査察Gメンを犯罪人として告発!!-⑳

 判例7.(承前)



 判例7.の事例は、昭和31年3月期と昭和32年3月期にかかる法人税法違反事件であるから、まさに前回述べた改正経緯の(2)のときの罰則規定を適用したものであった。

 当時、法人税にはすでに申告納税方式が取り入れられていたが、実際には従来通りの強権的な賦課課税方式が事実上まかり通っていた。法の建前と実際の税務行政とが異っていたのである。

 そのカムフラージュに用いられたのが逋脱犯の罰則規定である。

 その当時の逋脱犯は、

「詐偽その他不正の行為により、法の規定により申告をなすべき法人税を免れた者」

とされ、その免れた法人税額については、

「政府は直ちに徴収する」

ものとされていた。

 この規定に盛り込まれている、
+政府は
+直ちに
+その免れた法人税を
+徴収する
の文言は、まさに強権的な賦課課税方式そのものであるし、更に

「法の規定により申告をなすべき法人税」

の文言に至っては、事実上の賦課課税方式を隠蔽し合理化しようとしたゴマカシ以外の何ものでもない。
 つまり、納税者の意思に関係なく、いわば先験的に納付すべき法人税が決っているかのような規定になっているのである。「法の規定により申告をなすべき」という、まことに怪しげな文言がそれである。
 このゴマカシの文言にまんまと引っかかったのが、判例7.の第一審の裁判官であった。
 第一審判決については、すでに本稿の⑮で述べたところであるが、再掲する。

「納税義務者が法人税逋脱の目的をもって虚偽過少の確定申告をなし、右虚偽申告の後更に正当な税額を納付しないで所定の納付期限を経過すれば、ここに逋脱罪は既遂に達するものと解すべく、即ち法人税法四十八条にいう「申告をなすべき法人税を免れ」とは納税義務を消滅させることの意味ではなく、法人税法の要求するところは、その納期に、正当な税額が納付されることに鑑みれば、その納期においてあるいはその税額の点において法の要求するところが正しく実現されなかったとき、ここに政府からすれば法人税収納減少の事実、納税義務者からすれば「法人税を免れた」事実の発生があったものと解するのが相当である。(下線は筆者)」

 ここに判決は、

「法人税法四十八条にいう「申告をなすべき法人税を免れ」とは、納税義務を消滅させることの意味ではなく、法人税法の要求するところは、その納期に正当な税額が納付されることに鑑みれば」

などと、「法の規定により申告をなすべき」というゴマカシの文言を、言葉通りに受け取ってあれこれと妄想し、その結果、「正当な税額」という架空の概念をヒネリ出しているのである。
 判決は、「法人税の要求するところ」、「法の要求するところ」と二回も繰り返して強調しているが、法の要求するところは、まさに申告納税制度の本旨そのものであって、判決の言うように、たかだか罰則の中に盛り込まれたゴマカシの文言についてのツジツマ合わせの解釈などではない。
 この迷(!!)判決を下した裁判官は、さしづめ、木を見て森を見ない、世間知らずの法律屋の典型であるといえようか。

(この項おわり)

 ―― ―― ―― ―― ――
 ここで一句。

 

”ハロウィンに素顔で行けと失礼な” -佐倉、繁本千秋

 

(毎日新聞、平成28年4月24日付、仲畑流万能川柳より)

(失礼ではなかったりして。)

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