『大義名分なき公共事業』-大手前道路、大橋川改修、八ッ場ダム-10
- 2010.04.13
- 山根治blog
弊社主任コンサルタント山根治が講演した「大義名分なき公共事業 -大手前通り、大橋川改修、八ッ場ダム」についての講演内容を、数回に渡って「山根治blog」にて公開いたします。
***【講演会】「大義名分なき公共事業 -大手前通り、大橋川改修、八ッ場ダム」
-日時: 平成22年1月23日(土)13時35分~
-場所: 島根県民会館307号室 (島根県松江市殿町158番地)
-講師: 公認会計士 山根治
第一回: 『大義名分なき公共事業』-大手前道路、大橋川改修、八ッ場ダム-1
※『大義名分なき公共事業』-大手前道路、大橋川改修、八ッ場ダム-9より続く。
***【7.大手前道路の経済効果について】
そうしましたら、ご質問がないようでございますので、先ほど説明していなかった、この参考資料1から3について、どういうものかその概略をご説明申し上げます。(【講演会】 大義名分なき公共事業 -大手前通り、大橋川改修、八ッ場ダム : 参考資料)
参考資料の3枚を出してくださいませんでしょうか。3枚。1から3でございますね。いいでしょうか。
資料を3枚、この説明をいたします。これは先ほど申し上げましたように、島根県から開示された3つの資料の中の、それぞれのレポートの中の1枚です。いわばインチキのエッセンスが入っている。そういう資料でございます。
まずこの計算方法でございますが、どういう計算をやっているか。これは道路を作ったら、どれだけのプラスがあるかということを計算しようとしているんですね。大手前道路を作ったら、どういうプラスがあるか。作るコストに見合うだけのプラスがあるかどうかを計算しようとしている。
この場合、大手前道路が中心なんですが、実はこの計算の仕組は非常に複雑になっております。
この大手前道路だけの効果、どういうプラスがあるか、というだけの計算ではないんですね。それ以外に、大手前道路を中心にした松江の、例えば国道九号線や四百何十号線だとか、いろいろ道路がありますよね。周辺の道路。数を数えたら300ありました。
300の路線をピックアップしまして、全部つながりがあるという理屈で計算している。
300の路線全部が密接につながっている。つまり、わずか1,000mほどの道路。1工区と2工区合せてわずか1,100m。わずかそれだけの道路を作って、どういう効果があるか、それを計算するのにつながりのある300の道路の、関連する道路の、全部の効果を計算している。
”リンク”という言葉を使っている。”リンク”。300の道路がリンクされています。
1つの道路を作るために、その他関連する道路もどういう効果があるのか、その経済効果を計算している、ということです。
それでこの表をじーっと見ていると、面白いことがいくつか分るんですが、私が取り敢えず気が付いたことを申し上げますと、参考資料1の一番下を見てくださいませ。二重の線で囲まれたところがありますよね。一番下です。「5.00」と書いてあります。
これは走行時間短縮便益となっていますね。
AからBを引いた、5.00。これは単位が億円ですから、5億円です。1年間に5億円の利益というか、便益が出る、経済効果があるということです。大手前道路を作りますと、車がスムーズに流れるようになる。そうしたら、走行時間が短縮されてくる。その短縮された効果を計算したら、5億円だという、そういう計算結果です。これが5億円。
次に参考資料2をご覧になってくださいませ。これは、一番下ですよ。「4.01」、4億100万円の効果が出てくると、一年間に。
次に3枚目。「2.92」。一番下のところですよ。2億9,200万円の経済効果があると。
実は、この経済効果というのはですね、時間が短縮される利益だけじゃない。その他にあと2つある。一つは交通事故が減る利益、今一つは車が走るときのコストが減る、そういう利益が、あと2つあるんですが、これらは微々たるものですので、中心的なものはこの走行時間短縮による便益の金額と考えていい。
例えば、参考資料1の5億円をどういうふうに考えるのかといいますと、1年間に5億円の経済効果がある。この道路の耐用年数を40年として、将来40年に渡って、その経済効果がずっと続くということで計算している。
1年間で5億円の経済効果がある、40年でいくらになるか。そういう計算をしているのですね。単純に40倍するのではありません。1年目が5億円だったら、2年目は少なくなる。3年目はもっと少なくなる。4%の割引率で考えている。このように計算した40年間の利益、これらを全部加えたものを経済効果(便益)と言っている。
