11/28講演会「闇に挑む『原発とは何か?』-福島第一と島根-」-6

***9. 島根の原発について

 最後になりますが、島根原発について触れたいと思います。島根原発について、松江の方が書かれた本があります。『島根の原発』の高野一平さん、ペンネームです。松江の今井書店の田和山店に平積みにされていると、ネットで紹介されていた。私はすぐ買いに行って拝見したのですが、実によくまとめてある。しかも、内容がきちんとしていて、非常にわかりやすい。コンパクトにまとめてあり、文章もうまい。これを書ける人は半端な人じゃないと思いましたので、人物のプロファイリングをしてみました。科学的なこともわかる方だから、金儲けに走っていない開業医じゃないかと思いました。ところが後で判ったのですが、高野孝治弁護士でした。島根原発はこの本を読んでいただければ、よくわかると思います。過不足なく書かれています。今たくさんの原発の本が出ていますが、この本はピカイチです。皆さんにお勧めします。

 私が島根原発で参考にしていただきたいのは、資料14ページ(「講演会配布資料」参照)の人物です。この村上達也という人物は、私の50年来の友人です。大学の同級生で、4年間大学の寮で一緒でした。彼は大学を出てから銀行に入った。50代になって地元の東海村の村長になった。今4期目です。東海村は日本で初めて原発が置かれた、いわば原発のシンボルのような町です。当然のことながら村長になった時には、日本原子力発電を信じ、原発を安全だと信じ込んで、推進派ということで村長になっています。それが10年前にJCOの臨界事故があった。あの時もかなり大きなショックを受けていました。その直後に村上君に会って、いろいろ話を聞きましたけれど、彼は非常にショックを受けていた。しかしその時には、原発について必要でないということは、口が裂けても言わなかった。困ったということは言っていましたが、それでも原発を信じていた。ところが、今度の事故で「繁栄は一炊の夢だった」と反省し、原発の廃炉まで言うに至った。この東海村は人口わずか3万7千人。その3分の1が原発関連。一般会計の60億円の予算の3分の1が原発関連です。原発とは切っても切れない関係にある。そのトップがこういう発言をせざるを得なくなった。極めて重い発言です。島根原発もこれを是非参考にしていただきたい。

 もう一つ、原発を誘致すると、地域経済,地方財政にプラスになると言われています。それじゃあどの位プラスになるかということを、具体的に示します。資料の12~13ページ(「講演会配布資料」参照)。これは今から7年前、資源エネルギー庁が公表したモデルケースです。島根原発3号機と同規模の原発を想定したものです。島根原発3号機はすでにほぼ建設が完了して、来年にでも稼働しようとしています。20年間で、地元の県や市に893億円がいく。大きいですよね。この893億円は何かを計算してみましょう。まず地域住民の数をどの位と考えるか。かつては鹿島町や島根町だけの狭い範囲でよかった。ごく小さな地域のことだけを考えればよかった。ところが、今度の原発事故でこれではいけないということで、範囲が大きく拡がった。先日、島根県は30km圏内を緊急避難訓練の地域とした。この30km圏内には46万人います。

 しかし、実際の福島原発の事故を見れば、30kmどころか50km、60km、あるいはもっと遠い所でも大きな放射能被害が出ている。私はとりあえず50kmで考えてみることにしました。50km圏では対象の住民は60万人位になります。すると、地域住民の60万人の迷惑料として20年間で893億円、1年間で45億円出る。これは新しく3号機が稼働するとしての計算です。1年間で45億円出ます。これは大変な額です。しかし、地域住民60万人の迷惑料として計算してみますと、1年間一人当たり7,500円。ひと月では625円です。これはラーメン1杯分。地域住民の60万人の一人一人が、3号機が稼働することによって得ることができる迷惑料は月にラーメン1杯分だということです。乞食じゃあるまいし、これでがまんせよと言われている。しかもこのお金は、私達が負担している電気料金の中から出ているのです。

 それでは、一体誰がメリットを得るのかということです。資料4(「講演会配布資料」参照)を見て下さい。今申し上げたのは、電源三法交付金によるお金です。島根原発3号機に限ると、ひと月ラーメン1杯分位のものです。これが全国で年間4,000億円位。次にウラ金です。私はこれが年間5,000億円以上あると思っています。全国の9電力会社を合わせて5,000億円は下らない。まず市町村への匿名寄付。誰が寄付したかわからないということで、本当はバレバレなのですが、島根県も松江市もたくさんのウラ金を受け取っている。その一覧表が9ページ(「講演会配布資料」参照)にあります。2001年度以降、中国電力がウラ金として旧鹿島町、旧島根町、松江市に渡したお金です。驚くことに、2010年度には講武自治協会に1億5千万円のウラ金がまわっている。施設を作ってもらったようです。これは電源三法の交付金ではない。中国電力が、私達が負担している電気料金の中からウラ金として出したものです。

