ホリエモンの錬金術 -号外その2

フジテレビ側の完敗ですね。現経営陣が自分達の目先の保身を優先させたのでしょう。

一方のライブドアは完勝と言えるでしょうか。違います。もともとライブドア自身が、インチキ上場した上に数々のいかがわしい手段を駆使して出来上がった虚業集団ですので、新たに1,400億円以上のキャッシュを手にするからといって、単にギャンブル・ファンドがそれだけ増え、被害者が更に多くなるだけの話です。

虚業はどこまで行っても虚業であり、真の企業になることはないでしょう。
それにしても、フジテレビ側の経営陣にとって、今回の基本合意は本当に彼らの保身になるのでしょうか。NO!です。
保身どころか、逆に現経営陣はとてつもなく大きなリスクを背負い込んだことになりそうです。
このたびの基本合意の中で、ライブドアが所有しているニッポン放送株を買い取ることについては、買取価額についての問題は残るにせよ、基本的に問題はないでしょう。
問題なのは、フジテレビがライブドアに対して、第三者割当増資の形で出資をすることです。しかも、2007年9月末まで、株式の売却をしない約束になっているのです。
フジテレビが、440億円の第三者割当増資に応じた場合どうなるのでしょうか。
私の試算では、フジテレビに100~150億円の損失が発生するおそれがあります。ライブドアのキャッシュの使い方によれば、損失額は更に大きくなるでしょう。
これは単なる可能性の領域を超え、蓋然性の領域にまで入っているものです。何故か。
私がことさら指摘するまでもなく、ライブドアは証取法に違反するおそれのあるいくつかの不審な行状を、有報、届出書、大量保有報告書等の法定書類によって、広く一般に開示しています。
従って、フジテレビの経営陣は、それらのことを十分に承知した上で、多額の増資に応ずることになります。第三者割当増資に応じた時点では損失が発生することなど予測できなかったという言い訳は通らないでしょう。開示されている情報によってさえ、上場廃止問題に直結する蓋然性のある会社に出資することになるからです。ましてや、しかるべき権限を持った機関による実地検査がなされた場合には、あるいは、インサイダー取引、ストックオプションとか株式の交換に絡む不正、株価操作の実態などが明らかになるかもしれないのです。
フジテレビが被るおそれのある多額の損失金については、今の経営陣は株主代表訴訟の対象になることが考えられますし、その上に特別背任罪にも問われかねません。それ以上に問題なのは、フジ・サンケイグループがライブドアの第2位の大株主になることによって、ライブドアというギャンブル・ファンドの一味になることです。
インチキ上場をした上に、上場後は数々の無法な行ないを繰り返している文字通り犯罪集団ともいうべきライブドアの仲間になるわけですから、由々しきことです。国の手厚い保護を受けている公共性の高い企業グループが、このような犯罪集団と手を組むというのですから、一体何を考えているのでしょうか。
フジテレビというブランドを手に入れたライブドアは、今後益々国民に多くの損害を与え、被害者を増やしていくことでしょう。
先般の一般投資家を無視した、なりふりかまわない大量の新株予約権の発行といい、このたびの基本合意といい、顧問弁護士のアドバイスを受けて決定されたものでしょうが、オソマツとしか言いようがありません。
大量の新株予約権の発行が裁判所によって差し止められたのは当然のことで、この点に限って言えば、ライブドアが敢行した破天荒な株式分割と五十歩百歩といったところでしょう。
フジ・サンケイグループの経営陣は、もう少しまともな弁護士に相談を持ちかけ、アドバイスを受けるべきだったでしょうね。
フジ・サンケイグループの中興の祖とも言うべき日枝久さんは、先般ライブドア証券が主幹事をつとめインチキ上場をさせた株式会社エフェクター細胞研究所の社長である金ヶ崎士郎東大名誉教授と同様に、ホリエモンと組むことによって晩節を汚すことになるでしょう。

ここまで新聞報道をもとに書いてきたのですが、一応念のため、両者が4月18日付で出しているプレス・リリースをネットから引っ張り出して目を通してみました。
基本契約の締結は確かに4月18日ではありますが、株式の受け渡しとか、増資の申込及び払込期日は1ヶ月以上先の5月23日となっており、とくに増資については、

“払込期日までに実施されるフジテレビによるライブドアのデューディリジェンス(筆者注、― 会社の実態を把握し、問題点の有無を把握するための専門家による調査)の結果によっては、当該内容は変更または本資本参加は中止される可能性があります。”

という合意内容になっていることが注目されます。(フジテレビ IRニュース:[[2005/04/18「ライブドアとの基本合意のお知らせ」]]http://www.c-direct.ne.jp/japanese/uj/pdf/10104676/00032434.pdfより)
フジテレビにとっては、全くメリットのない、それどころか、ライブドアに資本参加することによるイメージダウンは必至であり、その上に役員にとっては賠償責任とか特別背任の問題も浮上するおそれがあることは、十分に承知した上でなされた“時間かせぎ”かもしれませんね。よく調べてみたら“まずい”ということで、資本参加を中止することができるのですから。
ワクワクすると言って、コドモのようにはしゃいでいたホリエモンに対して、フジ・サンケイグループの三人の顔つきがこわばり、引きつっていたのが印象的でした。
策士、策にはまる、あるいは老練な経営者がホリエモンより一枚上手だったかもしれませんね。フジテレビお得意の、ドラマのような劇的な幕切れになったりして。

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ここで一句。

“弁護士の入れ知恵丸見え少年犯” -堺、坂口隆一。

 

(毎日新聞:平成17年4月17日号より)

(少年犯には少年法という逃げ道があります。しかし商法には免罪符がありません。)

 

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