

五、 森鴎外の「寒山拾得」の中に、頭痛に悩まされている閭丘胤
(りょきゅういん)という名の官吏の話がある。
一人の托鉢僧が、「四大の身を悩ます病は幻でございます。只清
浄な水が此受糧器に一ぱいあれば宜しい。呪(まじなひ)で直して
進ぜます。」と申し向けて、頭痛をなおしてしまう話だ。
以下、「寒山拾得」から引用する。三島由紀夫が名文として絶賛
しているものである。 ―

閭は少女を呼んで、汲立の水を鉢に入れて来いと命じた。水が来
た。僧はそれを受け取って、胸に捧げて、ぢっと閭を見詰めた。清
浄な水でも好ければ、不潔な水でも好い、湯でも茶でも好いのであ
る。不潔な水でなかったのは、閭がためには勿怪(もっけ)の幸で
あった。暫く見詰めてゐるうちに、閭は覚えず精神を僧の捧げてゐ
る水に集注した。
此時僧は托鉢の水を口に銜(ふく)んで、突然ふっと閭の頭に吹
き懸けた。
閭はびっくりして、背中に冷汗がでた。
「お頭痛は」と僧が問うた。
「あ。癒りました。」実際閭はこれまで頭痛がする、頭痛がする
と気にしてゐて、どうしても癒らせずにゐた頭痛を、坊主の水に気
を取られて、取り逃がしてしまったのである。
僧は徐(しづ)かに鉢に残った水を床に傾けた。そして「そんな
らこれでお暇をいたします」と云うや否や、くるりと閭に背中を向
けて、戸口の方へ歩き出した。

六、 閭丘胤の頭痛が、托鉢僧の吹きかけた水によって快癒したよう
に、私の中にも思わぬ変化が起きていた。
執筆にかかるまでは、マルサと検察に対する恨みと憎しみの感情
が私を大きく支配しており、抜きがたいものであった。彼らに対す
る憎悪の気持ちが、執筆をかりたてた要因の一つであることは確か
である。
しかし、執筆を終えようとしている今、ふっと自らを顧みると、
それらの感情がほとんど消滅していることに気がついた。完全に払
拭されることはないであろうが、少なくとも気にならなくなったの
である。
閭丘胤の頭痛が幻と共に消え去っていったように、私の中にあっ
た憎悪の幻が消え去った。

(続きはWebサイトにて)
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●山根治blog (※山根治が日々考えること)
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「ホリエモンと小泉純一郎 -1」より続く
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・ ホリエモンと小泉純一郎 -2

共通する第3の点は、二人とも目的のためならば手段を選ばない
ところです。反社会的な行為であろうと犯罪となる違法な行為であ
ろうとおかまいなしです。
ホリエモンについては具体的には私のブログで詳述した通りです。
小泉さんについては、他にもあるでしょうが、ごく最近の驚くべ
きケースについて触れることにします。

共同通信の配信記事でしょうか、「首相の執念で転進決意」との
見出しのもとに、新潟県旧山古志村長の長島忠美さん(54)が、
自民党の比例代表北信越ブロックから出馬するに至った経緯が生々
しく報道されました(平成17年8月23日付、山陰中央新報)。
私はこの記事のウラを取ってはいませんので、その信憑性につい
ては分かりません。ここでは、この記事が真実であると仮定して話
を進めます。尚、同じ趣旨の記事は、平成17年8月24日付の毎
日新聞にも掲載されています。記事の分量は上記の記事よりも倍近
くにも増えており、その経緯がより具体的に記されています。

“首相側は、長島氏に元外相田中真紀子氏(61)の地元新潟5区
からの出馬を打診したが、長島氏は「仮設住宅で暮らす住民の近く
にいたい」と固持していた。首相の要請で15日には飯島勲秘書官
と会談。「比例単独でいい。特例で名簿も一位にする。」 破格の
優遇措置にも長島氏は首を縦に振らなかった。
被災地への思いに加え、真紀子氏の父田中角栄元首相の支持者だっ
た星野伊佐夫県連幹事長らが、比例とはいえ真紀子氏と同じ地盤で
の出馬には反対していたからだ。“(平成17年8月23日付、山
陰中央新報)

粘着質の小泉さんは、これであきらめるどころか、一国の総理大
臣としてはにわかには信じ難い行動にでることになります。

“しかし、翌16日夜、首相周辺から別の県連幹部に連絡が入る。
「長島さんの出馬は首相自身の強い要望だ。…(首相の要請を断る
ならば)災害支援もこれまでのようにはできなくなる」と言われた
という。驚いた県連側は対応を協議。説明を受けた長島氏は、16
日深夜、出馬を決断した。”(同上、記事)

このスクープ記事には我が目を疑いましたね。総選挙の直前に、
一国の首相によるこのように露骨な小細工が公表されるのは前代未
聞のことだからです。
長島忠美さんといえば、壊滅的な打撃を与えた昨年10月の中越
地震の被災地の村長として、地域住民の先頭に立って粉骨砕身、ま
さに献身的な活躍をしたヒーローです。地元住民の目線に立った働
きぶりは、連日のようにテレビを通じて全国に放映され、その後の
被災地復興のシンボル的な存在として全国的にもすっかり有名になっ
た方でした。もちろん新潟5区での知名度は抜群です。

著名人好きの小泉さんがこの長島さんに白羽の矢を立てたのは必
ずしも非難されることではありません。
問題なのはそれから後の行為です。自民党の比例単独の候補で、
名簿登載順位一位といえば、投票前から当選は確実です。破格の扱
いといえるものです。
小泉首相サイドからこのような別格の優遇措置をもちかけられた
長島さんは、それでも首相からの立候補要請を断り続けたといいま
す。
毎日新聞の記事は、この間の事情を更に詳しく伝えています。小
泉首相のかたわらにいる飯島勲秘書官が、いつでも小泉さんと電話
をかわることができる状態で出馬の要請をしたと報じ、更には首相
周辺の人物として飯島秘書官のほかに、武部勤幹事長の名前が登場
し、新潟県の泉田裕彦知事にも圧力をかけたことまで報じているの
です。

更に毎日新聞は、

“長島氏は「電話では失礼だから」と官邸に出向き、飯島秘書官と
面会、不出馬を改めて伝えた。”

と、長島氏の固辞の意思が堅かったことを伝えています。
中越地震の復興も道半ばであり、いまだに仮設住宅に暮し、程な
く厳しい雪国の冬を迎えようとしている多くの被災者のことを思い
やると、とても国政選挙になぞ出る気がしなかったのでしょう。
そのような微妙な立場の長島さんに対して、小泉さんは、あろう
ことか、自分の言うことを聞かないと災害援助の予算を打ち切ると
通告したというのです。

なんということでしょうか。一国の首相が、大地震によって家屋
敷をはじめ土地まで失った社会的弱者に対して、自分の言うことを
聞かなければ、国の財政支援を打ち切るというのですから。仮にそ
のような事態になれば、中には飢え死にしたり、凍え死にする人も
出るでしょう。いや、それ以前に、国家社会から見捨てられたこと
を気に病んで、自ら命を断つ人も出てくるかもしれません。
小泉さんは、かけがえのない子供とか孫を人質にとって、金品を
脅しとろうとする身代金誘拐犯と同類です。

(続きはWebサイトにて)
http://consul.mz-style.com/item/393

 

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