100年に1度のチャンス -27
- 2009.04.21
- 山根治blog
前回述べた悪しき収奪の思想は、これまで一部日本社会の底辺にくすぶってはいたものの、常に日陰の存在で、決して表に出ることはありませんでした。
ところが、株式市場を舞台にして破廉恥な行為を平然として敢行するだけでなく、得々として金の亡者の屁理屈を吹聴してはばからない、異形の人物が現れてきました。ホリエモンこと堀江貴文という若者です。どのようなことをしようとも、お金さえ儲かればよい、稼ぐが勝ちだ、女の心だってお金さえあればどうにでもなる、このようなことをアッケラカンと公言して憚(はばか)らなかった人物です。無定見なマスコミが競うようにしてこの人物を賛美し、あろうことか、時の政権までもこの人物を改革のシンボルのようにしてかつぎ上げて選挙に打って出たほどでした。自民党が大勝した4年前のいわゆる郵政選挙です。
『お金を儲けることは悪いことですか』と開き直ったのは、村上某なるインテリ崩れでした。怪しげなファンドを立ち上げて、総会屋もどきの悪辣(あくらつ)な手口で荒稼ぎをした人物です。日銀総裁までもが、ひそかにこのファンドに便乗して儲けようとしていたことが明らかになり、世間を唖然とさせました。つい、3年ほど前のことです。
六本木ヒルズに拠点を置いていたことから、ヒルズ族なる名称を奉られ、多くの人々からアブク銭を巻き上げてはこの世の春を謳歌していたインチキ・グループは、その後インチキが露見するにつれて次から次へと表舞台から姿を消していきました。バブルが消えたということです。
ライブドア、Mファンド、グッドウィル・グループ、リーマン・ブラザーズ。その他、ソフトバンクとか楽天は、このようなインチキ・グループと同列にあるかどうかはともかくとして、その後、本拠地を六本木ヒルズから他へ移しています。
新しい金融商品なるものが次から次へと繰り出されたのもこの頃でした。ライブドアがフジテレビと多くの株主とを食い物にする際に利用したMSCB、会社買収の一形態として乱用されたMBO(マネジメント・バイアウト)、これらの金融商品は、もともと投資ファンドが濡れ手に粟の利益を手に入れるために考え出したマネーゲームの産物ですので、ゲーム環境が崩壊すればいずれかの当事者は大きな傷を負うことになるものです。安易な気持ちでMSCBとかMBOに飛びついた人達の多くが、多額の負債をかかえて倒産に追い込まれたり、あるいは破産に瀕しているのは当然に予測されたことです。
バブルがはじけ、空騒ぎは終わりました。私達はより正常な状態へと復帰しつつあります。自分達だけが儲かればよい、といった自己中心的な考え方が通用しなくなり、収奪の時代が終ったということです。
共生の時代、-自然を征服(自然環境を破壊し、天然資源を収奪することです)するのではなく、自然の中にあってうまく折り合いをつけながら暮していく生き方、多くの異なった考え方、異なった信仰を持った人々とお互いに認め合いながら暮していく生き方、これらは日本古来の生き方です。
100年ほど前からのさばり出した悪しき収奪の思想は所詮、日本の風土にはなじむことのできない「悪の華」でしかなかったということでしょうか。
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ここで一句。
(よく言えばプラス思考、普通に言えばノーテンキ、悪く言えば恥知らず。)
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