国税庁が再びスパイ組織を送り込んできた!!―③

 東芝グループ4社(東芝キャリア(株)、東芝キャリア空調サービス(株)、東芝テクノシステム(株)、東芝テクノネットワーク(株))から、フィクサーである中島洋一氏の銀行口座に2億6千万円が振り込まれた。この事実を名古屋国税局が把握したのは、査察のガサ入れの一年ほど前のことであった。この情報は、フィクサー手数料をめぐる仲間割れから、名古屋を拠点にしている裏組織(実態を把握しているが現時点では公開しない)が国税局に密告したものだ。

 名古屋国税局は、2億6千万円の大半が申告書に反映されていないことを確認し、中島洋一氏に修正申告を迫った。

 しかし、中島洋一氏は頑として応じなかった。中島氏は、早稲田エコアをはじめ決算期を異にする他の2つの会社に2億6千万円を分散して計上しており、その正当性を主張していた。仮勘定としての「社長借入金」勘定が売上金入金時に用いられており、そのうち2億円が未精算となっていた。

 この2億円の未清算金が脱税であると認定され、名古屋国税局査察第7部門が査察調査に着手した。平成27年3月10日のことである。

 査察調査が開始されてからほどなく、中島洋一氏は、私に架電し、助力を請うた。

 事務所で面談した私は、この査察事件は名古屋国税局査察部門が明らかに間違っていると判断した。課税調査ならまだしも、犯則調査(犯罪捜査)にはなじまないだけではなく、税務職員が行ってはいけない犯罪行為であると判断したのである。

 判断の根拠は次の通り。
+未清算金2億円に相当する、あるいはそれ以上の未精算の事業用の支出金(損金可能かどうかはともかくとして)が存在していたこと。
+仮勘定「社長借入金」は、多治見市の公認会計士曽根康正氏の指導・教示にもとづくものであり、その後を引きついだ会計事務所・税理士法人アルバトロスもまた、未清算金の存在及び金額を熟知した上で税務申告書を作成していたこと。

 加えて、名古屋国税局査察第7部門は、次のような誤りを犯していた。
+逋脱犯の犯罪構成要件が2つとも欠けており、査察調査が犯罪的様相を呈するものであること。
+管轄外の犯則調査であること。即ち、国税犯則取締法第12条に違反していること。

 以上の事実を確認した私は、この犯則事件の弁護を引き受けることにし、中島洋一氏と契約を交した。着手金300万円を定め、成功報酬(告発がなされなかった場合の報酬2,000万円と支払うべき税金が低減したことに対する報酬として低減額の20%)を定めた。

 私は、違法かつ犯罪行為に該当する査察調査が行われている旨を文書にまとめ、直ちに査察調査を中断するように村中健一名古屋国税局長に対して申し入れた。平成27年4月27日のことだ。
 実際に提出した文書は、次の通りである。

名古屋国税局長 村中健一 殿

申 述 書

平成27年4月27日

                         島根県松江市東本町5丁目16番地9
                         山根ビル3階       
                         株式会社山根総合事務所内
                             山根治税理士事務所
                             税理士 山根 治

+ 当職は、犯則嫌疑者 早稲田エコア株式会社(以下、会社という)の税務代理人である。会社は、平成27年3月10日より名古屋国税局の査察調査(以下、査察調査という)を受け、査察調査は現在進行中である。査察調査の現場責任者は、査察第7部門の齋藤和久査察官(以下、査察官という)である。

+ 査察官が主導している査察調査は、以下に述べる3つの点で著しく常軌を逸しており、違法なものであるだけでなく、犯罪行為に該当するおそれのあるものである。当職は、貴職に対して意見を申し述べ、かかる違法な査察調査は直ちに中止するように査察官に指示すると同時に、国税犯則取締法(以下、国犯法という)にもとづく適正な調査手続きを実施し、適法な査察調査に立ち帰るように査察官に指示することを要請する。

+ 当職が違法な査察調査であるとする第1の点は、査察官が作成権限のない課税処分を行うための資料(以下、課税資料という)を作成していることである。

ここで、課税資料とは具体的には、以下のものをいう。
①課税資料の送付について(様式10)
②課税資料の総括表(様式11)
③課税資料の目録(様式12)
④課税額計算書(決議書様式)(決議書別表を含む)
⑤調査結果の説明書(案)
⑥更正決定通知書(案)
⑦加算税賦課決定通知書(案)
⑧更正決定及び加算税賦課決定の理由附記(案)
⑨争点整理表(案)
⑩その他参考資料として引き継ぐことが適当と認められる書類
(『査察事件に係る課税処理及び異議申立て等に関する事務実施要領について(事務運営指針)平成24年12月13日付国税庁長官通達。課総2-49他7課共同』より。)

