100年に1度のチャンス -22

 前回述べた、
『経済成長神話は幻(まぼろし)である』
という命題(めいだい、一つの判断の内容を、整った言葉で表わしたもの、-新明解国語辞典)が思い浮かび、それが正しいと確信するに至ったのは、トヨタ自動車と日産自動車の経営分析をした結果、想定外の結論に達したことからでした。

 私が分析の対象としたのは、2つの会社ともに、昨年の9月のリーマン・ブラザーズの破綻以前、つまり、金融危機が表面化する前の、平成20年3月期(平成20年3月31日に終了する事業年度のことです)以前の期間でした。日本の自動車業界は、アメリカのビッグスリーと言われた、GM、フォード、クライスラーが軒並みショボクレているのを尻目に、快進撃を続けていました。トヨタ自動車も日産自動車も、毎期のように増収増益を謳歌(おうか。はたから見るとうらやましくも思われる環境に身を置く幸福感を、だれはばかる所無く言動に表わすこと、-新明解国語辞典)し、まさに我が世の春、といった感がありました。

 中でもトヨタ自動車については、自動車業界で世界のトップにまで押し上げた秀れた経営者がいて、年を追うごとにより立派な会社へと導いているものと思い込んでいました。私は、長い間トヨタの車を愛用してはいますが、会社に対する特別な興味がなかったことから、これまでトヨタ自動車の決算書を検討する機会がなかったのです。
 それだけに、昨年の11月6日に決算見込の変更が発表されて以来、
平成20年12月22日
平成21年 2月 6日
と、矢継早(やつぎばや)に決算見込の下方修正がなされたのには、驚きを通りこして明らかに異常なものを感じたのです。

 何かオカシイ、尋常ならざる事態が起っているに違いないと判断した私は、早速、当社が開発したEDIUNET(エデュネット)をのぞいてみました。
 EDIUNETによれば、トヨタ自動車の売上高は26兆円と、上場企業の売上高ランキングのトップに位置していますし、利益にしても次のように、平成18年3月期に、日本で初めて2兆円の大台に乗せてから3期連続して2兆円台をキープしているだけでなく、年々増大しています。

^^t
^cx^事業年度
^cx^税引前利益
^^
^平成18年3月期
^rr^2兆1,000億円
^^
^平成19年3月期
^rr^2兆4,000億円
^^
^平成20年3月期
^rr^2兆6,000億円
^^/
 財務内容についても、純資産額は増加の一途をたどり、12兆円(平成20年3月末)に達する勢いです。この5年間の純資産の推移は次の通りです。

^^t
^cx^事業年度
^cx^純資産
^^
^平成16年3月期
^rr^8兆2,000億円
^^
^平成17年3月期
^rr^9兆円
^^
^平成18年3月期
^rr^10兆1,000億円
^^
^平成19年3月期
^rr^11兆8,000億円
^^
^平成20年3月期
^rr^11兆9,000億円
^^/
 総合的な評価にしても、EDIUNETを見てみますと、トヨタ自動車の信用格付けはAA、財務ランクはAとなっており、一応は申し分のない優良会社ということになっています。
 このような、一見するとピカピカの優良会社が、急転直下大幅な赤字に転落(見込)するに至ったのは、会社側が発表しているような外部要因、つまり、金融危機とか景気後退とか、あるいは急激な円高による収益の悪化といったことからだけではとても説明ができません。
 私は会計士の直感として、一瞬、過去の決算が間違っていたのではないか、つまり粉飾決算がなされていたのではないかと疑ったほどです。
 そこで日本を代表する優良企業とされてきたトヨタ自動車の内実に迫ってみることにしました。

(この項つづく)

 ―― ―― ―― ―― ――

 ここで一句。

“議員歴 増して人相 悪くなり” -草加、岡元保江。

(毎日新聞、平成21年2月24日号より)

(何故か与党議員に多いようで。「越後屋、おぬしもワルだのう。」「いやいや、お代官さまにはかないません。」)

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