4%の割引率で40年間計算する。計算式に入れてやるだけのことなんですが、そういう計算をして道路の経済効果を出しています。
これが、大雑把に言って、城山北公園線の経済効果を計算する概略です。5億円の経済効果。このほかに交通事故だとか、もう一つありますから、若干加わって、5.いくつになります。
そういう計算構造になっていまして、それでもう一つ。また一番下を見ていただきます。参考資料1の一番下。この5億円がどうして出てきたか。これはAからBを引いたものです。
差し引く前が「整備なし(A)」、「整備あり(B)」となっていますね。
この整備なしというのは、道路を作らない場合。整備ありというのは、この道路を作ったらどうなるか、ということで、作らないときのコストは665億4,900万円かかる。道路を作ったら、それが660億4,800万円になって、5億円減る。減ったのは、つまりコストが減るのだから利益だと、そういう考え方なんですね。
これはこれでいいんですが、よく見てみますと、このAとBが非常に近い数字なんですね。私、試しに割ってみました。
これ割ってみたんですが、このBをAで割った比率は、まず参考資料1の場合は、99.2%になる、99.2%。
それから参考資料2は、99.8%。参考資料3は、99.5%。
これで何か連想される方はいらっしゃいますでしょうか。私は咄嗟に談合を思い浮かべた。この数字は限りなく100%に近い。と言うことは、インチキ絡みの入札率とソックリだ。
談合、今から1年前、訳の分らん形で工事着工された、そこの家老屋敷の跡にできる建物(歴史的文化財の破壊と談合疑惑)ですね、あれも九十何%。ここまでではありませんが、九十何%。
あれは談合とは断言できませんが、通常一般に言われている談合の疑いが強いのは、80%を超えた場合と言われていますので、九十何%は、かなり強い疑いがある。談合と言われても仕方ない。
このように談合の入札比率に、非常に近い。
それともう一つ、この数字でピッときたのは、日本の有罪率、刑事事件の有罪率ですね。
有罪率は99.8%ぐらい。逆に言えば、無罪になるのは0.2%ぐらいしかない。これは日本の警察とか検察官が優秀だからとか一般に言われていますが、実態は違っています。本来は立件すべきでない、あるいは起訴なんかすべきでないものを、無理矢理自白させたり、無理矢理事実関係をデッチ上げて起訴に持ち込んで有罪にしてしまっているのがかなりある。
脱税事件については、国税当局が出しているパンフレットでは有罪率が100%だと豪語しています。これも国税が立派な調査をしていると思われているようですが、さにあらず。信じられないようなインチキ調査が横行しています。脱税ではないのにオカシナ理屈をくっつけて脱税をデッチ上げてしまう。いったん起訴されたら、今の裁判官は検察とグルになっているようですから、ほとんど全てが有罪になってしまう。このようなケースが全国から相談事案として数多く寄せられてきています。
私の友人で、逮捕されて裁判を闘っている会計士(公認会計士細野祐二事務所)がいます。非常に優秀な早稲田大学出身の会計士で、この人、粉飾決算の片棒を担いだというヌレ衣を着せられて逮捕され、第二審まで有罪で、現在最高裁で争っています。
彼は本を書いたり、マスコミにいろいろと有益な情報を発信したりしている中で、経済事件一般について、半分以上は冤罪であろうと言っています。私は、経済事件一般についてはともかくとして、脱税事件に関しては、少なくとも半分は冤罪ではないかと考えている。犯罪(脱税)じゃないのを、ムリヤリに犯罪にしているケースが半分はあるだろうということです。
そういうふうに、99.2とか、特にこの参考資料2ですね、99.8なんて言うのは、まさに日本の有罪率そのものの数字です。インチキ臭がプンプンしてくる。
ギリギリの、ほとんどあるかないかの差ですね。こういうふうなところに出てきたのが、この経済効果という数字、5億円だとか何億円とか言われているものです。
と言うことは、差引計算をする前の元の数字がちょっと変われば、この数字が吹っ飛んでしまう。場合によってはマイナスになりかねない。マイナスになる可能性が十分にある。そういうものです。
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ここで一句。
(“そのうちに「今は昔」と消えていく”)
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