査察Gメンを犯罪人として告発!!-号外①

 判例6.として検討したのは、「租税犯の既遂の時期」に関する判例であった(本稿⑫~⑭)。

 実は、この最高裁決定の第一審で明らかにされている「罪となる事実」について検証していて、どうにも納得いかないことがあった。逋脱税額(脱税額)がどのように計算されたのか、スンナリとは分らないのである。加減乗除といった初歩的な算数の問題であるが、どうしてもよく分らない。一覧表にした上で数字をいじくり回してみたが、理屈に合わないのである。

 取り敢えず、判例6.の第一審(昭和30年5月14日渋谷簡易裁判所)の判決文から引用する。

「罪となるべき事実」、即ち「犯則事実」は、次の通り。

「被告会社は渋谷区元広尾町一番地に製造場を有し、物品税法第一条掲記第二種丁類三十四号該当の課税物品であるネオン管用変圧器の製造業を営むものであるが、同会社経理係社員原田史郎は、被告会社の業務に関し右製造場で製造した右変圧器に対する物品税を逋脱しようと企て、
 一.昭和二十九年一月中ネオン管用変圧器二百七十一個を税込み価格百十三万一千八百六十円で
 二.同年二月中二百四十三個を百万一千六百五十円で
 三.同年三月中四百二十一個を百六十六万三千百円で
 四.同年四月中六百二個を二百三十三万一千六百円で
 五.同年五月中四百六個を百六十万三千九百円で
それぞれ右製造所より販売移出したのに右各月分に対する課税標準価格申告に際し
 一の事実に対しネオン管用変圧器三十五個を税抜価格八万四千二百円で
 二の事実に対し同四十八個を同十三万五千四百円で
 三の事実に対し同八十四個を同二十三万二千円で
 四の事実に対し同八十六個を同二十三万二千六百円で
 五の事実に対し同六十七個を同十七万九千五百円で
それぞれ販売移出した旨虚偽の申告書を所轄税務署に提出し よって
 一の事実につき物品税十七万二千八百円を
 二の事実につき同十三万九千八百六十円を
 三の事実につき同二十三万九百四十円を
 四の事実につき同三十四万二千八十円を
 五の事実につき同二十三万一千四百円を
それぞれ逋脱したものである。
」(下線は筆者)

 適条(適用条文のこと)として揚げられているのは、物品税法第十八条第一項第二号である。

 上記の下線部分、即ち、

「それぞれ販売移出した旨虚偽の申告書を提出し、よって
一の事実につき物品税172,800円を
二の事実につき同139,860円を
三の事実につき同230,940円を
四の事実につき同342,080円を
五の事実につき同231,400円を
逋脱したものである」

とされている部分の、それぞれの逋脱税額がどのようにして算出されたものか判然としないのである。

(この項つづく)

 ―― ―― ―― ―― ――
 ここで一句。

 

”結婚を凌(しの)ぐ賭博は見たことない” -大阪府、原隼

 

(朝日新聞平成28年4月12日付、朝日川柳、西木空人選)

(選者の評に曰く、“ノーコメント”)

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