査察Gメンを犯罪人として告発!!-号外③
- 2016.07.19
- 山根治blog
号外②(承前)
国犯法による「通告処分」がなされていたということであれば、納税人に対して必ず「通告書」が送達されているはずである(国犯法施行規則第9条)。
判例6.のケースは、「罰金もしくは科料」に処すべき事案に該当し、「情状懲役の刑」に処すべき事案ではないと考えられるので、刑事告発がなされる前に、原則通り「通告処分」がなされ納税人に対し「通告書が送達されたものと考えていいからだ(国犯法第14条、同法施行規則第9条)。
この点、判例6.の決定理由で、
としているのは明らかな間違いである。
「詐偽(偽り)その他不正の行為」、即ち「犯則行為」が認められた場合には、刑事訴追を受けるか、あるいは納税をするか、いずれかの選択権を納税人にゆだねる国犯法の「通告処分」が必ずなされることになっており、判例6.の決定理由で言うように、納税人に対し、
ではないからだ。判例6.の決定理由が妥当するのは、あくまでも「犯則行為」が認められない場合の純行政的な徴税に限られ、判例6.のケースのように刑事訴追に直結するような徴税には妥当しないのである。
国犯法に定められた「通告処分」とは一体なんであるか。かつて筆者は別稿で「通告処分」について詳しく述べたことがある(「修正申告の落とし穴-⑥参照」)。
「通告処分」が制度化された詳しい経緯については別稿を見ていただくことにして、ここでは、物品税のような間接国税に限って適用される「通告処分」について述べる。
これが、国犯法第14条以下に規定されている「通告処分」の内容だ。
この「通告処分」をする時は、
+犯則(脱税)の理由を明示し、
+罰金もしくは科料に相当する金額、
+没収品に該当する物品、
+徴収金に相当する金額、
+書類送達ならびに差押物件の運搬、保管に要したる費用
を、指定の場所に納付すべき旨を「通告」しなければならないと規定されており(国犯法第14条)、その「通告」は、「通告書」を作成して送達することが定められている(国犯法規則第九条)。
犯則者(脱税の嫌疑をかけられた者)が、この「通告」を受けて言われた通りの金額を支払った場合には、
とされ、公訴権の消滅が定められている。言われた通りの金額を支払えば、告訴はしない、刑事事件にはしないことが明確に定められているのである。
犯則者が次のように、支払いをしない場合にはじめて、告訴だ、刑事事件だということになるということだ。
つまり、犯則者が、この「通告」を受けた日より20日以内にこれを履行しない時、つまり指定の場所に指定された金額を納付しない時は、国税局長または税務署長は告発の手続きをしなければならないとされている(国犯法第一七条)。
ここで注目すべきことは、仮に20日を過ぎた場合でも告発がなされない前に犯則者が履行した場合には敢えて告発をしなくともよいとされていることだ(国犯法第一七条但し書)。
以上の「通告処分」が、「租税犯の既遂の時期」に関して意味するところは何か。
まず、既遂の時期、即ち犯罪成立の時期が、
+「通告」がなされた日ではないことは明らかであり、
+20日以内に支払いがなされない場合でも必ずしも犯罪が成立したともいえないし、
+そもそも、20日以内に支払いがなされた場合には犯罪そのものが消えてなくなってしまう訳であるから、既遂もヘチマもない。
この事件を踏まえて、判例6.の要旨である、
を見てみると、判例6.の誤りが明白に浮き彫りになる。
即ち、判例6.の言っている納期日とは、
とされているので、具体的には、
+昭和29年1月分についての納期日は、同年3月末日であり、
+昭和29年2月分についての納期日は、同年4月末日であり、
+昭和29年3月分についての納期日は、同年5月末日であり、
+昭和29年4月分についての納期日は、同年6月末日であり、
+昭和29年5月分についての納期日は、同年7月末である。
つまり、この裁判例に関していえば、5つの納期日、即ち、
+昭和29年3月末日、
+昭和29年4月末日、
+昭和29年5月末日、
+昭和29年6月末日、
+昭和29年7月末日、
が存在することになり、異なる5つの納期日の徒過によって租税犯罪が既遂になるというのであるから、5つの別個の租税犯罪が成立することになる。これらの納期日は暦の上で決っており、具体的かつ一義的なものだ。
ところが、国犯法の「通告処分」は、「通告日」あるいは「通告日より20日以内」といった規定が存在することから、租税犯罪は5つではなく一つである。納期日については具体的かつ一義的な定めはなく、敢えていえば「通告から20日以内」ということになろう。
しかも、その一つの租税犯罪さえ、言われた通りの支払いをすれば犯罪そのものが消滅するというのであるから、
ことなどありえない。以上のように納期日にしぼって検討した場合、判例6.は明らかに誤っている。
―― ―― ―― ―― ――
ここで一句。
(“博識も良識もあり知恵がない”)
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