福沢諭吉と自民党政権

 慶應義塾大学の創設者・福沢諭吉が、一般に流布されている人物像とは全く異なっていたことについては詳しく論じたところである(「福沢諭吉の正体」①~⑯補足1~6)。

 基本的には、福沢諭吉に関する緻密な論述書・安川寿之輔著『福沢諭吉の戦争論と天皇制論-新たな福沢美化論を批判する』に従ったものではあったが、私は安川氏の論述に次の二つを付け加えた。。

 一つは、近代簿記を日本に初めて紹介したとされている『帳合の法』とは何であったのか、その正体を明らかにした。

 二つは、福沢諭吉が旗振り役の一人として活躍した明治維新とは一体何であったのか、その正体を明らかにした。

 共に、情報論としての「認知会計」による分析結果である。

 私と簿記とは長い付き合いである。松江商業高校一年生の時に簿記の基本を叩き込まれてから、半世紀以上の間、常に簿記と向き合っていたことになる。
 始めに芽生えた違和感(「福沢諭吉の正体-⑤」)は、その後薄れるどころかますます大きなものになっていった。ことに、職業として会計士の道を選んで、常日頃“道具”として使いこなしていくうちに、簿記は便利な“道具”であると同時に、ひとたび使い方を誤まれば非常に危険な“道具”であることに気がついた。
 そこで閃いたのが「認知会計」(「冤罪を創る人びと」-認知会計の発見)である。お金を記号、あるいは情報として捉え、簿記会計における多くの仮定を排除する考え方だ。お金を一つの記号(情報)として捉えた情報論と言ってもいい。
 この方法によれば、企業の実体が明瞭な形で浮び上ってくることが判った。嘘・偽りが通用しないのである。

 「認知会計」を思い付いてから10年ほどが経過した。その間私は、この情報論が実務の上で有効なものであるかどうか、実証研究を行い、当ブログで公表した。
 私的企業に関しては、
+「ゴ-イング・コンサ-ンの幻想-西武鉄道1~6」
+「西武鉄道グル-プの資金繰り-1~3」
+「西武鉄道-堤商店のトリック」
+「西武鉄道、銀行の責任逃れ-その1~その5」
+「ホリエモンの錬金術-1~20」
+「ゲ-ムとしての犯罪-1~25」
+「ハニックス工業事件の真相1~16」
+「検証!『ホリエモンの錬金術』1~21」
「検証!『ホリエモンの錬金術』号外1~号外13」
+「トヨタの蹉跌」
などの企業分析を行って、有効性を確認した。

 公会計にかかる分析あるいは、冤罪事件をはじめ国税局査察部のインチキ調査については、
+「冤罪の構図-1~20」
+「粉飾された2兆円-1~18」
「粉飾された2兆円-号外1~号外3」
+「100年に一度のチャンス-1~31」
+「八ッ場(やんば)ダムの中止と税金ドロボー-1~4」
+「『疑惑のダム事業4,600億円』八ッ場ダムの費用対効果(B/C)について1~4」
「『疑惑のダム事業4,600億円』号外1~号外2」
+「保守王国の悪あがき-1~4」
+「『大義名分なき公共事業』-大手前道路、大橋川改修、八ッ場ダム-1~12」
+「脱税摘発の現場から、1~13」
+「税務署なんか恐くない!!1~11」
+「400年に一度のチャンス-1~26」
「400年に一度のチャンス-号外1~号外6」
+「ソフトバンクの綱渡り」
+「原発とは何か-①~⑲」
+「11/28講演会「闇に挑む『原発とは何か?』-福島第一と島根」-1~14」
+「高松国税局-恐喝と詐欺による天下り」1~7
+「マルサ(査察)は、今-東京国税局査察部、証拠捏造と恐喝・詐欺の現場から」①~⑭
+「認知会計からのつぶやき-政治・経済・歴史を認知会計の視座から見つめ直す」1~10
+「やりたい放題の査察官(1)~(4)」
+「民主党政権の置き土産-偽りの査察調査」①~⑮
+「脱税は犯罪ではなかった」1~7
+「修正申告の落とし穴」①~⑩
+「狂える検察官」(1)~(5)
+「福沢諭吉の正体」①~⑯
「福沢諭吉の正体」補足①~補足⑥
において、原因分析等を行った。ここでも有効性が確認された。
 その他、ブログで公表していない分析結果は、ゆうに100を超える。

 政権を奪取する二年ほど前の自民党は、100億円もの借金をかかえて青息吐息、まさに破産状態であった。破産状態に陥った企業、あるいは餓死寸前の欠食児童であったといってよい。
 なりふり構わぬ手段で政権を奪取した自民党は、餓死寸前の欠食児童が久しぶりのゴチソウを眼の前にして、あたりをはばからずガツガツとむしゃぶりついている姿と同じである。見苦しいを通りこして哀れである。これがこの二年間の安倍政権の実態だ。
 しかし、このような狂気とも言える政権が現在の日本で長く続くはずがない。日本の一般大衆はそれを許すほど愚かではない。
 現在は、福沢諭吉の『帳合の法』、即ち近代簿記がそのままでは通用する時代ではなくなった。それにかわるものとして情報論としての「認知会計」の時代がこようとしている。隠そうとしても、真実は隠せない。「認知会計」による分析結果は、現在進行中の狂気の政治状況を鋭くえぐり出して余すところがない。

 まず、公会計にかかる分析結果は、現在の国家財政システムに重大な欠陥があり、財政支出が底の抜けたバケツのような状態であることを明らかにした(『粉飾された2兆円』他)。歳出がデタラメだということだ。
 また、税務調査、特に査察調査のデタラメの原因が、法律そのものの欠陥とその運用の誤りにあることが判明(「脱税は犯罪ではなかった-1~7」他)。歳入がデタラメであるということだ。
 政治はズバリ、歳入と歳出だ。国家におけるお金の入と出である。それが共にデタラメであるとすれば、政治がデタラメであることを意味する。
 自民党政権は、歳入と歳出の重大な欠陥を放置したままで、訳の分からない政治をゴリ押してはばからない。現在進行中の安倍政権のなりふり構わぬ振舞いはピークに達した観があり、目に余るのである。
 権力はお金であると喝破したのは田中角栄だ。魔性の存在としてのお金、この使い方を誤ると必ずシッペ返しが待っていることを忘れてはいけない。
 現在は、日本の「夜明け前」だ。ほどなく明るい日本がよみがえってくるはずである。

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 ここで一句。

”使用前使用後のよな母娘” -北九州、黄昏桜

 

(毎日新聞、平成27年1月14日付、仲畑流万能川柳より)

(何の?)

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