相続税対策のワナ-②

 第二の特異な点は、主犯とされたA氏はともかくとして、共犯とされた本田氏に脱税犯の烙印が押されていることだ。Aという人物が、本田家の相続税対策をテコにして、本田氏を騙して本田家の財産をかすめ盗った、詐欺あるいは横領事件が中核にあって、複雑な騙しのプロセスの中でたまたま会社の経費計上に疑義が生じただけのことではないか。会社の課税上の問題は生じうるとしても、一歩進んで、いわば被害者である本田氏に、脱税という刑事罰が課せられることは考え難い。

 他人の税務に関して主導的な役割を演じた人物(本件の場合はA氏)が、自らの利益を図るためにひそかに細工をし、私腹を肥やしているような場合、つまり、詐欺もしくは横領によって他人の財産を収奪しているような場合、その人物が関与した税務の中味は訳が分らなくなるのが通例だ。当人が自らの行為を正当化するために、詐欺・横領を頑なに否定している場合には、会計取引を第三者に対して合理的に説明することは至難の業である。

 主犯とされたA氏の供述をベースにして本田氏の脱税のストーリーが組み立てられているようであるが、前述の通り、A氏が詐欺・横領という不正行為をしていたものとすれば、この人物の供述そのものが事実に反する支離滅裂なものとなっているはずだ。

 特異な点の第三は、タマリ(脱税の結果として貯えられた資産)が本田氏に帰属することなく、主犯とされたA氏側に流れていた事実である。A氏が不正行為によって本田家の財産を収奪した当然の結果だ。
 私のケース(「冤罪を創る人々」参照)もタマリに関して検察側の説明は二転三転した。タマリを含めた修正貸借対照表の合理的な説明が検察側にはできなかったのである。つまり、検察は、脱税額の計算を収支計算(損益法、あるいは修正損益計算書)だけで行っており、財産増減計算(財産法、あるいは修正貸借対照表)との整合性を無視していたということだ。
 尚、現在の判例は、脱税額の計算について、損益法を原則としつつも、財産法によってもよいとしており、いずれか一つの方法で足りるとしている。しかし、この判例は、簿記会計の基本を無視したもので、明らかに誤っている。企業会計の理論と企業実務の実際に無知な裁判官達が、頭の中で捻り出した虚言(たわごと)の類と言ってよい。詳しくは「冤罪を創る人々-(1)第一審、(ア)冒頭陳述」の六、~十九、参照のこと。

 特異な点の第四は、主任弁護人が検察OB(いわゆるヤメ検)であったことだ。
 一年前に、大阪地検特捜部の証拠捏造事件が白日のもとにさらされたのであるが、この事件は決して例外的なものでなく、全国の検察が日常的に行なっていることだ。証拠の捏造だけではない。デタラメの限りを尽くしているのが検察だ。自分たちが国家、即ち正義であると思い上がり、勝手気ままに犯罪を創り出して無実の人を断罪して平気な顔をしている連中だ。中でも脱税事件についていえば、これまたインチキが日常化している国税当局の言いなりになって動く単なるロボットでしかない。税務に無知な検事が国税当局のロボットとして国民を不当に断罪しているのが、現在の脱税裁判の実体であると言ってよい(「冤罪を創る人々」参照)。
 このようなトンデモない、いいかげんなことを永年せっせとやってきた検事の成れの果てがヤメ検であると言ったら言い過ぎであろうか。
 つまり、脱税事件に限らず、刑事裁判で本気で無罪を勝ちにいこうとするならば、間違ってもヤメ検などに頼ってはいけないということだ。中でも脱税事件の弁護人は、膨大な数字を正確に読み込むことが要求される立場にある。事実認定に不可欠な数字の読み込みについては、一般の弁護士も不得手としているようであるが、ましてや永年、国税当局のロボットとして働き、自らまともに考えたことのない検察OBにできるはずがないのである。

(この項つづく)

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 ここで一句。

“縛られて縄文土器のよな女優” -愛知、舞蹴釈尊

 

(毎日新聞、平成23年7月13日付、仲畑流万能川柳より)

(“そのままで縄文土器のよな女優”)

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