嘘から出たマコト-⑤

 査察調査がなされている途中で(ほとんどの場合、査察調査開始直後)、査察官の意を受けた国税OB税理士とかヤメ検弁護士が、脱税見込額を参考にして、「このまま放っておくと多額の延滞税を支払うことになる」といった偽りの言葉を査察嫌疑者に申し向け、延滞税をストップさせることを理由として、税額が確定していないにもかかわらず、相当額の見込税額を、予納金として予め国庫に納付することが、実務上しばしばなされてきた。もちろん、違法行為である。

 本件の場合も、この通りのことがなされていたのは、前回及び前々回で述べた通りである。

 予納については、予納する際の条件と予納金を返還する際の条件とが定められていることについても前回述べた通りである。
 前回は、まず予納する際の条件について吟味し、3人の税務職員が、法が規定する予納の条件に適合しないにもかかわらず適合すると申し述べたことは、嘘・偽りであることを明らかにした。

 次に、予納金を返済する際の法定条件について吟味する。通則法59条第2項に次のように定められている条件である。

「2.前項の規定に該当する納付があつた場合において、その納付に係る国税の全部又は一部につき国税に関する法律の改正その他の理由によりその納付の必要がないこととなつたときは、その時に国税に係る過誤納があつたものとみなして、前三条の規定を適用する。」(下線は筆者)

 上記のうち、「前項の規定に該当する納付があった場合」については、すでに前回述べたように、4,500万円の予納が不適法なものであることから、「前項の規定に該当する納付」とは言えないことになる。
 このことは、「前項の規定に該当する納付があった場合」があったものとした税務職員の回答が、嘘・偽りであったことを意味する。
 また、「その納付に係る国税の全部又は一部につき、… その納付の必要がないこととなつたとき」については、そもそも納付(予納)そのものが不適法なものであることから、納付の必要があるとか、あるいは、その必要がないことになったことなど全く関係ないことだ。

 税務職員の回答は、

「納付の必要がないことになったので、過誤納があったものとみなして還付する。」

というものであるが誤っている。過誤納とみなすとか、みなさないの問題ではなく、そもそも納付(予納)そのものが不適法なのであるから

「緑税務署が、2年6ヶ月前に予納金として4,500万円を受け取ったこと自体が、適法な国庫金の収納ではなかったので、返還する」

と言えばいいものを、敢えて根拠とはなりえない法文を持ち出して屁理屈をこねて正当化しようとするからおかしなことになってしまう。

 以上、緑税務署長が、本件の査察嫌疑者の予納金4,500万円を、平成29年6月19日付の“国税還付金振込通知書”を送達して還付した行政行為は、法の規定に基づかない超法規的な違法行為であることが明らかになった。
 同時に、“国税還付金振込通知書”は有印公文書であるところ、その記載内容に虚偽があった。国税還付金の発生事由として記された

「過誤納」

は、通則法第56条に定める「過誤納」でもなければ、国税通則法第59条第2項に定める「みなし過誤納」でもない。法律上存在しない「過誤納」であって、虚偽の記載である。

 このことは、緑税務署長が発遣した“国税還付金振込通知書”という公文書が、内容虚偽であるおそれがでてきたことを意味する。刑法上の犯罪である「虚偽有印公文書作成同行使の罪」(刑法第156条、第158条)に抵触しかねないということだ。

(この項つづく)

 ―― ―― ―― ―― ――
 ここで一句。

”あの人は変人なのと言う変人” -交野、大沼章

 

(毎日新聞、平成29年7月4日付、朝日川柳より)

(そう言う アンタは何なのさ。)

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