島根原発と御用商人-①

 私の手許に、ある組織の後援会名簿がある。この後援会、福祉事業をメシの種にしている社会福祉法人に群がっている利権集団だ。個人、団体、会社が100名余り名を列ねているこの名簿、よく見てみるとあることに気がついた。福祉事業だけでなく、公共事業と島根原発に群がっている面々であることだ。

 福祉事業、公共事業、島根原発、これらは全て国家の公金によるもので、その意味からすれば、この利権集団は公金に群がっている連中ということになる。いわば公金に群がる乞食(こつじき。①僧が在家(ざいけ)を托鉢(たくはつ)してまわること。②<<転じて>>物もらい。乞食。-岩波古語辞典)の群れと言ってよい。

 私の住む松江市は、金沢、京都と共に国際文化観光都市ということになっている。しかしこれは嘘である。看板に偽りあり、ということだ。
 戦前は文化観光都市どころか、まぎれもない軍事都市であり、日本陸軍の聯隊(れんたい)が置かれ、海軍の基地があった。軍用飛行場だけでなく、いくつかの高射砲基地も設置されていた。
 当時の松江の基幹産業であった造船所・鉄工所は、秘密裡に、魚雷とか軍用機器を作って戦場に送っていた。またそれらは、軍事施設ということで、特権階級である利権集団の徴兵免れにも利用されていた。
 軍事都市であったのは戦前だけのことではない。現在も松江市が軍事都市であることに変りはない。核兵器製造工場である原子力発電所が松江市内に3基もあるからだ。(「11/28講演会「闇に挑む『原発とは何か?』-福島第一と島根」-5「8.原発は核兵器工場であった」参照のこと)。安倍政権が仮想敵国としている北朝鮮と中国の至近距離に、これみよがしに核兵器工場が据えられているのである。
 原発は核兵器となるプルトニウムを生み出すだけではない。原発自身、高濃度核生成物を大量に抱え込んでおり、それ自身巨大な核兵器であることを忘れてはいけない。地震とか津波などの天災だけでなく、いともたやすい人為的操作だけで数百発の核兵器爆発に相当する放射性物質が広範囲に撒き散らされるのである。4年前の福島第一原発事故によって実証されたように、一瞬にして広範囲な国土が廃墟と化してしまうのである。覆面官僚・若杉冽氏が著した「原発ホワイトアウト」(講談社刊)で描かれた戦慄すべき内容は、私達松江市民にとって決して他人ごとではない。いわば核兵器の時限バクダンが、私の住む10キロ圏内に3つも存在しているのである。
 松江市は、雲州松江藩開府400年を迎えているが、この400年の間、一貫してお上(かみ)の支配下にあり、とりわけ明治維新以後は一貫して軍事都市の宿命を負わされ、それ故にお上(かみ)の手厚い庇護が与えられてきた。
 従って戦後、とってつけたように「国際文化観光都市」を標榜しても、軍事都市としてお上(かみ)に忠実に従う体質は全く変っていない。

 江戸時代、松江藩(お上)と松江の町人(足軽・中間などの下級武士、農・工・商・穢多非人)の間にあって藩の経済的利益を独占していたのが豪商と称される御用商人であった。つまり、松平の殿様・家老などの上級武士と御用商人とがいわば“談合”して松江藩の運営をし藩内の経済的利益を恣(ほしいまま)にしていたのである。
 このようなお上(かみ)-御用商人(豪商)-取りまき連中、といった一握りの連中による利権収奪構造は、明治維新以後も変わることなく続き現在に至っている。
 ただ、明治維新を契機に、幕藩体制から中央集権制に移行したことから、公金の歳入・歳出の権限と主要産業の許認可権が各藩(県)から中央政府(国)に移行し、御用商人による利権の収奪は、全国レベルの公金の収奪と許認可事業の収奪へと変った。
 御用商人のために、国家の利権の収奪に奔走しているのが自民党の国会議員だ。県都を松江市とする島根県から選出されている4人の自民党国会議員は、
   衆議院議員  細田 博之
   衆議院議員  竹下  亘
   参議院議員  青木 一彦
   参議院議員  島田 三郎
の4名、御用商人とベッタリくっついている御用政治家の面々である。

(この項つづく)

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 ここで一句。

 

”トッピングにんにく入れる仲になり” -名古屋、伊藤昌之

 

(毎日新聞、平成27年9月6日付、仲畑流万能川柳より)

(よかったネ。お幸せに!)

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