 もともと国犯法は、会社にかかる税目、即ち法人税及び消費税に関する限り、会社を犯則事件の当事者として刑事告発することを目的とした法律であり、査察官に与えられているのは刑事処分にかかる権限のみである。
 課税処分、即ち行政処分にかかる権限は所轄税務署長と国税通則法(以下、通則法という)第74条の2に規定する「当該職員」の専権事項であり、「当該職員」ではない査察官には与えられていない。従って査察官は、会社にかかる課税資料を作成する職務上の権限を有しない。しかるに査察官は、会社に対してかかる権限を当然に有しているかのように申し向けて会社を錯誤せしめ、作成権限のない課税資料を作成している。査察官によるこのような査察調査は、国犯法と通則法に違反しているだけでなく、上記①から⑩に掲げた虚偽の公用文書を作成することによって、課税権限を有する税務署長をして虚偽の公文書(更正通知書)を作成せしめるに至るおそれのある犯罪行為である。

+ 当職が違法な査察調査であるとする第2の点は、本件の場合、逋脱犯の犯罪構成要件である、
①「偽りその他不正の行為」
②「税を免れたこと」
の二つの要件(法人税法第159条等)が共に欠けているにも拘らず行われていることである。

①「偽りその他不正の行為」が存在しないことについて。
 査察官は、東芝キヤリア(株)等東芝関連の3社からの収入金2億6千万円(以下、当該収入金という)が会社の決算書から脱漏していることをもって、所得金額について同額の過少申告を認定し、このことによって会社の「偽りその他不正の行為」を認定しているようであるが誤りである。
 まず、当該収入金は全て十六銀行の会社名義の口座に入金され、銀行口座に入金された当該収入金の大半は会社の業務にかかる支出に充てられ、残額は銀行口座に残留している。当該収入金にかかるキャッシュの流れにはいかなる偽装工作も存在しなければいかなる隠蔽行為も存在しない。

 査察官が疑念を抱いた経理処理、即ち、当該収入金の帳簿への受け入れが「社長借入金」という仮勘定で処理されていることについて当職の意見を申し述べる。
 会社の代表者中島洋一氏(以下、中島という)が、「社長借入金」という仮勘定を知ったのは、以前の関与会計事務所(多治見市、曽根康正公認会計士・税理士事務所)の教示による。
 税務会計の知識がなく、会社の資金手当を一手に行っていた中島は、資金が確保できたら取り敢えず「社長借入金」という仮勘定に入れておけばよく、その後は会計事務所に決算書を調整してもらえればよいという考えであった。会計事務所が税理士法人アルバトロス(以下、アルバトロスという)に代わってからも同様であった。
 とりわけこの10年ほど、中島は仕事上のトラブルだけでなく、プライベ-トなトラブルも抱えていたことから、名古屋の地を脱出せざるを得なくなり、会社を東京に移し、中島の居所も東京に移すことになった。
 東京に移った頃の会社は、多額の負債を抱えて倒産寸前の状態であり、常に資金繰りは逼迫し、文字通りの自転車操業であった。
 その上中島は一年の大半を海外で生活する「非居住者」である。会社の経理事務は従来通り多治見で行っており、その担当者は会社の従業員近藤明子氏(以下、近藤という)であった。
 近藤も中島と同様、税務会計の知識に乏しく、もっぱらアルバトロスの指導を受けながらパソコンソフトに入力することを行っていた。この間の事情は、近藤がアルバトロスと交わした多くのメ-ルのやりとりから明らかである。
 一方、アルバトロスは、所長の方針として、関与先の決算書の内容を精査・チェックし架空取引や粉飾がないことを確認してはじめて税務代理人の署名をし、確認できなければ署名しないことにしていた(平成26年8月25日付メール)。
 会社の場合、アルバトロスは、会社他関連2社の顧問会計事務所の業務として3社の決算書・税務申告書を作成していながら、税務申告書に関与税理士として署名捺印することを拒否してきた事実がある。このことは、アルバトロスが会社の決算書の内容を精査・チェックした結果、その内容に十分な責任が持てなかったことを意味する。ちなみに3社の月額顧問料は75,000円、決算書・税務申告書の作成料は年600,000円であった(税理士業務報酬として1,500,000円/年)。
 これらの事実からすれば、2億6千万円の当該収入金が会社名義の銀行口座に入ったこと、その入金処理が「社長借入金」でなされていること、当該収入金の大半が会社の業務関連の支出に充当されていること、「タマリ」が全く存在しないこと、これらのことをアルバトロスは熟知していたものと考えてよい。アルバトロスが決算書の作成と税務申告書の作成に深く関与し、会社の経理内容を熟知していたことは、査察官自らも認識していたことである。査察官の認識については査察官と近藤との問答の反訳文から明らかである。

