前代未聞の猿芝居-⑩
- 2019.05.10
- 山根治blog
- 平成29年11月28日、筆者は、A社の社長夫人、専務、総務部長と共に、松江税務署において、二人の査察官、
- 青木利幸(総括主査)
- 山持昌之(主査)
と面談し、予め作成していた
の全文を読み上げ、違法かつ犯罪行為を伴っている本件査察調査を直ちに中止することを申し入れた。
その際、現場担当者として「申入書」に記入していた花井茂総括主査の氏名について、青木利幸総括主査と山持昌之主査から、
“削除してほしい”との要請があったため、筆者はその場で二重線を引き、捺印をして削除要請に応じた。
削除要求の背景には、ガサ入れ当日、花井茂総括主査が、青木利幸、山持昌之の二人に対してと素直に意見を述べたことがあるものと考えられる。青木利幸総括主査と山持昌之主査の二人は、冤罪をデッチ上げる策略が花井茂総括主査によって崩れることを恐れたのであろう。
- 平成30年2月13日~同年8月20日まで、合計7回にわたって、査察の現場責任者である山持昌之主査が、A社の社長夫人に対して、書留便を発遣して、「出頭要請」を行った。以下の通りである。
- 平成30年2月13日
- 平成30年3月8日
- 平成30年3月19日
- 平成30年4月27日
- 平成30年5月24日
- 平成30年7月6日
- 平成30年8月20日
調査のための出頭要請は、従来の国犯法には規定されてはいなかったが、国犯法が平成30年3月31日で廃止され、平成30年4月1日付で国税通則法において新設された制度である。
「犯則事件の調査のため必要があるときは、犯則嫌疑者又は参考人に対して出頭を求めることができる」-国税通則法第131条1項。とするものだ。関税法第119条の1では規定されているが、国犯法では規定を欠いているという趣旨から新設された制度である。
この出頭要請は、刑事訴訟法第198条に規定する、被疑者の出頭要求、取調べ即ち、
「検察官、検事事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。」と同様の趣旨の規定だ。
しかし、関税法の規定も、それにならって国税通則法に新設された規定も、刑事訴訟法の規定とは大きく異なっている。肝腎な規定が二つ、意図的に外されているからだ。
まず、刑事訴訟法の「被疑者」と、国税通則法の「犯則嫌疑者」とが全く同じものであることと、刑事訴訟法の「検察官等による犯罪の捜査」と国税通則法の「当該職員」(国犯法では収税官吏=査察官とされていたもの)による「犯則事件の調査」とは、ともに任意である点で同一のものだ。国税通則法に欠けている規定は次の2つである。
一つは、刑事訴訟法第198条第1項の但し書きの規定だ。刑事訴訟法第198条第1項の但し書きは、「但し、被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる」とするものだ。これが国税通則法の規定には欠けている。
二つは、刑事訴訟法第198条第2項に規定する供述拒否権(黙秘権)の告知、即ち「前項(注.刑訴法第198条第1項のこと)の取調に際しては、被疑者に対して、あらかじめ自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならない。」とするものだ。これが国税通則法の規定には欠けている。
かつて国会の場で、国犯法第1条に定める質問検査権についての議論があり、その時の政府は、
国犯法第1条の質問検査は、任意であり、納税者に供述拒否権(黙秘権)があることまでは認めたものの、収税官吏(査察官)の供述拒否権(黙秘権)の告知までは国犯法にそのような規定が存在しないことを理由として認めなかった(第六十一回国会。昭和44年5月9日衆議院大蔵委員会会議録第三十一号、昭和44年7月17日参議院大蔵委員会会議録第三十一号)。
現時点においても、国犯法第1条の質問検査権(平成30年4月1日からは、国税通則法第131条の質問検査権)については、上記の政府見解と変わることはないはずだ。先に掲げた7回にわたる山持昌之主査による出頭要請は、平成30年4月1日を境に性格を大きく異にする。
即ち、1.~3.は国犯法下のものであり、出頭要請を可とする法の規定はなく、出頭要請を可とする平成30年4月1日施行の国税通則法の規定を先取りしたもの、つまり試行としてなされたものだ。
この1.~3.の出頭要請は、平成29年11月28日に、筆者が「申入書」を直接手渡しして、違法かつ犯罪行為を伴っている本件査察調査を直ちに中止することを申し入れしてから、A社関係者が査察調査に協力しなくなったことに対して、威迫的な圧力をかけることを目的になされた試行(書留文による出頭要請の試行)であった。
しかも、A社で唯一人代表権を持ったオーナー社長が、ガサ入れ当日の平成29年11月14日に、6億7千万円の脱漏所得をつきつけられても、全く知る立場になかったことが判明し、カギを握っている社長夫人個人にターゲットを絞り、試行による出頭要請(1.~3.)を含めた全ての出頭要請が、社長夫人個人に宛てて、社長夫人の個人住所に書留文で送りつけられている。威迫である。本件第5回公判廷で、弁護人が
「松江の山根治公認会計士と平成29年11月20日に委任契約をしてから以降、検察官が(法廷に提出した)記録を見ると、あなた(注.社長夫人)の税のほうの質問てん末書(注.査察官が犯則嫌疑者について作成する任意の供述調書のこと)がない。取調べに応じなかったんですか。」と質問し、社長夫人が
「はい。毎月、国税の方から調査をしたいと言ってきました。このことは山根税理士に伝えました。そしたら(山根税理士に)調査を受ける必要はない。放っておけと言われました。」自分としては調査に協力して真実を話したかったんですが、(山根税理士に)勝手なことをするなといって止められていました。」と応答している。
この質疑応答で明らかになったことは、社長夫人がバレバレの嘘を言っていることだ。即ち、筆者が平成29年にA社と契約締結してから以降、査察官の質問てん末書(任意の供述調書)が一通も存在しないことであり。その理由として社長夫人は、山根税理士に騙されて査察官からのたび重なる出頭要請に応じなかったとしていることだ。(「前代未聞の猿芝居-⑦」の第5回公判記録参照のこと)
社長夫人が、公判廷でバレバレの嘘の証言をせざるを得なかったのは、これまで述べてきたA社側の特殊な事情の他に、社長夫人が個人的に抱えている秘密事項があったのである。
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