脱税報道の空さわぎ

 丸源ビルのオーナー川本源司郎氏が、脱税容疑で東京地検特捜部に逮捕された。平成25年3月5日のことである。確定申告時期に合わせて行われる毎年恒例の見せしめ劇だ。

 東京国税局による査察が開始されたのが昨年の4月、10ヶ月間調査したことにして、3月の確定申告の最中(さなか)に合わせたのであろう。査察の情報がマスコミ各社に漏れていたものとみえて、テレビにせよ新聞にせよ手回しのいいことである。中には、ハワイにまで押しかけて川本源司郎氏にインタビューを行ない、逮捕の日にそなえていたテレビ局もあった。

 各マスコミの報道内容に一通り目を通してみたが、およそ脱税とは関係のないことばかりがセンセーショナルに取り上げられている。

「銀座の不動産王」
「億万長者」
「ハワイの別荘に多数の美術品を保有」
「都内に豪邸を持っていながら、高級ホテル住まい」
「1億円のロールスロイス、数千万円の腕時計」
「一時は資産3,000億円」
「関係会社を次から次へと11社も作り、9回も商号変更したり、本店所在地を16回移転したり、解散したりして税務署の調査をやりにくくした」
「申告にたずさわった税理士曰く、“税金を払わなくて済むように全て社長から細かい指示があった”」
「社長の口グセ、“税金を払う奴はバカだ”、“税金をできるだけ払わないようにするのが経営者の義務だ”」

 いつものことながら、査察と検察のリーク情報である。容疑者がいかに一般人とかけ離れた反社会的な存在、つまり犯罪者に違いないことを国民にスリ込むためになされるものだ。悪質な「ためにする」リーク情報であり、脱税容疑とは何ら関係がない。17年前、私が脱税容疑で松江地検に逮捕されたときと同様である(「冤罪を創る人々」-“脱税日本一”参照 )。
 唯一、脱税に関係ありそうな報道として、「賃料収入を除外するなどして」というのがあったが、これとても、東京地検特捜部が勝手に言っているだけのことで、どこまで事実なのか分ったものではない。
 各社の事前インタビューに堂々と応じ、「断じて脱税などしていない」と言い切っている川本源司郎氏の言葉の方が信憑性が高いのではないか。

 この脱税事件に関しては、査察開始直後からヤメ検の弁護士(検事OBの弁護士)がついているという。仮にそうであるとすれば、川本源司郎氏にとっては絶望的だ。その理由については、すでに「認知会計からのつぶやき8-政治・経済・歴史を認知会計の視座から見つめ直す-」で述べたところである。
 もっともヤメ検弁護士の全てが無知・無能であると言っているのではない。中には例外があるかもしれない。ただ、ヤメ検がかかわった脱税裁判の生の資料が私の手許に相当数存在するが、一つの例外もなく、ピント外れのデタラメな弁護をしている現実があることは事実である。もちろん判決は有罪である。
 この事件の場合も、脱税という犯罪が、完璧なまでにもっともらしく創り上げられて、税務の実務と理論に無知・無能なヤメ検弁護士と裁判官の手によってエスカレータ式に有罪判決へと導かれることであろう。とりわけ、脱漏所得が約28億8400万円、脱税額が約8億6200万円と高額であることから、川本源司郎氏本人が否認を押し通そうが、あるいは査察と検察の脱税ストーリーに従って是認に転じようが、いずれにせよ当初のシナリオ通り、多額の罰金に加えて執行猶予のない懲役刑、つまり実刑が課されることになるであろう。密室で工作された冤罪によって、一人の個性的な経営者が脱税犯という汚名を着せられて社会的に抹殺されるということだ。

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 ここで一句。

“「バカだから」「そうね」それから口きかん” -高知、しばてん

 

(毎日新聞、平成25年2月24日付、仲畑流万能川柳より)

(ヘンなところで相づち打つな!)

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