脱税Gメンを犯罪人として告発!!-⑧

 判例4.(承前)次に、判例4.の原審判決について検討を加えることにする。



 原審・東京高裁の判決文によれば、この裁判は、“所得税法(昭和四〇年法律第三三号による改正前のもの)六九条一項に謂う「詐偽その他不正の行為」”(下線は筆者)をめぐって争われたものである。

逋脱行為、即ち「詐偽その他不正の行為」が実際に行われたのは、

“(一)昭和三十八年分の真実の所得金額(下線は筆者)は二千三百七十万六千四百十二円、之に対する所得税額は一千一百三十三万四千二百三十円であったのに、之を秘し、同三十九年三月十日、同三十八年分の所得金額は二百八万八千一百円、之に対する所得税額は十四万三千二百円である旨の過少の所得税確定申告書を提出して、右真実の所得税額(下線は筆者)との差額一千一百十九万一千三十円の所得税を免れ、
(二)同三十九年分の真実の所得金額(下線は筆者)は三千四十万三百三十七円、之に対する所得税額は一千五百十三万六千九百十円であったのに、これを秘し、同四十年三月十二日、同三十九年分の所得金額は二百八十八万七円、之に対する所得税額は二十五万四千一百四十円である旨の過少の所得税確定申告書を提出して、右真実の所得税額(下線は筆者)との差額一千四百八十八万二千七百七十円の所得税を免れた、と謂うに在るところ、原判決が訴因変更手続を履践しないで、被告人は、Cから受領して自己の所得と成った後記各金員が、会社に於ても所得として所轄税務署長に申告しない所謂簿外金から出金されたものであることを知り乍ら、厚木税務署に於て、同税務署長に対し、 
(一)昭和三十八年中にCから受領して、自己の所得と成った一千九百十四万六千七百五十円、之に相応する所得税額九百九十三万五百六十円に付て、同三十九年三月十日、自己の同三十八年分所得金額は二百八万八千一百円、之に相応する所得税額は十四万三千二百円である旨記載した内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、以て不正の行為に依り九百七十八万七千三百六十円の所得税を免れ、
(二)同三十九年中にCから受領して自己の所得となった二千四百六十五万八千四百七十六円、之に相応する所得税額一千三百四十八万七千二百二十円に付て、同四十年三月十二日、自己の同三十九年分所得金額は二百八十八万七円、之に相応する所得税額は二十五万四千一百四十円である旨記載した内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、以て不正の行為に依り一千三百二十三万三千八十円の所得税額を免れた旨の事実を認定し”

とあるところから、過少申告をしたのは

昭和38年と昭和39年

の二年間であり、それぞれ、11,191,030円、14,882,770円の所得税を免れたとし、そのうち不正の行為(詐偽その他不正の行為)によって所得税を免れたのは、昭和38年で9,787,360円、昭和39年で13,233,080円であると認定したものであることが分かる。

 以上から、この脱税事件は昭和38年と昭和39年のものであり、国税通則法施行日より後の事件であることが確認できる。
 しかし、仔細に検討してみると、判決文の中に、国税通則法の規定に反する内容が盛り込まれていることが判明する。それは一体何か?

 まず原審判決は、旧所得税法、つまり昭和40年法律第33号によって全部改正される前の所得税法第69条に従っていることだ。
 この旧所得税法第69条に規定されている罰則は次の通りである。(昭和25年3月31日一部改正後のもの)

 旧所得税法69条

第一項.「詐偽その他不正の行為により、第二十六条第一項第三号乃至第五号に規定する所得税額につき所得税を免れた者は、これを三年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し又はこれを併科する」
第二項.(略)
第三項.「第一項の場合においては、政府は、直ちに、その免れた所得税額を徴収する(下線は筆者)」

 上に掲げた旧所得税法第69条第三項に注目していただきたい。
 これを見ると、逋脱行為があった場合には、
+政府は
+直ちに
+その免れた所得税額を徴収する
となっており、納税義務が成立していれば、政府は直ちに、即ち、何ら「特別の手続き」を要しないで、「納付すべき税額」を確定し徴収することができるかのような規定になっている。
 この点、この旧所得税法の規定は、基本法である国税通則法の「納付すべき税額の確定」の規定に反するものだ。『納付すべき税額の確定』については、国税通則法に明文の規定が存在し(「査察Gメンを犯罪人として告発する!!」⑤参照)、所得税にあっては、申告納税方式という特別の手続きを要するものとされているからだ。『納付すべき税額』は、原則として納税者のする申告によって確定するものとされ、税額を計算し、確定するのは納税者国民であって政府ではない。
 実は、この旧所得税法第69条3項の規定は、昭和40年3月31日に所得税の全部改正が行われた際に削除され消失している。何故削除されるに至ったのか、その経緯も明らかにされることなく、コッソリと消されているのである。このことは所得税だけではなく、同じ日に全部改正された法人税も同様だ。削除理由の公表を憚(はばか)るやましい事情が国税庁の側にあったのではないか。
 この裏事情は、査察Gメンがよりどころにしている国税犯則取締法と密接に関連しているものと推察するが、その詳細は別稿に譲る。

 以上を要するに、国税通則法が施行された昭和37年4月1日から、所得税の全部改正が行われた昭和40年3月31日までの3年間、『納付すべき税額の確定』に関する規定が相反する形で、国税通則法と旧所得税法の中に盛り込まれていたのである。ダブル・スタンダードである。
 この3年のうちの昭和38年と昭和39年の所得税脱税事件を、国税通則法の規定に反する旧所得税法69条3項を適用して裁いたのが判例4.であり、その原審であったということだ。

 判例4.の中に、判例1.と同様、「賦課」なる言辞が用いられ、更に、判例4.の原審判決の中に、

「真実の所得金額」とか
「真実の所得税額」

なるフレーズがそれぞれ二回づつ用いられている。筆者が下線を引いて注意を促した部分である。
 「賦課」、「真実の所得金額」、「真実の所得税額」。これらはいずれも、申告納税方式によるものとされている所得税にはなじまないものだ。原審判決が、所得税が申告納税方式によることを無視して下された何よりの証拠である。

(この項つづく) 

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 ここで一句。

 

”経済は安全以上に大切か” -千葉、元軍国少年

 

(毎日新聞、平成28年3月3日付、仲畑流万能川柳より)

(ゲ集団(ゲンパツ利権集団)、アホノミクスで下種(ゲス)になり。)

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