検証!! 『ホリエモンの錬金術』-11
- 2009.08.04
- 山根治blog
会社とか組織が汚れ仕事に手を染めるとき、その汚れ仕事を実行するのはそこに属している生身の人間です。このような場合、会社などに利益をもたらすだけでなく、往々にして汚れ仕事を実行した個人も便乗して利益を懐にすることがあるものです。不正融資に手を染めた銀行マンが融資先から不正に金品を受け取ったり、ゼネコンの社員が下請業者に水増請求をさせて水増し分をフトコロにしたりと、このような事例はしばしば見受けられるところです。中でも極めつけは一部の政治家です。表では政治献金という名のワイロを受け取り、裏ではそれ以上の額のワイロをひそかに受け取ってはフトコロを肥やしている、政治を金儲けの手段としか考えていない連中のことです。
別の言い方をすれば、会社などをダシにして、ひそかに個人の利益を追求する輩(やから)が少なくないということです。汚職そのものですが、残念ながら、過去および現在における日本社会の現実です。汚れ仕事をして私腹を肥やした人物が、インチキ上場を仕組んだ連中の中にいたとしても不思議ではありません。
堀江氏によるインチキ上場に際して、ひそかに個人の利益を追求し、私腹を肥やした人物がいるらしい、それは誰か?
前回、このような人物の存在が、堀江氏の『実害』という言葉から浮かび上がってきたことについて述べました。しかし、これまでの情報からだけでは、特定の人物を名指しして推断することまではできません。更に一つか二つの情報が新たに加わると、特定の人物の推断ができるのですが現在のところはそこまで踏み込むことができないということです。
私腹を肥やしたかどうか定かではありませんが、このインチキ上場に関して「汚れ仕事」をした人物が3
人だけ明らかになっています。2人の会計士、小林元氏と高野伊久男氏、それに沼田功氏の3人です。ただ、この3人はホリエモン賭場の三下(さんした)に相当する存在ですので、仮に借名株が渡っていたにしても、ごくわずかでしょう。2人の会計士の「汚れ仕事」については後ほど詳述しますので、ここでは沼田功氏のみ取り上げます。
沼田功氏については、実は3年ほど前に、このブログで取り上げたことがあります。オン・ザ・エッヂを上場にこぎつけた、幹事証券会社である大和証券SBCMの公開引受部にいた人物です。
として、以下、日本経済新聞の記事を引用しています。
私がこのブログ記事を書いたのは、『ホリエモンの錬金術』を書き終えてから1年余り後の、平成18年9月12日のことでした。ライブドアが東京地検特捜部に摘発されてから8ヶ月ほど過ぎた頃です。
“名うての公開請負人”として日経に紹介された沼田氏は、思わず耳を疑うようなことを、取材にあたった記者に語ったとされています。
と言い放ったというのです。大和証券といえば、日本における大手証券の一角を占め、日本の株式市場において重要な役割を果している存在です。民間企業とはいえ、極めて公益性の高いものです。
そのような会社の公開引受部に属していた人物が、上記のような発言を堂々とするなど私には信じられない思いでした。
制度のスキをつく、これは法の抜け穴を捜し出してうまく立ち回るということに他なりませんから、表(おもて)社会の発想ではありません。まさに裏(うら)社会そのものの考え方です。
直接的な法律の規制がないなら何をやっても構わない、あるいは法律の規定に触れるとしてもバレなければ構わない、といった発想と同一線上にあるものであり、コンプライアンス(順法精神)の対極にあるものです。
このような考え方をもった人物が、大手証券に在籍して、ライブドアの前身であるオン・ザ・エッヂの上場を、いわば取り仕切っていたのです。最近はともかくとして、オン・ザ・エッヂが上場の準備に入り、実際に上場を果した10年ほど前は、大手証券が幹事証券を引き受けた場合には上場審査は事実上フリーパスのような状態であったはずです。新興市場としてマザーズができた直後のことでもあり、規制緩和を隠れ蓑(みの)にして、未成熟な会社を次から次へと上場させていた裏に、このような人物がいた事実は、誠に由々しいことと言わなければなりません。
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ここで一句。
(いずこの家庭も同じこと。)
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