 以上により、会社の代表者中島が、当該収入金が「社長借入金」として入金処理されていたことを知っていたとしても、ことさらに法人税を免れようとして行なったものではないこと、即ち、「偽りその他不正行為」がないことは、明らかである。

②「税を免れた」事実がないことについて。
 会社は平成24年6月期から平成26年6月期については確定申告書を所轄税務署に提出しており、第一義的には、各期の法人税及び消費税額はそれぞれ会社が申告した税額(当初申告額)で確定している。
 この確定している各期の法人税及び消費税額を変更し,逋脱税額を確定させるためには、現行法上2つしか方法がない。
 1つは会社自ら申告税額を変更すること(修正申告)であり、今1つは税務署長が通則法74条の2に規定する「当該職員」の調査にもとづいて申告税額を変更すること(更正)である。

 まず修正申告については、査察官が査察調査に着手した平成27年3月10日時点はもとより、現時点(平成27年4月27日)においても会社はこれを行っていない。
 次に更正についていえば、査察官は通則法74条の2に規定する「当該職員」ではない。「当該職員」ではない査察官の調査に基づいて税務署長は更正することはできない。
 従って、査察調査が着手された平成27年3月10日時点においてはもとより、現時点(平成27年4月27日)においても会社が行った当初申告額そのものが確定税額であって、いずれの決算期においても逋脱税額は発生していない。

 以上により、会社が「税を免れた」事実がないことは明らかである。

+ 当職が違法な査察調査であるとする第3の点は、任意調査の範囲を著しく逸脱した査察調査が行われていることである。国犯法第1条に規定する質問検査権は査察官に与えられた権限ではあるが、一切の強制力を有しない任意の権限である。この点、通則法第74条の2に規定する質問検査権は「当該職員」に与えられた強大な権限であり、罰則(通則法第128条)の裏付けを伴った強制的な権限である。国犯法に定める質問検査権にはこのような強制力は全くない。
 国犯法第1条に規定する質問・検査に対して会社関係者に黙秘権があるのは当然のことであり、査察官が威圧的な言辞を弄したり、犯罪の事実について自白を迫ったり、誘導尋問をすることは堅く禁じられている。
 しかるに査察官は、査察調査着手時点から一貫して会社の代表者中島はじめ会社関係者を犯罪人呼ばわりし、告発・逮捕・共犯・幇助・和歌山の毒入りカレ-事件の林真須美・有罪等の脅迫的言辞を申し向け、査察官が用意した「脱税スト-リ-」に合わせるべく査察調査を強引に推し進めてきた形跡がある。査察調査の全ては録音記録されており、その反訳文に眼を通した当職は、あまりのことに眼を疑ったほどである。
 とりわけ、質問てん末書の作成にあたって査察官は会社関係者の真実の供述を、故意にねじ曲げるように誘導して、会社関係者及びアルバトロスの供述との「すり合わせ」、即ち質問てん末書の捏造を行っている事実がある。本件に関してはすでに4.で述べた通り、逋脱犯の犯罪構成要件が2つとも欠落しており逋脱犯罪自体が成立していない事案であるところ、中島及び近藤は犯罪者扱いされ、その上、質問てん末書の捏造まで行なわれて、心身共にボロボロになり、破綻寸前の状況にまで追い込まれている。
 虚偽の質問てん末書を作成した査察官の行為は証拠(国犯法上の証憑)の捏造であり、由々しき犯罪行為である。

+ 以上、齋藤和久査察官が現在行っている査察調査は、単なる違法調査の域を超えて犯罪行為に該当するおそれのある行為である。
 貴職におかれては、このような違法かつ犯罪行為を公務の名のもとに強行している齋藤和久査察官の蛮行を中止させ、改めて適正な調査手続のもとで適法な査察調査を実施するように指導していただきたい。

以上

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