ヤケクソの検察官-①

 工藤会の脱税事件については、これまで2回取り上げている(「国税マフィアの闇⑥国税マフィアの闇⑦国税マフィアの闇⑨」)。

 その初公判が開かれた。平成29年10月31日のことだ。逮捕されてから、ナント、2年5ヶ月経っている。これだけでも無理筋の逮捕であったことが判る。私は、工藤会の脱税事件は起訴しようとしてもできない、いずれ不起訴処分になるものとみていた。しかし、福岡地検は敢えて起訴に踏み切った。ヤケクソとしか言いようがない。

 起訴内容は次の通り(平成29年11月1日付、毎日新聞による)。

 まず、被告は次の二人。
+野村悟工藤会総裁
+山中政吉工藤会幹部(金庫番)

 起訴状の要旨は、

『両被告は、野村被告の10~14年の総所得9億4,551万円のうち、上納された8億990万円を隠し、所得税3億2,067万円の支払を免れた。』

というものである。

 検察側は、

「上納金は野村被告(個人)に帰属する。」

と主張したのに対して、
 弁護側は、

「上納金は工藤会(みなし法人)に帰属する。」

と主張し、全面対決の構図になったという。

 私が、全ての脱税事件は冤罪であることに思いたり、『冤罪を証明する定理』(山根定理)を当ブログで公表したのが平成29年1月のことであった。
 工藤会の総裁以下数人が脱税の嫌疑で逮捕されたのは、その2年前のことであるから『定理』はいまだ完成していなかった。しかし、国税当局が、全国各地で脱税と称して摘発する事件で、私のところに相談にきたものの全てが、インチキであることは4年ほど前から判っていた。従って、工藤会の人達が脱税で逮捕されたのを受けて、記事にまとめたときは、検察が仮に起訴をしても空振りになることを予測していた。

 工藤会は、この脱税事件に対して10人前後の大弁護団を用意したと側聞する。検察ОBの大物弁護士を含む、税務に強い“一流”の弁護士であろう。
 しかし、いくら“一流”とか“大物”の弁護士を味方につけたとしても徒労である。この脱税裁判に勝ち目はない。
 理由は簡単だ。争点をズラしたところで「全面対決」と称して争ったフリをしているからだ。脱税という犯罪自体が今の法体系のもとでは存在しないのであるから、そもそも起訴そのものが違法(「税を免れた」という訴因の欠如)であることから、福岡地方裁判所は直ちに、公訴棄却の決定(刑訴法第339条第一項第2号)をしなければならないからだ。

(この項つづく)

Loading