民主党政権の置き土産-偽りの査察調査-⑧

 税務署長の「調査」については、調査と名がつく限り何でもよい、-このような驚くべき判例が長い間積み重ねられてきた。裁判官が国税当局の二枚舌にまんまと騙されていたのである。

 国税当局の二枚舌はこれだけではない。査察官が行なった調査であるにも拘らず、税務署長が行なった調査であるかのように装って、課税処分が行われてきた。仮装行為である。

 つまり、税務署長が「実地調査」を行なっていないにも拘らず、「実地調査」を行なったことにして、形式的につじつま合わせをしてきたのである。偽りである。



 以上述べた2つの二枚舌は詐欺師顔負けの悪質なものだ。

 このような欺瞞行為は過去のものではない。国税通則法が改正され、施行された平成25年1月1日以降にも、全く変ることなく続いている。

+東京国税局の査察調査

+広島国税局の査察調査

+福岡国税局の査察調査

 上記3つは、私が昨年から今年にかけて直接関与したケースである。3件とも、内容的に脱税には該当しないと見極めて税務代理人を受任したものだ。

 その上に、このたびの国税通則法の改正が査察調査に直接関係することが判明したので、それぞれの査察担当者にその旨を申し向けてきた。

 脱税嫌疑者を、あの手この手で締め上げて、たとえ脱税の自白を得たとしても、嫌疑者本人が納得して修正申告、あるいは期限後申告をしない限り、告発ができない、つまり、国犯法そのものに欠陥があることを申し向けてきたのである。

 今の国犯法のもとでは、何故告発ができないか。国犯法の欠陥とは何か。
 脱税の犯罪構成要件は、「偽りその他不正の行為」と「税を免れたこと」の2つである。後者、即ち「税を免れたこと」は、税務署長の職権による更正あるいは決定(以下、更正等という)によって確定するか、もしくは、嫌疑者本人による修正申告あるいは期限後申告(以下、修正申告等という)によって確定するか、いずれかによるものとされている。つまり、この2つの方式以外では、脱税の中核的な犯罪構成要件である「税を免れたこと」が確定しない。
 査察調査には課税処分の権限が与えられていない、つまり、査察調査によっては更正等ができないのであるから、残るのは唯一つ、嫌疑者本人による修正申告等のみが、「税を免れたこと」を確定する方式となる。つまり、本人が納得して自ら修正申告等をしない限り、「税を免れたこと」にはならないのである。
 このことは、本人が修正申告に応じないで拒否している限り、「税を免れたこと」という犯罪の構成要件が成立しないことを意味する。つまり、犯罪の構成要件該当性が欠けることとなり、脱税という犯罪そのものが成立しない。告発できないとする所以(ゆえん)である。
 査察着手の時点では、更正等がなされていない。修正申告もなされていない。つまり、査察着手の時に確定している税額は、当初の申告税額であることになり、この時点では「税を免れたこと」など一切ないのである。
 にも拘らず、脱税という犯罪の嫌疑があるとして強制調査に踏み切るのであるから、典型的な見込捜査である。その上、嫌疑者本人が納得して修正申告に応じない限り、犯罪そのものが成立しないのであるから、見込捜査が完結することはない。国犯法が欠陥法であるとする所以(ゆえん)である。

 上記の3件はどうであったか。3件とも私の言い分は見事なまでに無視されただけではない。つべこべ文句をつける税理士など邪魔だとばかりに私の排除にかかってきた。
 上記3件とも、嫌疑者から嘘の自白を引き出すために、検察官が乗り出してきた。恫喝である。1.の東京国税局のケースでは、東京地検特捜部が、2.の広島国税局のケースでは、岡山地検が乗り出してきて、嫌疑者を逮捕勾留するに及んだ。嫌疑者をブタ箱にぶち込んで締め上げるためだ。
 1.と2.のケースの2人の社長(嫌疑者)、たまたま私と同年輩で、しかも二人とも有名国立大学の法学部出身のエリートである。刑法あるいは刑事罰の何たるかについての基本は熟知している。脱サラをして二人ともゼロの状態から会社を興して頑張ってきた人達だ。もちろん、これまでの人生で逮捕されブタ箱にぶち込まれたことなど一度もない。まさに青天の霹靂であったに違いない。
 否認している限り保釈しない、このまま否認し続けると、実刑になる、-このように逮捕された上で、検事に脅されたり、潔く認めて修正申告に応じたら保釈してやる、その上に実刑ではなく執行猶予にしてやる、などと検事から利益誘導されたりした結果、事実に反する嘘の自白をし、する必要のない修正申告に応じてしまった。国税と検察の連係プレーによる恫喝と利益誘導に屈したのである。

 二人の税務代理人であった私は露骨な形で排除され、逮捕を予期して私と一緒に動いていた弁護士も、弁護人に選任された後に同様に排除され、国税当局の意のままになる弁護人に差し替えられた。
 この2つのケースについては、録音記録を含む、膨大な量の資料が私の手許に残っている。いずれ、「冤罪を創る人々」と同様に、査察官とか検察官など公職にある者については実名で、彼らの非行を具体的に公表する予定である。

(この項つづく)

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 ここで一句。

“偉そうにしてたが落選(おち)てダサくなり” -富士、富士のマク

 

(毎日新聞、平成25年8月8日付、仲畑流万能川柳より)

(「猿は木から落ちても猿、政治家は選挙に落ちるとタダの人以下。」)

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