 二番目には原発ブローカー。小沢一郎が1億円もらったもらわないで話題になっています。水谷建設という三重県の会社がありまして、会長は水谷功といいます。この人は脱税事件で捕まって今収監されています。この人物、5億円の脱税犯として収監されていますが、実際に彼が受け取ったウラ金はこの10倍位と言われています。これは正に、東京電力の福島原発に絡む工事です。こういう闇の金が原発ブローカーに流れている。数10億円のごく一部が水谷功の脱税として摘発されているが、ほとんどは闇から闇へと消えた。闇に消えた中の1億円が小沢一郎の秘書に渡っているのか渡っていないのかが問題になっています。これなど氷山の一角です。小沢一郎にウラ金の一部が渡っているかどうかはわかりません。しかし、水谷建設は福島県知事であった佐藤栄佐久を失脚に追い込んだ、福島原発がらみの陰謀にも見え隠れするブローカー的な存在だということです。このような人物、会社が全国どの原発にもくっついています。もちろん中国電力にもべったりとくっついています。

 三番目は政治家への賄賂。広告費名目と書きましたが、それ以外にもだいぶあるはずです。はっきりしていることは、自民党に年間6億円流れていたことです。電力会社が直接ではなく、電気事業連合会というトンネルを通して、自民党の機関誌に広告料として出していた。名目は広告料だけれど、事実上の政治献金、つまり賄賂です。よく政治献金と言いますが、自分達の利益にならないお金を出す経営者はいません。会社が出すのは99%賄賂だと思って間違いない。ただ賄賂と言っても、刑法に触れるかどうかは別問題。実態が賄賂ということです。10年以上に亘って、自民党は広告費名目で電事連というトンネル組織を通して、年6億円のワイロを受け取っていたのはまぎれもない事実です。この原資は、私達が負担している電力料金なのです。

 四番目にやくざです。これは極めて絡みが大きいものです。やくざは全国の原発と抜き差しならない関係になっている。確かに、やくざに直接に寄付したり、直接お金が流れるということは余りないようです。ところが、今年9月にこんなニュースがありました。関西電力が大阪国税局の税務調査を受けた。その時に申告漏れが見つかった。これはマスコミに公表されています。これは、原発関連で出る金属屑をやくざ関連の企業、いわゆる企業舎弟に売却した。金属屑と言っても馬鹿にしたものではない。この5年間で45億円を流している。その中の11億円だけ実際の価格よりも安かった。差額の11億円は当然会社の利益になります。このような形でウラ金を渡している関西電力は福井県の方にたくさん原発をかかえています。あそこをとり仕切っているのは、あるヤクザの組であることは公然の事実です。このようなことは福井だけでない。島根原発も他の全ての原発も同様です。今年の10月から一段とやくざの取り締まりが厳しくなりましたが、もし、やくざと付き合っている企業を厳しく排除したら、全国の原発がその日から運転できなくなると思いますね。経産省と警察庁、一体どうするんでしょうかね。

 五番目にマスコミです。広告費の名目で多額の金が流れています。金で縛られ、金で繰られて、マスコミも電力会社の意に反したことはできないことになっているのが実態です。新聞、テレビが「御用マスゴミ」(マスコミではなく、マスゴミです)と言われるゆえんです。

 私が今日お話ししたことをまとめますと、まず原発に賛成とか反対とかいう前に、いったい原発とは何なのか、島根原発はいったい何なのかを地域住民で考えるべきではないか。その上で、これまで50年以上に亘って自民党が原発政策をやってきた、核兵器工場としての原発政策をやって来た。これを今の時点で認めるかどうか、追認するかどうか。これは国民的な判断になります。一地域だけの問題ではありません。

 そして、肝心なのは、現在膨大な量のプルトニウムがあることです。これは核兵器の原料です。1万発に近い数千発分はある。このプルトニウムの量についてはネットで公開されています。日本にあるだけで、146トン。海外に保管されている24トンを含めると170トンものプルトニウムを持っている。これをどうするか。核兵器工場としての54機の原発をどうするか。これもまた一地方の島根県や松江市だけの判断ではなくて、あるいは福島だけの判断ではなくて、全国的な国民レベルで考えるべき問題だと思っています。

 福島原発の事故の原因をきちんと明らかにして、責任をはっきりと追及すべきです。決してウヤムヤにすべきではない。仮に原発を今後とも続けようとするならば、国民的合意を形成した上で、2度と再びこういうとんでもない事故が起きないような、きちんとした責任体制のあるものにしなければいけないと思っています。

 以上でざっくりとした話をひとまず終えたいと思います。

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