400年に一度のチャンス -号外2(八百長と賢明な民意 )

***-八百長と賢明な民意

 平成23年2月7日付の新聞各紙は、奇しくも2つの出来事を大きく報ずる羽目になった。

 大相撲の八百長による大阪場所の中止と、名古屋市長選挙、愛知県知事選挙における民主・自民両党の大敗である。



 八百長相撲については、各方面から厳しい声が挙がり、政治家としては、政権政党の枝野幸男官房長官、髙木義明文部科学大臣とがともに、「公益法人の取り消しもありうる」などと発言し、相撲協会を恫喝している。

 私は相撲協会を弁護するつもりは全くないが、政治家が八百長問題に首を突っ込み、とやかく論評するのに強烈な異和感を覚える。

 かつての55年体制のもとで、与野党が国会で激しくぶつかり合ったのは表だけであって、裏ではひそかに手を結び少なからぬ金銭の授受がなされていたことは複数の当事者の証言から明らかになっている。ガチンコ勝負を演じながらも、シナリオを作った上での出来レース、八百長である。飛び交(か)ったお金は、大相撲の比ではない。しかも、税金を原資とする官房機密費をくすねたものだ。このことからすれば、55年体制下において政治家であった人達が、相撲協会の八百長問題について発言する資格はない。

 中でも枝野官房長官が八百長問題を取り上げるに至っては何をか言わんやである。この官房長官、一年前に事業仕分けと称して、蓮舫議員(現、行政刷新担当大臣)と共に、連日役人達を呼びつけて、マスコミを前に大立回りを演じた人物だ。財務省の役人達が仕組んだシナリオ通りに、ガチンコ勝負を演じてみせたのである。財務省振付けによる出来レース、つまり、国民を騙すための八百長芝居である。今回を含め4回にわたって、財務省の戯言(たわごと)を取り上げ、この八百長芝居の背景を、公表されている資料から明らかにする予定である。

 名古屋市長、愛知県知事選挙については、各紙はこぞって既存政党の惨敗、河村たかし陣営の圧勝を伝える。この結果はまさに、名古屋市民、愛知県民による賢明な民意が反映したものだ。
 プレスの中には、

“ただ、国・地方の借金が900兆円に迫る中、減税を掲げた両氏の当選には大衆迎合の危うさも潜む”(平成23年2月7日付、日本経済新聞、一面「解説」)

などと、ピント外れ解説をして、したり顔している向きもあるが戯言(たわごと)である。
 この日経、経済紙を標榜しているものの、数字の分析があまり得意ではないようだ。一日の紙面で最低でも一つは、トンチンカンな数字の解説(「100年に1度のチャンス -24」参照)が目につく。数字の理解が間違っているために、たとえばこのたびの選挙結果についても政治、政局の解説が的外れになるのである。

 数字の理解といってもそれほど大層なことではない。義務教育レベルの加減乗除がキチンとでき、日本語が理解できさえすれば十分だ。読み、書き、ソロバンである。
 私が提唱している会計工学の基本公式は、

IN(入)-OUT(出)=BALANCE(残)

あるいは、

IN(入)=OUT(出)+BALANCE(残)
OUT(出)=IN(入)-BALANCE(残)

であるが、見ての通り、足し算と引き算だけの極めてシンプルなものである。この公式、金銭だけでなく、数字(情報)一般に通用するスグレものだ。ちなみに、この基本公式は税務署が納税者の脱税を見破る基本であると同時に、立会人としての税理士が税務署のインチキを見破る基本でもある(「税務署なんか恐くない!-11」参照)。国交省によるB/Cのインチキホリエモンのインチキを明らかにしたのもこの公式である。実務的に直ちに役立つ便利なことこの上もないものだ。

 河村たかし氏の主張は、市民税の減税よりもむしろ、

『税金で食っとる方が楽して、払っとる方が苦労する政治を変える』(平成23年2月7日付、毎日新聞)

ことに主眼がある。このたびの圧倒的な勝利は、雑音に惑わされて妥協することなく、この公約を一貫して押し通したことに民意が賛同したことによるものだ。大衆迎合どころかその逆である。
 河村氏のスタンスは、地方財政だけではなく、国の財政も、最大のガンは公務員の人件費であるとする私の主張と軌を一にするものである。単に名古屋という一地域にとどまることなく、日本全体の政治経済の将来をも左右することになるものであることから、心からのエールを送りたい。

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 ここで一句。

“何がエコ 作らん方が エコだっぺ” -水戸、のんちゃん

 

(毎日新聞、平成23年2月6日付、仲畑流万能川柳より)

(CO2を出さない原発はクリーン? 放射性廃棄物がCO2よりクリーン? 黒を白と言い包(くる)める強弁の見本。)

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