修正申告の落とし穴-⑤
- 2014.03.18
- 山根治blog
料調だけでなく査察もまた、虚構のストーリーである「脱税ストーリー」をもとにして、調査という名の取調べを行う、ここに問題点の全てが潜んでいる。
料調が行う調査は実態としては違法であっても、建前としては通常の税務調査である。
従って、納税者を脅し上げて修正申告に誘導することができない場合であっても、更正(税務署長が職権で脱漏税額を決めること)の手段が残されている。
ところが査察調査には更正の手段が与えられていない。査察には告発という刑事処分の権限が与えられているだけで、課税処分の権限が与えられていないからだ。
これこそ、国税通則法が改正され、平成25年1月1日から施行された結果、明らかになった最大のポイントである。「国税の調査」の章が新設され、税務調査の手続が法律上厳格化されたことに伴って、従来あいまいのままで放置されていた「調査」の意味合いが明確になった結果、付随的に査察調査の問題点が炙(あぶ)り出されたのである。
では、従来の査察はどうしていたのか。
ターゲットに選んだ納税者を、脅したり、騙したり、すかしたりして、なんとか「虚構のストーリー」を認めさせようと画策。長時間密室に放り込んで拷問のような取調べをしたり、挙句、検察官とグルになって逮捕して締め上げたりとやりたい放題。まさに、戦前の治安維持法をタテに暴虐の限りを尽した「特高」と変るところがない。
その結果、ターゲットにされた納税者のほとんどは、脅しに屈したり、騙されたりして「虚構のストーリー」を呑まされてしまうことになる。
最近でいえば、東京国税局に摘発され、東京地検特捜部に逮捕された、丸源ビルのオーナーの例がある(「脱税報道の空さわぎ」「創られた脱税ストーリー」参照)。
日本一の金持ちと豪語してはばからないこの人物、週刊誌などのインタビューに応じて、
などと意気軒高である。
たしかに、査察と検察の脅しに屈してはいない。しかし、まんまと騙されている。
弁護士を次々にクビにして、最後に「優秀な」弁護士に出会ったという。検事上がりの弁護士、いわゆるヤメ検のようだ。
弁護方針は、脱税の事実は頑として否認するが、修正申告には応ずるということらしい。修正申告に応じたのは、早期の保釈を認めてもらうための取引のようだ。
仮に以上のことが事実であるとすれば、完全にハマリである。「優秀な」ヤメ検が、東京地検特捜部とグルになってハメたということだ。東京地検特捜部としては、修正申告の関門さえ突破すれば、あとはエスカレーター式に有罪にもっていけるのである。
「日本一の金持ち」氏が、法廷でどんなに無実を叫ぼうとも、無罪になる確率はゼロに近い。「東大話法」(注)で塗り固められた数多くの判例が待ち構えており、よほどのことがない限り、無罪判決は期待できない。
脱税裁判において、「東大話法」を破る唯一の道は、「虚構のストーリー」を基にした修正申告をしないことだ。それ以外に確実な方法はない。
一年前、東京地検特捜部は法人税法違反容疑で、ある会社社長を逮捕した。本人は終止容疑を否認し、修正申告にも応じていなかった。身柄が保釈されたのは、逮捕されてから5日後のこと。いまだ公判が開始されていないことはもとより、証拠開示さえされていない時のことであり、異例の早さであった。
半年前、福岡国税局査察部は、相続税法違反の嫌疑で一年半に及ぶ査察調査を行ったものの、告発を断念した。
今年の2月、東京地検特捜部は、相続税法違反容疑で、4人の相続人のうちの1人を在宅起訴した。事実の一部は認めて納税意志は示したものの、水増しされた「脱税ストーリー」に基づく修正申告には頑として応じなかった。
以上3件とも私が関与したものだ。気心の知れた若い弁護士とタッグを組んで行ったものである。
従って、担当査察官だけでなく、検察官に対しても、国犯法に欠陥があって、脱税という犯罪が成立しないことを直接話している。口頭だけでなく、文書でも申し向けている。
ご覧の通り、国税局間の足並みが揃っていない。東京地検特捜部にいたっては、へっぴり腰だ。
私が主張しているのは、「脱税は犯罪ではない」ということだ。いずれ国税も検察もこれを厳然たる事実として認めざるをえなくなるのは目に見えているのに、往生際が悪い。なんとかごまかそうとしてあの手この手の小細工を繰り出している。
私の結論は、認知会計に基づく結論だ。インチキ話法である「東大話法」による結論ではない。「東大話法」が認知会計に勝てるわけがない。
(注)東大話法。安冨歩東大教授による造語。黒を白と言いくるめるインチキ論法のこと。官僚が得意とする詭弁。
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ここで一句。
(官僚制という怨霊が支配する日本。怨霊の生みの親は山縣有朋。怨霊ににらまれたら、どの党も金縛り状態に。)
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