中江滋樹氏の真実

 角栄ブームだそうである。

 折しも、“ロッキード事件の真実、40年目の衝撃スクープ”と銘打って、田中角栄のスキャンダルが蒸し返された。ロッキード社から、丸紅ルート、全日空ルートの他に、児玉ルートとして政界のフィクサー・児玉誉士夫に25億円の裏金が渡されていた事実が、明らかにされた。平成28年7月24日のことである。

 NHKスペシャルとして、いかにも“日米の闇”が40年目に明らかになったかのように報じているが、茶番である。

 こんなこと、スクープでも何でもない。当時から判っていたことだ。もちろん、東京地検特捜部は立証に十分な証拠を摑んでおり、百も承知であった。児玉を敢えて立件しなかったのは、地検特捜部の政治的思惑以外の何ものでもない。今さらながら当時の担当検事が番組に登場して、シレッと嘘八百を並べ立てている。白々しい限りである。

 40年前と言えば、昭和51年のことだ。昭和37年以降は脱税犯罪が犯罪ではあり得ない(“査察Gメンを犯罪人として告発!!①~⑳,号外①~③”参照のこと)、つまり、全ての脱税事件は冤罪であったにも拘らず、東京地検特捜部はせっせと脱税という幻の犯罪をデッチ上げ、社会正義の代弁者であるかのような顔をしてきた。おびただしい数の無辜(罪のないこと。広辞苑)の市民が、東京地検特捜部の政治的な思惑によって脱税犯に仕立て上げられ、塗炭の苦しみを味あわされた上に、社会的に抹殺されてきた。「人物破壊(character association)」である。しかも、裁判所もグルになって国家ぐるみの犯罪(冤罪の捏造という犯罪)に血道を挙げていたのである。

 田中角栄がらみで言えば、投資ジャーナル事件の主役とされた中江滋樹氏も冤罪被害者の一人だ。悪徳商法と騒ぎ立てられ、詐欺師の烙印を押されて断罪され、社会から抹殺された。
 中江氏の顧問会計士としてグループ全体の実情を知る立場にあった私は、事件当時から中江氏は詐欺行為など行っていないことを確信していたが、それを証明する手だてがなかった。冤罪だといくら叫んでも、犯罪者の烙印を押された者は自ら冤を雪(そそ)ぐことはできない。あったことは証明できるが、なかったことを証明することはできないからだ。所謂“悪魔の証明”だ。
 ところが、“査察Gメンを犯罪人として告発!!①~⑳”の連載を終えた段階で、検察が日本最大の組織暴力団・国税庁を配下に置き、脱税にかかる冤罪を捏造していた事実が判明したことに加え、刑事事件一般について、刑事訴訟法に現行憲法に抵触するような重大な欠陥が2つ(共に、明治憲法下における戦時立法による規定)見つかり、この違憲の疑いが強い2つの規定があるために、刑事法廷はいとも簡単に冤罪を真実の犯罪であるかのように“量産”してきた事実が判明したのである。中江氏の場合も例外ではなかったということだ。
 詳細については、別稿で明らかにする予定であるが、取り敢えず、事件当時の中江氏自身の手になる事件の経緯を公表することにした。

 『相場師中江滋樹の弁明』と題した文書は、第一審の東京地裁に提出されたものであり、そのうちの要旨の一部については、中江氏自身によって東京地裁104号法廷で実際に読み上げられたものだ。
 尚、見出しの追加をし、一部の文章、図版、数値表の整理をし、登場人物を原則として仮名にしたのは私(山根治)であるが、内容・文書の趣旨には一切手を加えていない。
 中江滋樹氏と山根治は本名で記したほか、このたび一般に公表するに際して、中江氏と相談の上、登場人物のプロフィールのうち、
 (1)政界・経済界関連
  1.超大物政治家。政界の闇将軍。
  2.真坂専二。テレビ朝日元専務。テレ朝の天皇と称された。フィクサー。
については、
  1.は 田中角栄氏(故人)
  2.は 三浦甲子二氏(故人)
であり、
 (4)警視庁関連
  1.武智大五郎。警視庁のキャリア官僚。投資ジャーナル潰しを引き受け、数億円を懐にした人物。政治家志向。
については、
    下稲葉耕吉氏(故人)
であることを明らかにしておきたい。

 ―― ―― ―― ―― ――
 ここで一句。

 

”イギリスは今や大後悔時代” -相模原、水野タケシ

 

(毎日新聞、平成28年7月23日付、仲畑流万能川柳より)

(なかなかどうして。イギリスは400年以上もの間、ヨーロッパだけでなく全世界に陰謀をしかけて弱者を食いものにしてきた、いわば“強盗国家”だ。殺しのライセンスを持つ007の世界はフィクションではなかった。EU離脱などで後悔などするものか。大英帝国の新たな陰謀の始まりだ。
 -このような趣旨の発言をしているのは、藤原正彦氏(週刊新潮、平成28年7月28日号、“菅見妄語”)。同感である。
 それにしても、藤原正彦氏のイギリスに対する評価は的確である。
 幕末以来今日まで150年以上にわたって、私を含む多くの日本人は紳士の国イギリスに範を求め、追随してきた。そろそろ目が覚める時がきたようである。以下、“菅見妄語”から引用する。

『知力と教養を兼ね備えたイギリスのエリートは、国益のためとなると主義主張、原理原則、約束、正義には目をつむり、合法非合法を問わず狡猾な戦略謀略をめぐらせる。紳士にあるまじき行為が正当化されるのだ。
 彼らが奴隷貿易を考案し、アヘン戦争などで中国を騙し続け、インドから二百年も巧妙に搾取し続けた。第一次大戦ではアラブ人を二枚舌三枚舌で騙し、今日の中近東問題のほぼすべての原因を作り、大東亜戦争では米ソを巻き込みありとあらゆる謀略を日本に仕掛けた。』

 上記のうち、「イギリスのエリート」を日本の「キャリア官僚」に置き換えてみるとピッタリする。ただ、日本の「キャリア官僚」が「狡猾な戦略謀略」をめぐらせたのは、専ら日本人の99%を占める国民、つまり一般大衆に対してであった。日本国民を二枚舌三枚舌で騙し続け、搾取し、国家の利益に名をかりて専ら自らの利益を図ってきたのが「キャリ官僚」だ。獅子身中の虫である。
 対外的にはイギリス(やアメリカ)に操られて、いいように利用されてきた「キャリア官僚」。「知力と教養を兼ね備えたイギリスのエリート」に比して、いささか「知力と教養」に欠けるところがあったのではないか。片や、世界を股に掛けて生き抜いてきた“大ドロボー”、片や、日本という小さな国内でチマチマと一般大衆を騙してきた“コソドロ”といったところだ。かつての鹿鳴館のバカ騒ぎを演じた連中のように、サルはいくら人間を気取っても人間になることはできないのと同断である。

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