脱税摘発の現場から-13

***13.税制の抜け穴(承前)

 税理士が調査の立会いをするにあたって、税務当局、とりわけ料調に対して対等な立場で対峙するためにはどうしたらいいか。納税者が料調に直面したとき、税理士に十分な能力を発揮してもらうためにはどうしたらいいか。

 答は簡単だ。税理士を替えることである。なにも従来の顧問契約まで解除することはない。ただ調査の立会いだけを別の税理士に頼めばいいのである。納税者の代理人が一人多くなるだけのことだ。手続き的には新しい代理人の届けを税務当局に出せばよい。



 効果は歴然としている。新しく代理人となった税理士は、調査の対象となる過去の期間は納税者とは赤の他人であり、申告内容については全く関与していないだけに白紙状態だ。このことは、過去の申告について税理士法上の責任が全くないことを意味する。税理士法による縛りがないということだ。そのために国税当局に対する気がねが不要となり、本来の税理士として「公正な立場」(税理士法第一条)に立って、職業会計人としての誇りと信念とをもって、対等な立場で国税当局と交渉することができるのである。いわば、悪法である税理士法を逆手に取り、骨抜きにするということだ。抜け穴と称する所以(ゆえん)である。

 私はこれまでいわば“助っ人”として、かなりの数の料調の立会いを経験している。東京、関東信越、名古屋、大阪、広島の各国税局で、税目も法人税、所得税、相続税にわたり、業種も様々である。
 それらのほとんどは、顧問税理士が料調に脅し上げられて調査の立会いを放り投げてしまったケースであった。中には顧問税理士と話し合って、お互いの役割を分担して立会いに臨んだケースもあった。
 これまで述べてきたように、査察にせよ、料調にせよ、顧問税理士が後難をおそれて触らぬ神に祟りなしとばかりに逃げ出すのはよくあることだ。このような場合、税理士が無責任だとか、意気地がないと言って一概に批難することは酷(こく)であろう。むしろ、今の税理士法のもとではやむをえない対応であり、顧問税理士としては賢明な措置であるとさえ言えるものだ。自分でなんとか事態を打開しようともがいた挙句、国税側の手先のようになって、納税者に無用の犠牲を強いることになるよりははるかにましである。

 料調の調査が開始されたら直ちに、他の税理士に立会いのバトンタッチをすること、-納税者のためだけでなく、顧問税理士の利益にもつながることだ。
 これまでは、税理士が面子(めんつ)に拘ったり、あるいは自分の仕事を後生大事に守ることに気をとられるあまり、他の税理士に“助っ人”を求めることなど考えもしなかったのではないか。厄介払いをするかのようにコソコソと逃げ出したり、あるいは、できもしないことを無理をしてまでしようとしないで、信頼の置ける税理士に立会いを頼み、共同作戦を展開してキチンと問題を解決すれば、従前通りの顧問契約を維持することが可能であるばかりか、納税者からの信頼度はかえって深まることになるはずだ。いわば複数の税理士による共同作戦である。
 要は、税理士の仕事をするにあたって、どこに目を向けるかである。納税者のことを常に念頭に置いている限り、本当の意味で納税者をサポートする方策は自(おの)ずから出てくるはずだ。

 違法ともいえる料調に対抗することは、税理士法の縛りがある限り至難のワザである。
 仮装・隠ぺいの事実がないにも拘らず、いとも簡単に仮装・隠ぺいの認定を行ない、懲罰的な意味合いのある重加算税をふっかける。青色申告を取り消して、理由をつけないで更正したり、安易に推計課税を行なう。これらは、金額によっては直ちに刑事告訴につながりかねないオソロシイものだ。税金さえ払えば済む問題ではないのである(参考『ハニックス工業 事件の真相』)。
 このような料調のやりたい放題の乱暴なやり方を厳しくチェックすることこそ、税理士に与えられた本来の役割であり、そのような役割を全うするには、悪法である税理士法の縛りを断ち切り、国税当局に従属せざるをえない立場を脱して、対等な立場を取り戻すことが先決である。

(この項おわり)

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 ここで一句。

“あら声はお若いのねにムッとする” -大分、春野小川

(毎日新聞、平成22年9月28日付、仲畑流万能川柳より)

(「昔はさぞかしおキレイだったでしょうね。」-今はどうだって言うんですか、ンとにもう。)

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