やりたい放題の査察官(2)

 一般の人はもとより、税理士の関与をも一切排除して進められてきたのが査察調査である。税理士として納税者の依頼を受けて、話し合いに行ってもケンもホロロの門前払いをされるのがオチであった。国税局の査察部に足を運んでも直接の担当者は現われず、査察の管理部門の職員が出てきて、話を聞いたふりをするのが常であった。慇懃無礼な応対に終止し、いくら、
「代理人税理士として、納税者の言い分を陳述したい。」
とか、「このケースは告発するような事案ではない。誤りがあれば修正申告に応ずるので、告発をやめてもらえないか。」
などと申し入れても、「個別事案には答えることはできない。」
とか、「話は承っておく。」
など、ノレンに腕押し、事実上の門前払いであった。

 もちろん、このような対応は明らかに誤っている。憲法と税理士法の規定を無視したもので違法である。国税局は、国税犯則取締法(以下、国犯法という)の規定を根拠にしているようであるが、間違っている。
 たしかに、国犯法第九条「出入禁止」には、

「収税官吏質問、検査、領置、臨検、捜索又ハ差押ヲ為ス間ハ何人ニ限ラス許可ヲ得スシテ其ノ場所ニ出入スルヲ禁スルコトヲ得」

となっており、査察官(収税官吏)は、質問・検査をする現場に第三者が同席するのを拒絶することができる。しかし、これは調査の立会いの問題だ。
 もともと「立会い」は、税理士業務ではない。判例で明らかにされているように、税理士でなくとも誰でもできるものだ。税理士法で定められている税理士業務は、
+税務代理
+税務書類の作成
+税務相談
の3つである(税理士法第2条第1項)。この3つの業務は税理士だけに与えられた独占的な業務で、税理士ではない者(非税理士)が行なうことはできない。非税理士は、有償の場合はもちろん、たとえ無償(お金をもらわない)であっても税理士業務を行なうことは禁じられている(税理士法第52条、第59条、税理士法基本通達第2-1)。税理士業務の無償独占性(「脱税摘発の現場から-7」参照)といわれるものだ。

 税理士業務のうち特に大切なのは、1)の税務代理である。

「税務官公署に対する租税に関する法令若しくは行政不服審査法の規定に基づく申告、申請、請求若しくは不服申立て(以下、申告等という)につき、又は当該申告等若しくは税務官公署の調査若しくは処分に関し税務官公署に対してする主張若しくは陳述につき、代理し、又は代行すること」

と定められている業務が税務代理だ。
 税務調査については、税務署とか国税局の調査がなされる場合、納税者の求めに応じて、納税者側の言い分(主張、陳述)を代理して申し述べたり、代行することが法で定められている(税理士法第2条第一項三)。
 これを納税者の側から見れば、税務代理人を選任する権利があるということだ。この税務代理人選任権は、弁護人選任権(刑事訴訟法第30条)のような明文規定はないものの、当然に存在している。査察が税理士を門前払いするのは、納税者の税務代理人選任権を否定するものだ。明らかに違法である。

 もともと税理士は、

「税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする」(税理士法第1条)

とされ、極めて公共性の高いものだ。
 日本国憲法第3条(法定手続の保障)

「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」

及び、同第84条(租税法律主義)

「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。」

は、国民の権利を定めたもので、税理士法自体、これら憲法の規定に由来するものだ。この点、同じように公共性の高い公認会計士の独占業務である監査とは異なっている。会計士の監査業務は憲法の要請に基づくものではないからだ。

(この項つづく)

 ―― ―― ―― ―― ――

 ここで一句。

“なんぎやな けったいな女(ひと) 好きになり” -芦屋、みの吉

(毎日新聞、平成25年4月1日付、仲畑流万能川柳より)

(お互いさま。)

3362700+ 125 total views,  2 views today